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ランドスケープデザインコース 古城かおり

湯けむり空みち海岸 〜「もっともっと」から「ちょうどいい・心地よい」へ〜

 今回の対象地がある雲仙市小浜町は、国立公園を有する自然豊かな町だが、山並みには風車が、海岸沿いには携帯会社のアンテナが立ち並ぶ。このような風景を見ると「科学技術の発展で私たちの生活は便利になったが『もっと便利に、もっと快適に』と突き進み過ぎたのではないか」と、ふと思う。経済活動を中心とした開発を少し立ち止まって見つめ直し、今の風景を、昔の形そのままに戻すのではなく、現代のライフスタイルに合った「心地いい」風景、地域の現状に合った「ちょうどいい」風景へとデザインできないかと考えた。
 小浜町には、江戸初期頃はお湯があちこちで沸く海岸が広がっていた。明治時代から海岸の埋め立てが始まり、現在の温泉街や国道ができた。平成初期、国道の海側がさらに埋め立てられ、対象地である「小浜マリンパーク」は平成22年に埋立地に建設された。
 今回のプランは、小浜町本来の自然の心地よさ、特に海と温泉に着目し、「海を活かすゾーン」「温泉を活かすゾーン」「休憩・食事のゾーン」の3つに分けた。「海を活かすゾーン」は埋立地を海に戻し、楕円形の道で囲まれた遠浅の海岸にした。潮の干満によって道が海から現れたり、海の中に消えたりする。干潮時は道を歩いて海岸を一周することができる。この道を「空みち」と名付けた。「空みち」には、潮の「満ち引き」の「みち」と、「空と海の間に行くような道」という意を込めた。
 この場所が地域住民の日常生活に溶け込み、住民と観光客の交流の場となり、10年後、30年後…には、開発によって消えていった生物達が戻ってくる場となって、人と環境の両方にとって「心地いい」「ちょうどいい」風景となることを願ってデザインをした。
 樹木が潮風によって枯れたら、より土地にあった樹木を住民で考えて植え替える、潮によってスクイが壊れたら修繕するイベントを開くなど、この場で起きる経年劣化も楽しんで使ってもらいたい。

古城かおり

ランドスケープデザインコース

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