幼少の頃からバレエを習っていた私にとってアレクサンドル・ゴドゥノフは永遠のヒーローであり,それだけに彼の晩年の姿は堕ちた偶像でもありました。亡命後色々なメディアやダンス雑誌で彼の記事を目にするたび、空回りする彼の様子が察せられ切なくなったものです。アルコール依存症を窺わせる姿を写真に撮られることもありました。それでも彼の踊りを見るとわくわくして気持ちが軽くなるのです。本当は彼を愛した人々についても書きたいことがありました。
アメリカで彼のアルコール依存症を憂いながらも支え続けた女優のジャクリーン・ビセット、ゴドゥノフ夫妻が亡命の数年前にも訪米した折、わざわざ訪ねて来て「君たちはここ(アメリカ)にいてはいけない」と暗に亡命するなと忠告したミハイル・バリシニコフなどです。3200字という文章の中ではアレクサンドル・ゴドゥノフ自身の紹介に留まりましたが、彼の踊りと人生に興味を持っていただければ幸いです。
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- 田中二葉