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芸術学コース 竹本 健一

 ポストモダン状況の中、また情報化社会の中、私たちの思考や感情は社会の文化コードに限定を受けている。それに対し、芸術の役割の一つは、私たちの主題に対する一次的な解釈に揺さぶりをかけ、感情を動かすことや、心の奥の感情を確認させることといえるが、どのような手法でそれが可能であろうか。クリスチャン・ボルタンスキー(1944-2021)の記憶アートは、私たちの潜在的な感覚や情感を喚起するが、それは作品が持つ意味の二重構造によると思われる。この二重構造の構築については、批評家クレイグ・オーウェンスによる、古来の手法である、作品の比喩的意味を通して本来の意味とは別の大きな文脈を示唆する「アレゴリー」が、現代アートにも使われているとの指摘が関係するようである。
 これらを手がかりに、制作者の記憶を地域的、文化的背景の異なる鑑賞者にも伝えようとする近年の記憶アートを対象とし、そのようなボルタンスキーとゲルハルト・リヒター(1932-)の作品について、主題と手法の関係を考察した。そこには、アレゴリーによる意味の二重構造が作られ、私たちの情感を喚起させ、生や社会についての思いを想起させていることを明らかにした。


東京都

現代アートの主題と手法 -記憶アートとアレゴリーの交点-

竹本 健一

芸術学コース

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