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芸術学コース 松尾 直人

《松林図屏風》への興味は尽きない。卓越した水墨画の表現技術とともに、鑑賞者の心情と感性に訴えかける清浄な精神世界をもあらわし、臨場感を湛え絵の世界に引き込む力をもっている。「この造形はどのようにして創出されたのであろうか」が率直な疑問であり、等伯が生きた時代や、等伯の心情に思いを馳せる。いささか大きく抽象的なテーマであるが、何か気付きを求めて等伯の生の声が記録された『等伯画説』を読み進めた。そのなかで、第七十条の「嗚呼しづかな絵」、そして、第六十一条の「真にそれぞれの様を写すべし」という等伯の絵画観を表わすといわれるふたつの言葉とそれら条に記された出来事の解釈に取り組み、それらをふまえて《松林図屏風》の創出について再考を試みた。
 結果、第七十条「しづかな」という言葉は「わびと禅の感性」という等伯の思想面に関係し、第六十一条「真にそれぞれの様を写すべし」は等伯が中国絵画の「筆様」を重んじるという絵画制作のスタイルを表わすものであり、これらが《松林図屏風》の創出に深く影響しているとの考えに至った。


兵庫県

『等伯画説』より第七十条、第六十一条の考察
-≪松林図屏風≫をめぐって-

松尾 直人

芸術学コース

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