芸術学コース 綿貫 浩
葛飾北斎の娘・応為は、偉大な父の陰に隠れてその生涯や画業には不明な点が多く、応為作とされる作品はわずか十数点と少ない。しかし、「余の美人画は、阿栄におよばざるなり」と北斎に言わしめたほど、その腕前には優れたものがあり、特に2点の肉筆夜景画《吉原格子先之図》と《夜桜美人図》は、一度目にしたら忘れられない幻想的な絵だ。いずれの作品も、灯りが届く範囲は明るく、影になる部分は暗く描き分けられており、しかもその影は一様ではなく、微妙なグラデーションがつけられている。この2つの作品のように実景に近い夜景画は、江戸期には極めて稀である。応為はなぜ、このような夜景画を描き得たのか、どこから影響を受けたのか。この問いに対する答えを明らかにするのが、本稿の目的である。
本稿では、わかっている範囲でその生涯の足跡をたどった上で、従来の先行研究ではあまり深掘りされてこなかった応為の夜景画の特異性を分析し、更に主題、構図、夜景表現の3つの視点から、その着想源に関する考察を進めた。
神奈川県
葛飾応為の夜景画をめぐる考察
綿貫 浩
芸術学コース
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