2015年8月
2015年8月25日 授業風景
アートエッセイ「私の和菓子元年」
高石悠貴
ああ、やってしまった。
財布の中から1512円が抜けていく。
これは仕方のない事だ。それほどに、そのどら焼きは美味であった。
創業299年、来年で300年の節目を迎える老舗の京菓子店『笹屋伊織』。
看板商品である「どら焼き」を本日の取材で試食させていただいた。
一般的などら焼きは、諸説あるものの銅鑼の形をしているからそう呼ばれ、分厚い生地で餡を包みこんだものであるが、笹屋伊織のそれは全く違っていた。
棒状にしたこし餡に薄い生地を何層にも巻きつけ、最後に竹の皮で包んだ、独特の形であった。名前の由来は、なんと銅鑼で焼いているからである。
一口食べるとまずそのもちもちとした生地の触感に驚く。きめ細かなこし餡が口の中でとろけ、上品な甘さが口の中に拡がる。
スーパーの安いどら焼きくらいしか食べたことのなかった私にとってこの出会いは衝撃的であった。ゆえにこの感動を家族で共有するしかあるまい。
私はどら焼きを1本買って帰った。
2015年8月25日 授業風景
アートエッセイ 「神様と暮らす」
近藤 望美
京都ならではの細い入口の格子戸を開け中に踏み入ると、大戸と石畳が姿を見せる。昔から代々受け継がれてきた歴史ある京町家がそこにはあった。
ここは国の登録有形文化財でもある老舗呉服屋「冨田屋」。
今回13代目当主である田中峰子さんのお話を伺った。
田中さんは古来より受け継がれてきた、しきたり行事も含め、伝統が息づく町家として守り続けている。
「でもこんな面倒なことなんでわざわざやらなくちゃいけないのか不思議でしょう?」
伝統を守り続けている田中さんの口から出たことはとても驚いた。お母様には、しきたり行事をやるのが当たり前の生活であった。現代に近づくにつれ、当たり前ではなくなった。
幼いころから町家で暮らしてきた田中さん自身そう疑問に思ったこともあったそうだ。
日本には八百万の神様が存在し、行事しつらえは神様のためのものである。無病息災家内安全を神に「祈り、願い、感謝」を込めた。それが今の文化の由来である。
文化が受け継がれていく背景には、その行事が楽しかったからだと。
私の家では特に神様を信仰しているわけではない。全ての伝統行事をやるわけでもない。しかし、毎年お正月や節分など今でも一般的に続けられている行事、例えばおせち料理や豆を歳の数だけ食べるなど形だけだが、少し特別な気分を味わったものだ。母も大変だとか面倒くさいなどとぼやきながら、年に一度の特別な日が楽しいのだろう。
冨田屋さんにはたくさんの神棚がある。家に宿る八百万の神様のためのものだ。毎朝お祈りをささげ、しきたり行事のある日は全て意味を考え、神様に「祈り、願い、感謝」しつつ、何より楽しみながら伝統を継続している。
まさしく神様との暮らしだ。
2015年8月21日 授業風景
取材先は、南禅寺の近くにある懐石料理の老舗「瓢亭(ひょうてい)」さんです。 京都を代表する料亭にお邪魔して、学生たちがそれぞれアートエッセイを書いたので 一部ご紹介します。 6日間の講義で、取材記事とアートエッセイを織り交ぜながら1冊の本にします。 今から楽しみです!
================== 「視界を彩る京料理」 吉積 愛 一歩足を踏み入れると、現実から切り離された空間がそこにあった。 今回伺ったのは、京都・南禅寺畔にある老舗「瓢亭」だ。 緑の木々に囲まれ、辺り一帯に苔が生え、わびさびを感じさせるには十分な雰囲気を 醸し出している。とても立派な坪庭だ。敷地内の川を泳ぐ鯉が、ジメジメとした京都の 夏に涼しさを投じていた。 通されたお座敷は14畳程の広さがあった。ふすまの引手には、瓢亭の象徴である瓢 箪があしらわれていて、なかなか粋な工夫である。 掛け軸の中で舞うように泳ぐ魚たちが、しんとしたこの部屋に音を奏でていた。部屋 の後方に立てられている屏風に描かれた京野菜も賑わいを見せている。 柔らかな照明の中で、この店の14代目・高橋英一氏はこう語る。 「料理はまず、目から楽しませるんです。」 食器のすべてが同じ柄ではなく、一つ一つの器に季節感を出すのが、日本の食文化の 特徴なのだという。 料理は味だけではない。玄関やお座敷、食器の細部までこだわりを光らせ、目から客 をおもてなしする。それが、瓢亭の「京料理」なのである。![]()
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2015年8月21日 授業風景
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