2019年4月
2019年4月29日 ニュース
こんにちは。副手のこんです。
4月27日28日のオープンキャンパスへのご来場誠にありがとうございました!
今年は今まで以上に多くの来場者のみなさまにお越しいただきました。
↑OCキャラデブースの様子
↑コンテンツサービスで業界を牽引するピクシブ株式会社様との連携企画「V Roid Studio体験」や特別講義も大盛況でした!
少しでもキャラクターデザイン学科の魅力が伝わっていれば嬉しいです。
次回は
6月9日(日)と7月7日(日)に京都造形芸術大学の体験授業型オープンキャンパスが開催されます!
13学科23コース、合計48授業の中から午前と午後でお好みの組み合わせで2つを体験していただけます。
この機会にぜひ本学の魅力に触れてみてはいかがでしょうか。
その中で、我がキャラクタ―デザイン学科ではこんなラインナップでの授業を展開していきます。
6月9日(日)
①「アニメーションをつくろう」
②「ゲームキャラクターをつくろう」
※①か②のいずれかを選択。
7月7日(日)
①「キャラクターデザインへの理解を深めよう」
②「CGでキャラクターをつくろう」
※①か②のいずれかを選択。
また、授業を受けるだけではなく、全体説明会や保護者対象の講演会、更には教員との個別相談コーナーもあり、
入試の相談や作品の講評なども行ないます。
体験授業のWEB予約は本日から!
https://www.kyoto-art.ac.jp/opencampus/oc06-09_07-07/
体験授業の詳しい内容については追々ブログ上で公開していきますので、ぜひお楽しみに!
今後もますますキャラクタ―デザイン学科から目が離せないッ!
またみなさんとお会いできることを楽しみにしています。
本当に本当に!
ありがとうございました!
★体験授業申し込みはこちら!
★オープンキャンパスHPはこちら!
2019年4月22日 ニュース
キャラクターデザイン学科の村上です。 さてさて、またこの季節がやってまいりました! 4月27日(土)と28日(日)は京都造形芸術大学のオープンキャンパスですよ。 もう一度言います。オープンキャンパスですよ! キャラクターデザイン学科では、以下の領域に分かれての作品展示や相談を受け付けています。 未知の領域に踏み込み、みなさんの夢を実現してみませんか? まず一つ目は「アニメーション」!これぞ日本が世界に誇る一大産業の要です。だいたいですね、アニメを見ないで育った人なんていないワケですよ。 そんな、これまではスクリーンの向こう側の出来事だと思っていたものが自分たちの手で作れるのです。 止まっていたものが動き出す瞬間の、キャラクターに命を吹き込む瞬間のこの喜びを共に味わおうではありませんか! 次に「キャラクターイラスト」!
キャラクターデザイン学科といえばやっぱりコレですよね。皆さんが一番望んでいる領域なのではないでしょうか。 これまで趣味ではたくさん描いてきたと思いますが、ここから先はプロを目指してガチの技術を身につけていきましょう! そして「ゲーム」!
ゲームといってもみんなが良く知るピコピコだけじゃないですよ。
ここのところ「ゼミ通ヒーローズ」というゲームゼミの学生インタビューの記事を少々鬱陶しいレベルで連載しています。詳しくはキャラデブログを見てあそびの本質を予習すべし! https://www.kyoto-art.ac.jp/production/?author=4 更に「CG」!一昔前は夢のテクノロジーだったCGも、いまや映画、アニメ、ゲームに限らず、様々な媒体で応用され、その需要は尽きることがありません! 未知の領域なのでビビるのも分かります。僕はビビりました。しかし不可能のない表現方法を知ると、アッと驚く夢の世界を創り出すことができるのです。 最後に「プロデュース」!
は?てなりましたか?なるでしょう!プロデュースという言葉自体初めて聞くという人もいるかと思います。 この学科では、モノをつくることだけを教えるわけではありません。作る以上はその出口も確保しないと人様の手にお届けできませんからね。広く社会を俯瞰し、誰に何を届けるのか、ビジネスの基本を含めて学んでいきましょう! そして、間もなく情報解禁となりますが、ちょっと大きな隠し玉を用意しています。 それが何かはお楽しみ。毎日ブログをチェックして、首を長くしてその時を待たれよ!
遊びごころたっぷりの教員達がおまちしています。
こちらは先日の入学式の日に楽しんでいただけるよう悪役風に撮影したものです。ぜひ本人達に会いに来てくださいね。
★★★★★★★★
4月27日(土)、28日(日)に高校生・受験生を対象としたオープンキャンパスがあります。
みなさんの参加をお待ちしています!
詳しくはこちら!
参加が難しい方は、今後のオープンキャンパスの予定を以下よりご確認ください!
詳しくはこちら!
★★★★★★★★
2019年4月16日 インタビュー
門瀬菫と「ハッカソンという名のゲームについて語る」の巻
今回のゼミ通ヒーローズは村上ゼミ新4年生の門瀬菫さん(奈良県立奈良北高等学校出身)をピックアップ。
ゲーム制作授業のLA(ラーニング・アシスタント)を務めて1年生の指導も行なってきたゲームゼミの元気印。
先日関西のゲーム系ゼミを持つ大学との合同ハッカソンを実施し、そこで得た気づきや学びを、ゲーム的発想によって掘り下げていこうと思います。
ViViVit主催のUI展にて。作品を出品する門瀬さん。
村上 一年生の頃、毎週ゲームの企画書を作って持ってきたりして、ものすごくモチベーションが高い学生だなと思って驚いたけど、
そもそもゲームを作りたいという気持ちはどこからきたの?
門瀬 昔からプレゼント選びが好きだったんですけど、それって相手がどんな反応をするかが楽しみだからするものじゃないですか。
自分の好きなものをあげるんじゃなくて、相手に何をあげたら一番喜んでくれるかなって考えるのが結構好きだったので、
その感覚がゲーム制作の授業で引き出されたのかなと思いますね。
村上 授業のどのあたりで引き出された?
門瀬 一番よく覚えてるのは、先生が「ゲームのキャラクターは記号である」って言った時ですね。
この言葉が印象深くて、今までビジュアルとストーリーが面白いからゲームは面白いんだって思ってたんですけど、
「あ、違うんだ!」って、ちゃんと面白い仕組みがあるからその上にキャラクターが乗ってるんだって思いました。
それで「人が面白いと感じるものを作りたいな」と。
村上 キャラクターデザインという名の学科に入ってきたのに、いきなり「キャラクターは記号だ」って言われて、「は?」ってなったクチだね。
門瀬 そうです。最初ここはゆるキャラとかご当地キャラとかを描く学科なのかと思ってましたもん。
それで入学したら全然絵を描かせてもらえない(笑)。でも知らないことを知るっていうのが単純に楽しかったですね。
ゲームっていう身近なものなのに、全く違う視点にさせられるし、驚きがたくさんあって面白いです。
村上 全く未知の領域を学ぶんじゃなくて、ゲームっていうあまりにも身近なものの固定概念が覆されるわけだから、衝撃はそこそこ大きいかもね。
門瀬 「面白い」っていう感覚って、今までは素直に「面白い」だけだったんですけど、「なんで面白いのか」って考えたことがなかったんですよ。
ゲームって面白くて当たり前だと思ってたので。でもその当たり前を作るためにこんなに大変な思いをするんだって思って、
もっと楽しくなってズブズブとハマっていきました。ゲームプランナーは面白いぞっていう村上先生の洗脳がかなり効いてます。
あとはグループワークで「脱出ゲーム」を作るって聞いてたので、ここにも魅力を感じてました。
村上 グループワークっていう言葉に嫌悪感を抱く人が多いかと思ってたんだけど、あんなに楽しんでやると思わなくてこっちも驚いたね。
門瀬 グループワークじゃないと自己顕示欲が満たされないんですよ。
村上 グループワークの話が出たので、先日他大学と合同で行われた「ハッカソン」の話を聞いていこうかな。
門瀬 合同でハッカソンをやるのはもう二回目ですね。
村上 そうだね。まずハッカソンの概要について聞かせてくれる?
門瀬 一般論でいえば、エンジニアが集まって、一日という短い時間の中で新しい技術を生み出すっていうものですよね。
村上 エンジニアに限らず、一般の主婦とか学生がそこに加わって、短時間でアイデアをひねり出すようなこともあるね。
で、今回は他大学と学生同士だけで行なったと。
門瀬 そうですね。Connectという関西の学生ゲームコンソーシアムがあって、まずは学生同士で何かをやろうってなって、
立命館大学のゲームゼミの方から「学生対抗ハッカソンをやろう」とお誘いを受けまして。
で、一か所に集まるのは難しいからSkypeを使って互いの現場の緊張感が伝わるようにしてやりました。
対抗と言いながら勝敗を決めるようなものではなく創作意欲を刺激し合うような形になってます。
今回は立命館大学、和歌山大学、そして京都造形大でネットを通じて実施しました。
村上 そこで作った作品は?
門瀬 京都造形大は人数が多かったので3チームに分けたんですけど、その中で私たちのチームは「ただいまらそん」というアナログゲームを作りました。
ハッカソンというからには本来デジタルゲームを作るべきなんですけど、同じチームにプログラミングが出来る人がいなかったので…。
今回与えられたお題が「かえる」ということで「蛙、帰る、変える、買える」と色々解釈できるようにひらがなで提示されたんですけど、
そこで私たちは「家に帰る」というキーワードから、「一番早く帰宅できた人が勝ち」というだけのルールで、コマを進めたりライバルの邪魔をしたり、
また思わぬ出来事が起こったり、というのを楽しみながら場を盛り上げていくゲームを考えました。
村上 見た目は「どこにでも動けるすごろく」みたいになってたね。
門瀬 そうですね。このゲームの面白い点は、「進む」とか「邪魔をする」といったイベントカードを盤面に配置していくんですけど、
伏せた状態で配置されてるので、それが良いカードなのか悪いカードなのかを予測しながら進めるドキドキ感でした。
大詰めを迎えカオスと化したハッカソンでの制作現場。
村上 去年のハッカソンで作ったゲーム「プレゼント大作戦」と基本構造が似てるのかな。
門瀬 そう、同じなんです。「プレゼント大作戦」の時は、お題が「あげる」で、「プレゼントをあげる」っていうテーマにしました。
要は1点から5点までの点数がついたプレゼントカードがあって、たくさん集めて合計点の高かった人が勝ち、という単純なルールです。
毎ターンごとに手元のプレゼントカードを他人にあげたり、自分のものにすることもできるんです。そしてそのプレゼントには宝石みたいな「プラスの物」と、
石ころみたいな「マイナスの物」が混在してるんですね。そのプレゼントを表を向けて置いたり伏せて置いたりして、
果たして自分の手元に集まったプレゼントの点数は何点なんだろう?という遊び方をします。
村上 さっき話してた「基本構造が似てる」部分って、その「プレゼント大作戦」と今回の「ただいまらそん」は両方とも自分の枠があって、
まずはターンごとにアイテムを配置していくという基本ルーチンがあるということ。そのアイテムにはプラスのもの、つまり進むものとマイナスのもの、
戻るものが混在していて、それがどちらか分からないというドキドキが得られるってことね。
門瀬 それがランダムではなくてプレイヤーが任意に仕掛けるので、それを読み解くというのが共通する面白さですね。
アイテムの中身を知ることもできるんですけど、それによって貴重な1ターンを消費してしまうという駆け引きもあります。
危険を冒して近道をするか、ターンを消費してでも安全に遠回りをするかというトレードオフがポイントです。
村上 途中までは淡々とアイテムを配置していくという、言い方悪いけど作業的なルーチンが続くよね。
でも途中から徐々に邪魔の要素が加わってきて、それまでコツコツと蓄積してきた要素が一気にひっくり返される。
大富豪でいうところの革命にあたる要素だと思うけど、常に革命が起こることを予測しながら進めなければいけない緊張感があるね。
門瀬 相手の行動の裏の裏まで読まなきゃいけないので、相手の表情を読み取る力も求められますね。
村上 対戦相手によっても大きく戦況が変わるような奥の深いゲームになってるけど、あれをゼロから考えてルールを固めて、
絵を描いてレベルデザインを含めてたったの8時間でゲームとして遊べる形に完成させるというあの凄まじい集中力(笑)!
門瀬 確かにものすごい現場になってましたね(笑)。
完成作品をSkypeで他大学にプレゼンする門瀬さん
村上 その場で組んだメンバーだからほぼ初対面同士でもあるよね。しかもその場でお題が発表されるから何も準備ができない状態で。
それでどうやってチームをまとめて、全員のモチベーションを保てたのかな。グループワークという名のゲーム性について考えてみようか。
門瀬 ハッカソンって、不思議なことに途中で疲れないんですよ。朝から晩までアドレナリンがものすごく出てる状態なのでただただ楽しくて。
でも終わった瞬間にとんでもない疲れが一気にきますね。
村上 大学の授業って80分とか90分とかあって、30分間同じリズムの語り口調で講義を受けたらかなり辛いよね。
「ゼルダの伝説」で遊ぶときは同じ姿勢を保ったまま3~4時間周りが見えないくらい画面に食い入る状態になるけど、ハッカソンもこれに近いのかな。
てことはハッカソンってゲームなんじゃないかな。なんであんなにのめり込むんだろうね?
門瀬 時間制限がある制作って、かなり追い詰められるけど楽しいんですよね。
例えばスーパーマリオで後ろから壁が迫ってくるようなステージがあるじゃないですか。
あれに対してプレイヤーってあまり不快感を覚えなくて逆に面白い要素として捉えますけど、これに近いんですかね。
村上 強制スクロールのゲームと同じ構造でありながら強制感がない?まあ、実際に死ぬわけじゃないしね。
門瀬 後ろから迫ってくるから逃げるけど、でもそれが面白いと感じられるゲームデザインになってるじゃないですか。
死にたくないから時間を短縮するためにどのルートをとるかっていうのを瞬間的に判断しながら動きますよね。
瞬間的にすごいアドレナリンが出るので、その感覚が楽しい追い詰められ感になって、ハッカソンにも同じことが言えるのかなと思います。
短い時間でやるので、とにかく計画を立てるんですよ。
私がグループワークをするときに意識してるのは、「やらされる」っていう強制感を与えないようにする工夫です。
村上 どうやって?
門瀬 「一人ずつ案を出していこうか」というのもアリなんですけど、今回だったら「かえる」っていうところから一人ずつアイデアを出させるよりは、
一つの案を紙の真ん中に書いて、それを外側に広げていくやり方の方が良いんじゃないかと思って。
「プレゼント大作戦」の時だったら、プレゼントの中身が見えてる方がもらった時に嬉しいのか、見えない方が良いのか、そういう疑問を一つ投げかけて、
それに対してグループメンバーがその時の感情とか状況についてディスカッションしてどんどんイメージを広げていったんです。
だから一人の話から広げる形の方が、議論じゃなくて対話をしてる感じで盛り上がっていくので、それに伴って皆のテンションも上がっていくんですよね。
一旦テンションが上がるとアイデアが連鎖反応を起こしていくんです。
それが少し引いてきたと思ったら、その段階でのアイデアを一旦まとめて、そこから次のステップの対話に入っていくということを繰り返して企画を立てていきました。
村上 それによって普段あまり話さない人も話すようになる?
門瀬 さすがに初対面となると初めはなかなか出ないです。私のチームは5人で、1年生1人、2年生3人、そして3年生の私を入れて5人です。
最初は冷え切った状態から始まりましたね。
村上 でも最終的にはあれだけヒートアップしてたね。
門瀬 いじられたら面白いんだけど自分から一歩を踏み出せない人っていうのがいるので、
そういう人を最初に見つけていじるんです。その子が話し始めると周りに反響してどんどん話すようになってくるんですよ。
身内みたいな空気で二人で盛り上がるっていうのは絶対ダメなんですけど、まず私が2年生に冗談を言って笑わせたら、
他の2年生が絡んできて、そうなると話したことがない1年生も入り込める空気ができるんですね。
そこで「どう思う?」って話を振ると、それだけでしっかり答えが返ってきます。
やっぱりグループワークでは空気ってすごく大事だなって思いますね。
発想力が凄い人っていうのもいるのかも知れないですけど、グループワークするときって、
結局全員が育ってきた環境が違うので価値観も違うっていうのが見えてそれが面白いじゃないですか。
だから全員が話せるような空気作りができたら絶対にどこからか面白いアイデアが出てくると思います。
村上 チームリーダーになったからそれをしなきゃいけないと思った?
門瀬 それはないです。誰かのため、とかいう綺麗な話ではなく、単に私がそうじゃないと生きにくいからです。
強制して「お前、アイデア出せよ」っていうのと、アイスブレイクとして「今からマジカルバナナやろう!」
て言うんだったら出てくる案は同じだったとしても捉え方が変わると思うんですよ。マジカルバナナっていうコンテンツを使う事で、
楽しんでゲームに参加してるっていう状態でアイデアを広げていけるっていうか。
ゲームとかゲーミフィケーションの持つあそびの力によるものが大きいと思いますね。「ゲームって楽しい」っていう謎の固定概念がありますけど。
親が宿題をやれと言っても子供は動かないって、よく先生言ってるじゃないですか。
村上 なんだか村上イズムが浸透してきたな(笑)。
門瀬 ですね。単純なことなんですけど、何点取ったらご褒美あげるって言われたら子供ってすごく食いつくと思うんですよ。
でもそれって、つまらない事をやらされてるっていう強制感を感じさせないように親が必死で隠して餌で釣ってるだけなんですよね。
でも人間って嬉しい形で餌を置かれると食いつきたくなるじゃないですか。逆に背中を押されるとやる気がなくなるんですよね。
なのでグループワークでゲームの要素を使うってなったときに、とにかく「聴く」っていうのが一番大事なんだと思います。
聴いて話を引き出していくっていうか、あー、何言ってるんだかワケわからなくなってきました(笑)。
村上 要するに聞き手に傾聴の姿勢があるから、誰かがアクションを起こしたときにすぐリアクションがとれて、
それがゲームていうところの「即時フィードバック」や「称賛演出」につながって、話し手は「聞いていただけた」っていう喜びが得られるから頑張ろうという気になる。
そこで褒められた日にはもう舞い上がっちゃうよね。ってことね。
門瀬 そう、それ!それ言いたかったんです(笑)!
村上 で、さっきの話で一つ気になったんだけど、「前に餌を置かれると燃える」でも「背中を押されると嫌がる」って話。
脱出ゲームを作る時は実はこれ逆なんだよね。脱出した先に何があるかはどうでもよくて、後ろから「時間」というものが迫ってきてるから、
そのネガティブな要素がモチベーションにつながって脱出しようとする。つまり中が嫌だから外に出る。でも今の話だと、目の前に餌があるからそこに行きたくなる。
この時に発せられるエネルギーって全然違うように感じるね。
門瀬 脱出ゲームの場合は、ゲームである以上「脱出しなければならない」っていう使命感はあるんですけど、答えを自分で発見した感覚があるから面白いんですかね。
村上 結局ゲームだから答えは用意されていて、自分で解決したかのように演出されてるだけなんだけどね。さっきの、餌で子供のやる気にさせる親と同じで。
門瀬 そうなんです。作り手の掌で転がされてるんです。でも転がされてるって感じないように設計されてるからあれは面白いんだと思います。
あたかも自分が凄いことを思いついたって錯覚させられるんですよ。
村上 昔から、「ドラゴンクエスト」は自由度が高くて自分でストーリーを作ってるように感じて楽しいのに対して、
他のRPGは一本道のストーリーをなぞるだけだからゲームとは言えないよね、みたいに批判された時代があったけど。
先日もゼミ通ヒーローズの中井涼の対談の中で「パワポを使った時点で授業は一方通行になるから聞く気をなくす」みたいなことを言われて…。
門瀬 それと同じだと思います。自己統制感があるからゲームが面白くなるんだと思います。
村上 答えはあるのに自分で発見したように見せる演出がゲームを面白くする一方で、ハッカソンの場合はそれこそ答えはない。だから面白いのかな。
門瀬 確かに何でもアリなんですけど、そこに時間制限があるからそれがゲーム性となってハッカソンっていうイベントが面白くなってるのかなって思います。
やっぱり何かを捻り出さなきゃいけないんですよ。「出来ませんでした」はダメなんで。
村上 これがプロの開発現場なら「出来ませんでした」はリアルに致命傷になるけど、ハッカソンの場合は出来なくても何の罰則もない。
なのにどうして「出来ませんでした、はダメ」になると思う?
門瀬 上からの強制力ではなくて、クリエーターとしての自分との闘いなんですかね。
チーム対抗って言ってますけど実はそこはどうでもよくて、時間内にゲームを完成させるっていうゲームに打ち勝つことができるかっていうことなんだと思います。
村上 やっぱりゲームなんだ(笑)。ルールは「8時間でゲームを完成させる」なんだけど、それが「作用」なのだとしたら「反作用」って何?
門瀬 テンションですかね。私が高いテンションを保てても周りがついてこれるかっていう問題があります。
ハッカソンそのものがゲームという捉え方ができるって言いましたけど、私にとっては、ハッカソンの中でのグループワークがゲーム作りなんですよ。
えーと、ややこしいですね。ゲームを作るっていうんじゃなくて、グループワークという名のゲームを作って私がグループメンバーを躍らせるっていう
シミュレーションゲームを楽しんでるって感じなんです。
村上 ややこしいけどよくわかる。キミも成長したな(笑)。
門瀬 とにかくみんなを気持ち良くさせるんですよ。気付かないうちにちゃんとやれるようにレールを敷くっていう感覚ですね。
そもそもゲームって義務がないからつまんないと思ったら途中でやめるじゃないですか。
ハッカソンもそれと同じだと思ってるんですけど、
それは私が許せないので。でも私一人ではゲームは作れないから、皆を動かすんです。
義務感はないけど途中離脱したくないような状況づくりをするというゲームですね。
村上 スタッフは駒なんだ(笑)。
門瀬 いや、…言い方悪いですけど、…えーと、そうです(笑)!
村上 マイルドな言い方すると、サッカー選手と監督みたいな感じね。ハッカソンの中で二重にゲームが行なわれているって感じか。
門瀬 グループワークで話し合いをしてる時に私が何か面白いアイデアを思い付いたとして、それをぶつけるのってあまり得意じゃないんです。
なので皆が分からないように私の意見に近づくように誘導していくんですよ。これが楽しいから私はグループワークが好きなんです。
リーダーっていうと、RPGなら万能で皆を導く勇者タイプのイメージがあるんですけど、私はそうではなくて、
列の一番後ろにいるんですけど道は変えさせねーぞと(笑)。
でもそれはそれでwin winだと思うんですよね。とにかく気持ちよく冒険はしてほしいんです。
それは私があまり発想が得意じゃないからなんだと思います。
村上 後輩たちからすると門瀬の存在って「発想力豊かな先輩」って位置付けられてるよね。
門瀬 いや、それは違いますね。今回のハッカソンでは私はほとんど意見は言わなかったですし。
村上 でもそれって良いアクティブラーニングの特徴でもあるんだけど、「教え込む」じゃなくて「学びたくなる状況を演出する」ができたってことじゃない?
門瀬 一歩引いて全体を見る方が面白いんですよね。芸大に入学してよく分かりました。
元々兄(キャラデ卒)って私にとって絶対的な存在で、なんというか天才肌なんですよね。
それに対して私は凡人なんですよ。それは私の思い込みじゃなくて、自分を客観的に分析した結果で。なので発想力があるっていうよりは、
そう見せる「フリ」がうまいんだと思います。周りの人のエネルギーを吸い取って、発想力という名の殻を作ってるんですよ。
村上 やっぱり演出って大事だね。
門瀬 そうですね。人の力を使ってそれを増幅させて、発想力が高いキャラのように見せるんです。
村上 極真空手よりも合気道に近い感じかな。相手に攻撃させて受けて倒す、みたいな。
門瀬 まさにそんな感じです(笑)。で、今回のハッカソンで一つすごく嬉しかったことがあるんですよ。同じチームにいた1年生の後輩が、
別のチームの子に「うちのチームはどんどん進んでいってすごく楽しいよ」って伝えてたらしいんですけど、それが一番嬉しかったですね。
村上 それは門瀬個人が褒められたということじゃなくて、チーム全体が評価されたってこと?
門瀬 いや、ただ単に私の思い通りにいったっていう感覚です。あ、楽しんでもらえたんだ!っていうことが嬉しかったです。
村上 ゲームってプレゼントだと思っていて、人の驚きをデザインする仕事だから、思惑通りにいくと嬉しいよね。
門瀬 落とし穴を掘って、そこに誰かが落ちた瞬間の気持ち良さですかね。
落とし穴が見えないように周りをデコレーションしていって、気をそらして落とすみたいな。
村上 授業の頭でいつも言ってるけど、ゲームを作る人って、いたずら好きとか、良い意味で性格が悪い人が向いてるかなって。
でも、驚かすっていう欲求が強すぎてそれが仇になることもあるね。自分が外で見てすごく感動した映画があって、
これを嫁さんにも見せたいからあとでDVD買って一緒に観ようと思ったことがあって。同じ場面で驚いて、
同じ場面で感動して泣くっていうことを共有したいんだけど、見せ場が来て、嫁さんの反応をチラっと見たら映画観ずにめっちゃスマホ触ってたりして、
いやいや、ここ!ここっ!!てなるよね。この喜びを共有できない悲しさよ。
門瀬 めっちゃわかります。でもそれが面白くないですか?
村上 やだ。
門瀬 この人は全然違うんだ!って分かったらそれが新しい発見になるし。もちろんその瞬間は否定されたみたいで悲しくはなりますけどね。
村上 いや、だってさ、この映画を見せるためにだよ、時間を調整して、御膳立てして、テレビの前まで誘導して、
さあ見るぞって時によ、スマホかよ、ツイッターかよ、てなるよね。いや分かってるよ、どうせ俺の演出力不足ですよ。
門瀬 大人げないです。
村上 でも不思議な事に、自分が開発して商品化されたゲームがネットで叩かれても全然平気なんだね。無償でやるか有償でやるかの違いなのかな。
無償のものってそれなりのテンションで準備するでしょ。見返りがないから愛情で勝負っていうか。
でも商品開発の場合、ネットで悪口を書く人って「ちゃんとお金を払って買ってくれてんじゃん!」て思う。
しかもエンディングまで見た上で悪口言ってるから、こちらとしてはありがたやありがたやってなる。
俺、構ってちゃんだから悪口言われると燃える。
門瀬 (爆笑)
村上 授業中に学生に寝られたら少しヘコむかな(苦笑)。自分が感動して体得した内容を学生のみんなにも共有したいっていう気持ちで授業やってるから、
「よくも寝やがったな」ていう怒りではなくて、嫁のスマホ状態で「この喜びを一緒に味わえないのかぁっ!」って寂しくなる(苦笑)。
帰宅したらその日の晩は膝抱えて過ごす(笑)。
門瀬 …。
村上 さあ、もう何の話だかワケがわからなくなってきたね。今回はハッカソンを通して、人の気持ちを誘導するデザインというか、
そのデザインそのものが実はゲームであるという話を門瀬さんにしていただきました。では今日はありがとうございました。
門瀬 はい、ありがとうございました。
★★★★★★★★★★★★
4月27日(土)、28日(日)に高校生・受験生を対象としたオープンキャンパスがあります。
みなさんの参加をお待ちしています!
詳しくはこちら!
参加が難しい方は、今後のオープンキャンパスの予定を以下よりご確認ください!
詳しくはこちら!
★★★★★★★★★★★★
2019年4月5日 インタビュー
中井涼と「学びという名のゲーム」について語るの巻
今回のゼミ通ヒーローズは、村上ゼミ3年生の中井涼さん(金沢辰巳丘高等学校出身)をピックアップ。
ゲーム開発会社Happy Elementsの合同授業やゼミ内プロジェクトの記事でもたびたび紹介されているゲームゼミの名物キャラですが、
今回は彼女の「学び」によってモチベーションを高める秘訣やあそびの力で日々を楽しくする方法についてお伺いしようと思います。
ハッカソンにて、グループでアナログゲームを制作する中井さん。
脱出ゲームで石鍋先生を壁に拘束する中井さん。
台湾漫画博覧会にてステージ上でイラスト制作を実演する中井さん
村上 中井は色々な活動をしていて、とにかくアグレッシブなイメージがあるけど、具体的にはどんなことをやってる?
中井 ゲームゼミ以外の活動でいうと、LIMITSのオマージュとなるMINUTEっていうペイントバトルの監督をやらせてもらってます。
1年生の時は「見世物小屋プロジェクト(学祭で開催しているお化け屋敷の制作)」「京造イルミネーションプロジェクト」をやってきて、
2年生の時は「見世物小屋プロジェクト」のLA(ラーニング・アシスタント)もやらせていただきました。
あと、台湾研修とかオープンキャンパスのスタッフとかハッカソンとか、先日はイラストのグループ展とか色々やってましたね。
村上 それだけの活動をしていながら一切モチベーションが下がらないのが不思議なので、今回はその秘訣を教えてもらおうかと。
中井 はい、高校時代まではとにかくグループワークが苦手で、それを克服するためにプロジェクトの参加を決めました。
ここは学費が高いので(笑)、やれることは全部やってしまおうと思って。やっぱり1年生だったので最初は何でも楽しいじゃないですか。
学科で習うことも全部楽しくて、楽しいという気持ちがあるからやってこれたし、私は新しい環境というのが好きで、
ていうかずっとその場にいられない人なんで、新しい場所に行って新しいものを得てるという感覚があるから色々やっていけるんだと思います。
村上 楽しい=モチベーション、てことね。じゃあ「楽しい」とはどういうこと?
中井 やってる内容というよりは人との関りが楽しいんだと思うんですよ。結局授業だって先生とか周りの学生と関わっていきますよね。
プロジェクトに関しても、仲間がいなきゃ絶対にやれないものなので、
その仲間と連絡をとりあって協力して何かを作るというのが私的には楽しかったのかなと思います。
村上 寂しいんじゃないのか?(笑)
中井 そうかも知れないです(笑)。一人の時間も大切で、一人にもなりたいんですけど、…やっぱり寂しいんですかね。
でも、私の性格的に誰かとの関りを長く続けることもできないんですよ。すぐ自分から断ち切っちゃうんで。
今一緒にいて楽しければそれでいいかなと。
村上 ドライな関係やな…。お前は用済みだ、的な?
中井 いや、そんなんじゃないですよ(笑)。自分から連絡を取るっていうのが凄く苦手で、
特に仲が良くて好きな相手ほど連絡がとりにくいんですよ。自分が「どうせ私なんて」って思ってるから、
相手も同じように考えてるのかなと思うと別に連絡とらなくてもいいかなって。
村上 新しいものを求めるからそうなるのかな。同じ人と同じ事をするよりも他の人と違う事をする方が有意義とか。
自分もそうだけど、貧乏性なのかも。生きてる時間が限られてるのに同じ人とだけ関わると時間が勿体ないみたいな。
中井 そう、その感覚です。
村上 その時は楽しいけど、40歳過ぎて友達が少ないのはなかなか寂しいぞ(笑)。
いざ立ち止まって振り返った時に「これで良かったのかな」って思うし。
中井 でも私がそういう考えだから相手も同じように考えてるだろうって思っちゃうんですよね。
だったら相手にとっても私は要らんくね?って思うんです。
村上 親友は?
中井 いないです。
村上 即答(笑)。
中井 私は「聞く専」なので、人それぞれが持ってる色んなアイデアとか考え方を聞いて、
それを自分のものとして吸収したいっていう欲求があります。
村上 知識欲?ゲーム要素でもある「欠落を埋めたがる欲求」が強いのかな。やり込み要素満載の人生やな。
中井 何でも知っておけば損はないじゃないですか。自分がどれだけ考えても出てこないアイデアをもらうみたいな感じなんで、
それが私はすごく楽しいんですよ。自分から話すと、アイデアを他人に渡すことになっちゃうんでそれはヤだなと。
村上 わがままな奴やな(笑)。でもグループディスカッションの時は結構発言するよね。
中井 それはグループを良い方向に導かなきゃいけないから、そういう時はどんどん発言しますよ。
自分がいるチームに対してアイデアを出さないと自分にもペナルティが架せられるから。
村上 知識欲と独占欲が強いのはよく分かったけど、知識をコンプリートしたらどうする?生きてる上でコンプリートなんてあり得ないことだけど…。
中井 コンプリートすればするほど大きな作品が作れるんじゃないですかね。
村上 最終アウトプットのイメージはある?
中井 ゲームとは全然違うんですけど、60代とか70代になって、お母さんと妹と一緒にお店を開きたいんですよ。
そこで自分のブランド…というか自分を表現する何かの媒体として作品や商品を売りたいんです。その時に、
それまで蓄えた知識とか技術を一気に使って吐き出したいという想いはあります。何でもやりたいんで一つの枠に収まりたくないんです。
枠に入ると一年もたたずに飽きて辞めちゃいそうです。
見世物小屋のプロジェクトをやったからお化け屋敷を運営する会社に就職するとか、そんな風には考えたくないですね。
村上 継続力があるというわけではないんだね。継続せず毎回新しいことをするからモチベーションを維持するというパターンか。
自分から何か新しいことを発信することが楽しいんだと思うけど、逆に「新しいこと」を義務付けられたり強制されたらどう感じる?
中井 義務の定義を説明してもらって、それで納得できればやると思いますけど、相手が求めるものが自分の価値観と合わなければお断りします。
やらされてるって感じたら続かないんで…。
村上 強制ではなくて誘導ならどう?やれと言われるんじゃなくて、やりたくなるような状況を作られて、
いつの間にか相手の掌で転がされてるとか。所謂ゲーミフィケーションなんだけど。
中井 掌で転がされようと、一度は「やりたい」って気持ちになるわけだから、それは良いと思います。
村上 じゃあ、子供は宿題をやれと言ってもなかなかやらないけど、ゲームは隠れてでもしようとするよね。その違いは何だと思う?
中井 宿題の場合は「やれ」って言われるから嫌になるんじゃないですかね。
ていうか「宿題」っていう名前とかその出し方に問題があるんじゃないですか?
私は答えのある問題を解くんじゃなくて、まだ誰も得てない「知識」が欲しいんですよ。
だから人と話をして、その人にしかない考え方を吸収して自分なりの見方を養っていくっていうのが好きなんです。
学校で「教わること」は他の皆も持ってるってことなので、私は違うことを「学びたい」って思います。
村上 ちなみに我々は第二次ベビーブームと言われる世代で、同級生の人数が多すぎるから何をするにも全て競争だったのね。
勝たないと得られないから「ベスト1」が美徳とされてた時代。その後の世代では「オンリー1」っていう言い方が流行ったよね。
たまに自己中的な代名詞として揶揄されたけど…。
で、これからのソサエティ5.0の時代に向けて必要なのはベスト1でもオンリー1でもなく、「ファースト1」だと思うのね。所謂イノベーションってやつ。
中井 その考え方すごく好きです。競争じゃなくて新しいことしたいです。学ぶのは好きなんですけど勉強めっちゃ嫌いなんで(笑)。
村上 教員の教え方次第かな。「教える」のではなくて「学ばせる」が重要なわけで。
「教える」だと学生からしたら全然面白くないしモチベーションが維持できない。
学生が自分で発見するか、自分で発見したかのように感じさせて驚きを与える演出が大事だと思うんだよね。
中井 ほんとそうですよね。中学生の頃とか教え込むタイプの先生ばかりで勉強がめっちゃ嫌いになって、
結局先生のことを「知識をくれる道具」としか見なくなりました。
村上 Googleかよ(笑)。
中井 そうなんですよ(笑)。「教え込まれた」と感じた授業の内容はほとんど頭に入ってないです。
村上 テストに向けて丸暗記しただけだもんね。知ったことを発信して、それを受けた人からリアクションがあって、
それを見て初めて記憶というか心に定着する。やっぱりボールを投げたら打ってほしいもんね。
中井 ゲーム特有の「即時フィードバック」の要素が重要ですね。
村上 以前、学びとゲームの研究の過程で、ゲーミフィケーションを使って図書館利用者を増やすことができるかっていう実験をしたよね。
活字離れが懸念されるからって「本を読め」って言っても誰も本を読まない。よほど読みたい本があれば別なんだろうけど。
中井 空間から入ったらいいと思いますね。そもそも図書館っていう空間がしんどいんだと思うんですよ。静かにしなきゃいけないとか飲食禁止とか。
「ハリーポッター」に出てくるホグワーツの図書館って、皆と話しながら本を読む場面が多くないですか?
村上 分かるけど、気が散らない?
中井 でも本棚で仕切られてたりするじゃないですか。学校の図書館みたいに本棚と机の領域を分けて固めるんじゃなくて、
色んなところに机があれば個人のスペースが確立できるし、その一個一個の中なら多少話をしても構わないってなりません?
図書館って「知識を得る場所」なのだとしたら、それを吐き出すことも同時に出来た方が良いと思うんですよ。
ゲームの理屈から言うと、吐き出すことによって知識が深まりますよね。だから図書館でミーティングをした方が良いと思うんですよ。
村上 確かに、さっきまでの文脈でいくと、本を読んで頭の空白を埋めて、情報が満たされたらそれを吐き出して第三者に伝えて、
リアクションを得て初めて自分の記憶に定着するっていう即時フィードバックの反復ね。それは効果的かも知れない。
中井 本って、知識を蓄えるだけの道具じゃなくて対話の道具であるべきだと思うんですよ。
友達同士でページめくって「わー、これすごーい!」とか言い合ったら絶対記憶に残りますよね。
蓄えるだけの道具だったら図書館じゃなくてGoogleで良いと思います。
村上 昔ながらの考え方かもしれないけど、図書館でのアウトプットって、静かにレポートを書くとか、そういうことなんだと思うのね。
提出されたレポートに対する先生のリアクションが来るのは数週間後。それは即時フィードバックとは言えない。
中井の理屈はコミュニケーションというゲームがあることによって学びが効果的になるってことね。
中井 単に私がコミュニケーション好きなんで(笑)。あ…、これもしかして図書館の悪口みたいになっちゃってます?(笑)
村上 いや、愚痴ならスルーするけど、前向きな問題提起だから全然良いよ。コトを荒立てた方が前に進むから。ところで、中井ってゲームはやらないの?
中井 子供の頃にポケモンやってましたね。そこでハマりましたけど、最近は全然やってないです。ポケモンGOくらい。
村上 やっぱりポケモンかよ(笑)。なんで好きなの?
中井 人間とモンスターっていう異種間のコミュニケーションに惹かれるんだと思います。
自分とは違う者と共存して一緒に戦うとか。人と人とのつながりというよりは、異種である事が好きです。
アナログゲームの場合だと、面と向かって人同士の関わりで遊ぶことになりますけど、対面でゲームをするくらいなら「会話しましょう」ってなりますね。
村上 去年中井のリクエストで屋外で「缶蹴り」をやりながらゲーム分析をしたけど、あれもゲームというよりもコミュニケーションを渇望してたから?
中井 完全にそうですね。皆ともっと仲良くなりたかったし、「体育館使って走り回ってるけどあの人たちは一体何をやってるんだ?」って周りの友達に思われたかったです(笑)。
村上 ゲームゼミって、パソコンを使ってプログラミングしたり美少女キャラの絵を描いたりっていうイメージがあるのかな。
中井 そうだと思いますよ。せっかくあそびというものを研究するなら、幅広くやって、「うちのゼミこんなことやったよ」ってみんなに自慢したいです。
村上 ガイダンスでも「ゲームの作り方を教えます」とは一言も言ってないんだけど、ゲームって名前がついてるからどうしても誤解されるね。
で、さっき好きなゲームについて聞いたけど、今度は好きな授業ってある?その授業の中のゲーム性について分析してみようか。
中井 太木先生(グラフィックデザインの先生)の授業は全部好きですよ。実践的な技術や知識も得られてフィードバックも速くて、
頑張れば頑張るほどリアクションも変わってくるので。頑張らないと容赦なくボコられますけど。もし頑張ったのにリアクションが薄いと、
なんでダメだったのかを必死で考えますね。自分だけ褒めてほしいから頑張るっていう部分もあります。
村上 太木先生を独り占めしたいのね。あとゲームの7要素にある「称賛演出」の渇望かも知れないね。
中井 太木先生に関しては「強い女性」っていう印象があるんですよ。全然ブレないし。私たちの世代って強い女性に憧れるんです。
女性社会に変わりつつある中で、あんな強い人をみるとちゃんと頑張りたくなるんですね。
高校の時の先生もめちゃくちゃ厳しくて怖かったんですけど、言い過ぎて生徒が泣いたら慌てて優しくフォローしたりとか。もうブレッブレなんですよ(笑)。
村上 となると、知識欲、独占欲と色々出てきたけど、どういう感覚なんだろう。太木先生の存在は、中井にとっては師匠?いやラスボスなのかな?
中井 ラスボス(笑)!そうではないですね。太木先生の知識や考え方が欲しいんですよ。
村上 なるほど、じゃあポケモンだ。ドラクエだったら敵を見つけたらただ倒すけど、ポケモンは敵を弱らせてから捕まえるよね。つまり太木先生はミュウツー(笑)なんだ。
1ターン毎にボコボコにやられるけど、技術が欲しいから耐えて耐えて、モンスターボール投げて太木先生ゲットだぜ、みたいな。
倒したいわけではなくて後から利用できる技術が欲しいという感じ。
中井 まさにそうですね。だから強そうな人ほどお近づきになりたいです(笑)。
村上 あ、そうそう。中井のことで一つ気になってることがあって。後期の頭くらいだったかな?
ゲームの授業で講義が三週くらい続いたときに、「先生の言葉が聞きたいです」て言われたのがすごく印象的だったというかショックだったというか。
そこの真意を聞かせてくれる?
中井 一般的な知識がほしいわけじゃなくて、先生だからこそ話せることとか、先生が実際に感じたこととか、「この人から学んだから価値がある」って感じたいんですよ。
村上 でもあの時の講義の内容は、自分の中にあるものを吐き出したもののはずなんだけど、結局話し方とか見せ方の問題だったのかな。
個人的に講義ってあまり好きじゃなくて(笑)、機械的な情報伝達になりがちで体温が伝わりにくいから。
Power Pointを使った時点で一般論を淡々と語られてるように感じるのかもしれないね。で、結果「つまらない授業」って思われるという。
中井 だと思います。講義…はもうなくていいです(笑)。授業をしないでください(笑)。
見世物小屋のプロジェクトのときにもそういうのがあって、ストーリーを作る時に、「人間の怖さてっいうのが最終的に重要なんだよ」って先生は教えたかったんだと思うんです。
でもそれをスライドとかパワポで見せちゃうと「教える」ことになっちゃってダメじゃないですか。
じゃあどうしようってなった時に、貴船神社にみんなで行ってみようってなったんですよ。
呪いの藁人形を使った丑の刻参りがありますよね。その時はお化け屋敷感覚で怖がってたんです。
村上 リアルに感情が出てくるのはフィールドワークの醍醐味だわな。
中井 そこで感想をまとめて発表したんです。そしたらほとんどの人が「この絵馬が怖くて」みたいなことを言うんです。
でも最終的には丑の刻参りをしてる「人」が怖いっていう結論が出て、「そうかー、みんな人が怖いんだね」って誘導されて、なるほど!てなったんです。
実際に怖いと思って自分たちなりに発表までして、その発表の内容に対して的確に誘導されたからインパクト絶大で完璧に心に突き刺さりました。
村上 自分でリサーチした情報に新たな価値を上乗せされたことで、「教わる」じゃなくて「学ぶ」になったわけね。
もしそこでパワポを使って「人=怖い」みたいなスライドを見せられた日にゃ…
中井 あーもう最悪ですね(笑)。なんの学びもないし授業がつまらないと感じると思います。怖さの理屈を教え込まれるんじゃなくて、
体験して考えて発表までして、一回考えてるっていう経験があるから確実に理解できるんですよね。
村上 ゲームの基本=学びの基本っていうゼミの考え方が少しずつ浸透してるみたいで安心した。
「あそびの力で社会を豊かにしよう」ってカッコ良いよね(笑)。ゲームゼミが狙ってるのはそのポジションなんだけど。
ゲーム作りの技術を教えるんだったら専門学校さんの方が良いだろうし。
基本姿勢だけ教えておけばあとはみんな勝手に野間先生の授業で技術を習得して勝手に面白いゲームを作ってくれるのでこちらとしてはとてもラクでいいなと(笑)。
というわけで、今回はゲームはゲームでも、学びの中にあるゲーム性という点について掘り下げて話をしてみました。
学生視点の話が入ると机上の空論ではなくリアリティがあってこちらも良い勉強になります。
では今日はありがとうございました。
中井 ありがとうございました。
コース・分野を選択してください
京都芸術大学は、今アジアで最もエネルギーを持って動き続ける大学であるという自負があります。
通学部13学科23コース、通信教育部4学科14コース、大学院、認可保育園こども芸術大学。
世界に類を見ない3歳から93歳までが学ぶこの大学は、それぞれが溢れる才能を抱えた“プロダクション”のようなものです。
各“プロダクション”では日々何が起こっているのか。授業や取組みの様子、学生たちの作品集や人物紹介。
とどまることなく動き続ける京都芸術大学の“プロダクション”の数々。
そこに充満するエネルギーを日々このサイトで感じてください。