- 2021年2月8日
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2020年度・卒業展受賞報告
こんにちは、情報デザイン研究室です。
2020年度 京都芸術大学 卒業展における情報デザイン学科の受賞作品が決定しました!!
受賞作品の情報は以下の通りです。
氏名|コース|「作品タイトル」|展示場所
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【学長賞】1名
磯本 朱里(いそもと あかり)|イラストレーションコース|「RED FISH STATION」|智勇館1F|
【選評】
この作品には磯本朱里の本領がある。アドリブと計算、デジタルと手描き、物体と生き物の関係に次ぐ関係…。
場所がまずできてそこに人が集まるのではなく、人が集まることで場所ができていく。
これまで関わってきたプロジェクトで、そういうポジティブな場所を磯本は創作してきた。
今回は「場所」のイメージを宇宙へと拓く。
【優秀賞】3名
蒲池 郁弥(かまち ふみや)|ビジュアルコミュニケーションデザインコース B領域|「A & N TOYS」|智勇館4F|
【選評】
メディア& テックが日常となった世代を象徴するような軽やかな影絵のインスタレーションが視覚を愉しませてくれる。
3DCG によって針金細工のように仮想的に立体化したイメージを3D プリンタで出力したオブジェと、オブジェの影と、
仮想的立体(映像・光)と、影の映像の構成によるその見応えは、試行錯誤の時間にも裏付けられている。
長谷川 文香(はせがわ ふみか)|イラストレーションコース|「off-registration」|智勇館1F|
【選評】
作者はピアノを演奏している際に感じた、指を通じて鍵盤、空間へ身体が拡張していく感覚に着想を得て、本作品を制作したそうだ。
身体の不確かさ、存在の危うさを、理想と現実というテーマにリンクさせ、鑑賞者の視点が変わるごとに
線と色の重なりが変化するギミックで、それを表現している。
イメージの不可思議さもさることながら、シルクスクリーンの技術も高く評価できる点ではないだろうか。
松川 幸子(まつかわ ゆきこ)|イラストレーションコース|「メカめく」|智勇館1F|
【選評】
「メカめく」という造語から想像できるように、身近なモチーフを「メカ」にすることで「ときめき」を与えた意欲作。
作者は幼少期から憧れていた大河原邦男がデザインした「機械感」を研究し本作品にその魅力を存分に反映させている。
「納豆」の一粒がドックとなり、「イス」が大型の要塞に見えてくるように、鑑賞者の想像力を刺激するイラストレーションとして高く評価できる。
【同窓会特別賞】1名
相場 葵(あいば あおい)|イラストレーションコース|「Next1Dogs」|智勇館1F|
【選評】
犬と犬を取り巻く日本の環境や現状についてリサーチを行い、「どう犬と出会うのか?」というシンプルだが、
あまり知られていない業界について、可愛く、楽しく、面白く、クリエーションの視点から真っ向勝負をした作品。
ペット産業が一般的な日本において、この問題は決して簡単なテーマではないが、相場の作品を通して、知り、学ぶことで
明るい未来を一緒に考えたくなる、そんな空間を作り上げたことを高く評価した。
【コース特別賞】4名
隈井 美歩(くまい みほ)|ビジュアルコミュニケーションデザインコース A領域|「物の境界を思考する」|創々館1F|
【選評】
本作に登場する紙コップは水を飲むためではなく、別の用途と交換される。
この当たり前を疑う体験は、前提を批評するための隠喩である。
人類は新たな価値を獲得するために、前提を疑うことで高次な社会を実現させてきた。
紙コップから伺える日常の当たり前を問い直すことで、よりよい未来を目指す視点のダイナミズムを感じる。
小池 真緒(こいけ まお)|ビジュアルコミュニケーションデザインコース C領域|「Meta Drag」|人間館NA1F エントランス|
【選評】
私たちの日常には、表裏一体の生活が存在する。日常と非日常が同居しながら常に更新され、新鮮な出来事に遭遇する。
過去あらゆる民族が環境(社会) と共に生き、危機を乗り越え、数々のプログラムとして祭り事の様な弔い捧げる文化的な営みがある。
自身を変身させ欲望を露わに、むき出しの野生を捧げる様な風習がある。
現在Drag はファッションやジェンダーレスと言った時代のムーブメントとして世界中で支持されている。
変身、ヘンゲ、その魅力について数百年の歴史を遡り研究を進めた。
上林 紗奈(かんばやし さな)|イラストレーションコース|「幻想求人帖」|智勇館BR1F エントランス|
【選評】
空想上の職業の求人サイトとそれを紹介する冊子である。
奇異な仕事と職場だが、求人サイトとして紹介することで楽しみ多く想像しやすくさせている。
アイデアを柔らかな色彩とタッチのイラストレーションで表現し、さらにweb 上でモーションを巧みに組み合わせており、
コース教育の4 フィールド(プランニング、ディレクション、イメージメイキング、モーション)を併せ持っている。
今後のコース教育の一つの指標となる優れた作品である。
二ノ田 桜子(にのた さくらこ)|イラストレーションコース|「えもエモ〜ション」|智勇館1F|
【選評】
アニメーションにおける表情表現は、キャラクターへの感情移入や物語の伏線の重要な要素として、様々な手法が試みられ生み出されてきた。
『えもエモ~ション』は、そういった「絵」と「動き」による感情表現の蓄積や面白さを再認識させてくれる作品である。
作者の、先人の試行錯誤への敬愛と、動画作画への真摯な探究、その直向きさを讃えたい。
【奨励賞】17名
岡田 菜々子(おかだ ななこ)|ビジュアルコミュニケーションデザインコース A領域|「Delusion of value creation」|創々館1F|
【選評】
岡田のプロジェクトは、社会に蔓延るステレオタイプを鑑賞者に再認識させ、既存の価値観を揺り動かそうとする試みである。
綴られたテクストは読みやすく自然な文体だが、時間をかけて熟考されていて、その内容を視覚的に象徴化することで、新たな体験を鑑賞者に与えている。
岡田が抱くささやかな疑念は、確かなものに対する切なくも大きな希求の現われでもある。
杉山 桃華(すぎやま ももか)|ビジュアルコミュニケーションデザインコース A領域|「8 points of view」|智勇館2F|
【選評】
外出を許されない期間は、誰もが自宅の中で身のまわりを見つめ直す時間だった。
杉山の場合は、あたりまえのような存在の「基本」を分解し、新しい発想を得るためのシートづくりを日課としながら、
形態、材質、機能、目的などの置換作用によって独自の視点を模索し、その情報を美しく整理した。
杉山の作品によって鑑賞者は思索(speculate)を迫られる。
問いを創造するデザインの重要性を再認識させられるのである。
竹内 菜々子(たけうち ななこ)|ビジュアルコミュニケーションデザインコース A領域|「水泳って楽しい」|智勇館2F|
【選評】
ポスターが「イメージを持ってもらう為の経験つくりの場」となっていることに、平面表現の可能性を感じます。
「水泳あるある」を骨子としており、ユーザーにもノンユーザーにも違った角度で驚きと楽しみを共有できる、
情報が世の中に広がっていく要素を軽やかに含んでいるところにも魅力があります。
抑え気味な独自のトーンが、スポーツの表現への新たなアプローチを切り開いています。
永戸 栄大(ながと えいだい)|ビジュアルコミュニケーションデザインコース A領域|「言葉をつむぐ 言葉にふれる」|智勇館2F|
【選評】
文字の起源は声である。人の発する言葉を造形したものが活字となる。この言葉(声)と文字(形)の関係は興味深い。
声は形を持たず動き回るが、それを造形すると規定に則ったものとなる。
本作はそんな言葉(詩・有機性・主観)と文字(タイポグラフィ・設計性・客観)が往還しており、デザインの役割と可能性が拮抗している。
馬場 颯季(ばば さつき)|ビジュアルコミュニケーションデザインコース A領域|「食器ブランドSun」|創々館1F|
【選評】
「流行色と社会情勢」この2つの関係性を探るところから研究・制作はスタートしました。
自然災害や景気などによる心理状態で人々が選ぶ色が変わるのであれば、色が変わればその逆も起こり得るのではないか。
日常や社会への優しい眼差しで、思考や考察を軽やかに感情化し、新たなストーリーをつくりだす。魅力的なデザインの機能のさせ方です。
内野 結子(うちの ゆうこ)|ビジュアルコミュニケーションデザインコース B領域|「ハダカ」|智勇館3F|
【選評】
社会における個を裸に喩え、一見とっつきやすいピクトグラムのアニメーションで表現している。
絵と言葉を同等に、横断的に扱い世界をとらえようとするその仕方は、
ブルーノムナーリや寄藤文平らを連想させるとともに、視聴する者に自らで考えることを促す、
ビジュアルコミュニケーションの豊かな可能性を感じさせる。
瀧田 蒼良(たきた そら)|ビジュアルコミュニケーションデザインコース B領域|「風が吹けば桶屋が儲かる」|智勇館3F|
【選評】
一定の視点から見ることでひとつの画像が生まれるといった、よくある作品に見える。
しかし始まりの視点から時計回りに鑑賞することでひとつの物語を体験することができ、
最初に戻ることでなぜその絵だったのか解決される仕掛けがある。
それは視点を移動することで、見えなかった絵が現れ、消える。
まるで絵本のページをめくるようにストーリィが展開されるさまは、空間表現された絵本と捉えることができる。
まさしく視点の違いによる情報の変化である。
榛澤 奈欧美(はんざわ なおみ)|ビジュアルコミュニケーションデザインコース B領域|「AskHive」|智勇館3F|
【選評】
シェアという行為において、モノについては一般に浸透しているが、コトについてはまだそれほどではない。
既存に「Yahoo! 知恵袋」があるが、そこでは情報発信者と受信者との関係が一方通行であり、まだまだシェアとは言いがたい。
この「AskHive」は行為そのものがシェアの精神に基づき、そこにこの作品の本質と可能性がある。
本学初、二度の交換留学体験を持ち、かつ彼女自身がMIXである。
そんな榛澤だからこそ気付けた作品にオリジナリティを感じる。
楠本 祥子(くすもと しょうこ)|ビジュアルコミュニケーションデザインコース C領域|「ArtとDesignの処方箋」|智勇館4F|
【選評】
楠本は4 年間、プロジェクト演習科目を受講し続け、その中でもホスピタルアートPJ には3 年属してきた。
そして病院に対しての癒しの重要性を現場で体験してきた。その集大成として、本研究と制作に取り組んでいる。
過去に表現されていない「処方箋」という言葉を用い、ホスピタルアートができるまでの流れやこれからのあり方を問い、提案へと導いている。
貞 雄大(さだ ゆうだい)|ビジュアルコミュニケーションデザインコース C領域|「CONE EXERCISE」|人間館NA1F エントランス|
【選評】
何処にでも存在する道ばたのコーンの佇まいは見方を変えれば、置き去りにされた小いぬの様にも、影を持つ人の様にも見えてくる。
新品の、しっかりと警告を促す機能したコーンもいずれは古ぼけ、放置され街の彼方此方に点在することになる。
何処に所属しているのか?何処に置かれているのか?状況によって、その気配すら変えてしまうそんな存在の佇まいに興味を持ちリサーチを続けてきた。
数年以上前から遭遇するたび写真を撮りため数千の記録となった。
多田 照美(ただ てるみ)|ビジュアルコミュニケーションデザインコース C領域|「(be)dancing」|人間館NA1F エントランス|
【選評】
ここに至るまで、類人猿から行動表現として起源を辿り、ジェスチャーなどコミュニケーションとしての身体リサーチ等を行い、現代生活にまで対象を拡げた。
私たちの生活その物をダンスと捉えている。昔から身体表現として取り組んできたダンスは内側から変化を与えてくれる。
この行為を周知したい、そう思いだした頃から日常生活全てがダンスの様に見えてくる。
お茶を入れる仕草、ドアを開け振り返り靴を脱ぐ、荷物を床から持ち上げる、確かに生活は動詞の連鎖で生まれている。
動く行為その物を見つめてみるとダンスその物に見えてくる。
藤賀 日菜(とうが ひな)|ビジュアルコミュニケーションデザインコース C領域|「スイッチ」|智勇館4F|
【選評】
本作品のタイトルは、物事が変化する原因となるもの、またはその象徴を指している。
すべての出来事に因果は存在するが、複雑な現代においてそれを特定することは難しい。
今回、作者は自身の体験からそれらを丁寧に観察し、日常の“気づき” として採取することに成功した。
人々が小さな幸せ(あるいは因果)によって象られていることに気づく時、この展示は意義を見出すだろう。
岩城 有香(いわき ゆか)|イラストレーションコース|「MAKE LOVE, NOT WAR」|智勇館1F|
【選評】
Tシャツに描かれたイラストレーションにはそれぞれ作者の意味が込められており、「着る」ことでその意味を身体に「浸透させる」という視点が実に面白いと感じた。
今でこそ当たり前にグラフィックやイラストがTシャツにプリントされているが、その歴史や文化の背景をリサーチしながら、
「キャンバス」としての機能と「ファッション」としての発信力をうまく融合させた意欲作である。
また本作は卒業制作でありながら、自身のブランドとして立ち上げたそのプロセスも高く評価できる。
畠山 琴音(はたけやま ことね)|イラストレーションコース|「ZISHUKU ZOMBIES」|智勇館1F|
【選評】
時世をテーマに、自作自演のポップソングとロトスコープの手法で、ユーモラスに描かれた映像作品。
ストレートなエンタメ風味を装いつつ、あまたのゾンビ物が扱う「自分が別物にかわってしまうのではという不安」をコロナ禍の現実とリンクさせる。
そして、こんな今だからこそ、あえて「人間っていいな」を軽快に伝える力作である。
福井 美咲(ふくい みさき)|イラストレーションコース|「Checked illustration」|智勇館1F|
【選評】
形態を描かずに特徴的なチェック柄と色彩によって対象を表現している点で、新しいイラストレーションと言える。
対象の形態・色彩をよく分析しその特徴をチェック柄に落とし込むまでには様々なスタディを重ね、また第三者からどう見えるのかヒアリングし、さらに試行錯誤するプロセスから生まれている。
パッケージデザインやインテリアまで今後イラストレーションの可能性を強く感じさせるさせる作品である。
田辺 奈那(たなべ なな)|イラストレーションコース|「空想」|智勇館1F|
【選評】
ファンタジーの世界観を描いたコンセプトアート作品。ダイナミックな構図を用いつつも、細部に至るまで質感を追求し繊細に空間を描いている。
それを自然な環境音似合わせた静かなアニメーションで表現した。暗闇の壁一面にひろがる幻影の前に佇むと、絵の世界に取り込まれる様な錯覚をおぼえさせる。
松本 久見佳(まつもと ひみか)|イラストレーションコース|「過去絵 on ステージ」|智勇館1F|
【選評】
自身の子供の頃の落書きを元に作品を作り上げているが、それはあくまでも素材である。
特異なイラストレーターを発掘した映像ディレクターによる作品と捉えられる。
落書きの良さを生かすため、できるだけオリジナルの形態・線を損なわないように最小限の加工に留めた。
その結果、落書きが歪なままに動き出し言わばゾンビ・アニメーションとなった。笑いとユーモアのある作品である。
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他にも、ゲスト審査員 特別賞で2名の学生が受賞しました。
ゲスト審査員 特別賞の詳細記事は、後日公開させていただきます!
【斎藤信和 特別賞】
石田 花鈴(いしだ かりん)|イラストレーションコース|「新新書」|智勇館1F|
【大塚いちお 特別賞】
洲戸 洸仁(すど ひろまさ)|イラストレーションコース|「Human press」|智勇館1F|
みなさん本当におめでとうございます!今後の活躍も楽しみにしていますね!
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京都芸術大学 卒業展/大学院 修了展
日程:2/6(土) – 2/14(日)
時間:10:00 ~ 18:00
https://www.kyoto-art.ac.jp/sotsuten2020/
※新型コロナウイルス感染症拡大防止措置を踏まえ、ご来場には事前予約が必要です。
上記のWEBサイトより、お申込みのうえ、ご来場ください。
2/13(土)14(日) 同時開催!オープンキャンパス
https://www.kyoto-art.ac.jp/opencampus/sotsuten/
※新型コロナウイルス感染症拡大防止措置を踏まえ、定員制となります。
定員に達し次第受付終了となりますので、お早めにお申し込みください。
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スタッフ:ウコン