- 2026年1月30日
- イベント
【アートプロデュース基礎演習】佃 七緒先生インタビュー!《おみやげのおすそわけ》
こんにちは!アートプロデュースコースです。
昨年10月23日(木)から11月4日(火)にかけて開催された、アートプロデュースコース2年生主催の展示「佃 七緒 展《おみやげのおすそわけ》」。
この展示は「アートプロデュース基礎演習」という授業で前期から夏休み、後期にかけてじっくり時間をかけて企画されました。今回のブログでは、この授業に講師兼招聘作家としてご協力いただいた佃 七緒先生のインタビューをお送りします。
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佃先生、この度はインタビューにご協力ありがとうございます!どうぞよろしくお願いいたします。
先生は普段、同じく美術工芸学科の総合造形コースで制作指導をされていますよね。今回アートプロデュースコースの授業をご担当されるにあたり、どのようなお声がけがあったのでしょうか?
佃先生:今回は「アートプロデュースコースの2年目の学生が『アーティストの個展』を企画する」という授業に、講師兼招聘作家として参加しませんかとお話をいただきました。展示をつくる際のアーティストの考え・関心・要望などを、アーティストの言葉で直接伝え、それに学生のみなさんが応答する「実践的な学びの場」をつくる、といった内容です。
お声掛けくださった矢津先生と林田先生が、堀川商店街・堀川団地とアートとの関わりについても関心を持たれており、堀川地域をリサーチ・実践の現場としてこの授業を進めていきたいというご希望も、最初にお話を伺った段階からお聞きしていました。
私はもともと、いろいろな国や地域に滞在しながら、陶作品などを制作する活動をしてきました。その陶作品を日本に持ち帰り、展覧会をつくる段階というのは、制作した土地の背景から切り離された作品を、日本の土地で構成(プロデュース)しなおして発表する、という制作に変化します。その延長線上で徐々に、自身の作品の発表活動だけでなく、近年は他の作家や他分野の方と協働し、企画者としてアートのプロジェクトやイベントの実施などにも携わるようになってきました。
そのため、作品を出展する作家としての目線と、アートプロデュースを勉強する学生のみなさんの目線との両方に立ちやすいということで今回のお話をいただけたのかな、と感じています。
佃 七緒先生
陶芸・現代美術・企画
「おみやげのおすそわけ」という展示タイトルも素敵です。商店街の雰囲気に馴染むと言いますか、地域にあたたかく寄り添おうとしている印象を受けます。
このテーマに決めたきっかけや、タイトルに込めた想いがあればお聞きしたいです。
佃先生:今回の展覧会の「おみやげのおすそわけ」というタイトルは、授業後半の実際の展覧会を準備する過程で、林田先生からご提案をいただき決定しました。この言葉には、二通りの意味合いがあり、「佃から関わる学生のみなさんへのおみやげのおすそわけ」という意味と、「学生のみなさんから(展示会場となった)堀川商店街を通る方々へのおすそわけ」という意味とがあります。
堀川商店街での展示の様子
「おみやげ」という言葉は、私が他の国や地域に滞在して、「その滞在先での記憶や出来事を持ち帰るための『お土産(souvenir)』のように作品を制作していることが多い」という話をお伝えしたことに由来します。作品はある種の「おみやげ(記憶装置)」であり、作品に改めて触れ、置き、見て話す中で、旅のおぼろげな記憶は掘り起こされ、語るたびに改訂されていきます。
今回、学生のみなさんには、私からは作品の制作背景について詳細な説明をせずに、大量の過去作品の中から、彼らの目や手で触れて気になった作品を展示作品として選んでもらいました。作品自体が持つおぼろげな土地の空気や気配を、「おすそわけ」したような状況です。
また、そうして選んだ作品を、学生のみなさんに7月~10月半ばの搬入までお預けしていました。夏季休暇期間も含めた3ヶ月ほどの間、作品は彼らのプライベートな時間や空間に同居し、彼らの生活の記憶がさらに作品には付加されています。
一般の鑑賞者ではなく、アートを学ぼうとする学生さんだからこそ、彼らの視点や関心にある程度頼ることができ、私の目線を押し付けるだけにならない「おすそわけ」が可能となったように思います。
佃先生の作品を持ち帰って、日記をつけていましたよね。私も学生が作品を持って校内を歩き回っているところを見かけました。
制作者以外が作品と共に生活した時間を付加価値として展示に組み込むというのは他にないプロセスでとても面白いですし、遠い異国の空気が少し身近に感じられる気がします。
実際の学生たちの日記
作品に「三兄弟」という名前を付けて共に過ごした思い出が描かれている
さらに期間中は展示だけではなく学生主催の様々な企画も行われていましたが、こちらはどのように組み立てていったのでしょう。
佃先生:実際に展覧会を開催するにあたり、学生のみなさんに依頼したことは、「作品を外に持ち出す企画を考える」ということです。
この授業を担当することが決まった当初から、スケジュール上、授業としても作家の私自身としても、会場の堀川地域と密な関係を事前に構築することは難しいとわかっていました。そのような外部の人間が、ただスペースをお借りして展覧会を行っても、堀川を生活の場とする方々にとっては、何の関心も持てない展示となると感じていました。そのため、学生のみなさんには、展示期間中に作品を積極的に展示空間から持ち出し、作品自体を出張・お散歩させて、かしこまった展示鑑賞だけにならないイベント(ある種押し売りな「おすそわけ」)を企画して欲しい、とお願いしました。
私ひとりでは展示会場から出すことのできない作品たちが、学生のみなさんのアイディアや身体を通して、堀川を通る方々に「作品(アート)に触れる機会」として開かれたら、と考えていたように思います。
学生らはそれぞれ作品ごとのチームに分かれてイベント企画を考案
企画の進行にあたり、学生からはどんなアイデアが出ましたか?
佃先生:私の作品を持ち帰ってもらっていた期間中は、学生のみなさんのプライベートな空間で、これまでに見た事のない組み合わせで「作品展示」をたくさんしていただけました。炊飯器の下に置いてもらったり、カレー屋さんに一緒に行ったり。
展示期間中の「作品を持ち出すイベント」としては、「逃げ出した作品を探す謎解きイベント」が催されたり、「作品が堀川商店街で旅をした」という目線で書かれた各店舗さんの紹介絵日記がつくられたり、持ち寄った「大事なものとその記憶」を参加者同士で語り合う場がつくられたり、作品をイメージする音楽をつくって流してみたり、「展示を一緒につくる」という機会をつくったり、作品を囲んでホームパーティーが行われたり、様々な対象や範囲でのアイディアを実施していただきました。
学生にホームパーティーの様子を写真で見せてもらったのですが、とても楽しそうでした。今回学生たちが企画したイベントは、地元の方にこそ作品を身近に感じて、楽しんでいただきたいと感じるようなものが多かったように感じます。自分たちが作品と家族のように過ごした時間がそうさせたのかもしれませんね。
実際に学生たちと企画・展示を行ってみて良かった部分や、逆に難しいと感じた場面はありましたか?
佃先生:上記のようなイベントを学生のみなさんに企画・実施していただき、作家の私がいなくても作品は私の知らない空間・時間に出かけていくことができました。どれも私一人では開催できないような内容であり、かつ私一人ではつくることのできなかった堀川という地域との関係性なので、とてもおもしろく、ありがたかったです。
難しかった部分は、実際の展示設営作業を学生のみなさんと協働することです。どうしても授業日程が限られており、30名弱と人数も多いので、その時間内のみで設営作業を適切に共有・理解し、準備に加わったりたくさん手を動かしていただくことは難しい。現場作業としては、どうしても教員側で進めざるを得ない部分が多くなってしまいました。もし人員や時間に余裕があったなら、もう少し学生のみなさんに作業の具体的な方法や現場での立ち回りの仕方を実践的にお伝えしたかったなと思います。
展示会場の設営をする佃先生と学生たち
やはり現場作業となると時間も限られますし難しいところもあると思いますが、企画から展示設営までを作家ご本人様とじっくり時間をかけて作り上げていくというのはなかなかできない経験ですので、学生たちにとっては大きな糧になったと思います。今回約5ヶ月という長い期間にわたりアートプロデュースコースの学生たちと関わってみて、面白かったことや心に残ったことがあればぜひ教えてください。
佃先生:私は自分の作品に愛着のある方の作家ではありますが、自分以外の方、今回は学生のみなさんが、作品と個人的な時間を過ごす中で、徐々に「少し遠い作品」から「愛着のあるいきもの」のようにを感覚を変化させていく様子を見るのはおもしろいなと思いました。作品を選ぶ目線も私とは異なるため、かなり前に作った作品も久しぶりに表に出していただき、作品を別の角度から見る機会にもなりました。
また、作家・作品ともども、2クォーターに渡って少し長めにお付き合いさせていただく中で、「佃さんの関心や考えなどを他の授業で企画を考えるときにも思い出した」といったことを伝えてもらったり、アートプロデュースを学ぶ方々だからこそ対話できることがあったり、あらためて制作や企画について言語化する機会がたくさんありました。私の作品にも授業にも特に興味もなさそうだった学生から、私の作品には「生きるということに対する『熱』」を感じると表現されて驚いたりもしました。
最後に、佃七緒というアーティストにとって、「アートプロデュース」とはどういうものでしょうか。
佃先生:私の場合は、作品の特性や自身の関心・適性上、自身の制作プロセス自体に「アートプロデュース」の要素・構造は含まれています。現代のアーティストの大半は、多かれ少なかれそういう活動の仕方をしているのではとも思います。ただ、私の個人的な希望としては、他者の目線で自身の作品の良いところ・おもしろいところを価値づけてもらえる機会もやはり欲しい。
作家は一人だと、自身の関心や価値を感じたことを「自分の思考や身体で翻訳(置き換えや転換、言い換えなど)する」ことしか結局はできないと感じています。素材や手法の特性や、リサーチの情報や制作協力者の力を借りて、ある程度自分だけの思考や身体から離れることもできますが、制作プロセスを注視した目線からは離れきれない。
「アートプロデュース」という分野で「価値をつくる」方がいることで、他者の思考や背景を通して個々のアーティストの制作・作品のおもしろさが語られること、その機会や場があることは重要だと思っています。
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佃先生、この度は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました!
アートプロデュースとは何かを作家目線からお送りした今回のインタビュー、いかがでしたでしょうか。アートプロデュースコースの授業では、このように実際に作家活動を行っている方と一緒に「アートをプロデュースする」ことについてじっくり考え、実践に繋げていきます。モノづくりをする人もそうでない人も、アートや表現に関わる生き方を目指す人に向けて開かれたコースです。アートプロデュースコースのことをもっと知りたい方はWEBサイトや公式SNSをぜひチェックしてみてくださいね☺
2009年京都大学文学部倫理学専修卒業、2015年京都市立芸術大学大学院美術研究科(陶磁器)修了。作家(陶芸・現代美術)、企画者として活動。
個人の作家としては、国内外に滞在し、他者の身体・生活環境を観察することで垣間見える、家・個人の規範やその地域の風土・社会の影響を、陶や写真、映像などを用いてうつしとり、展覧会や冊子として発表する。近年の活動に、Sanctuary Slimaneでの滞在制作(モロッコ/2025)、個展「地のレ展」(NIHA/京都/2023)、La Wayaka Current での滞在制作(アタカマ砂漠・チリ/2023)など。
企画者としては、他者との対話・協働を通して既存の仕組みや言葉の枠をゆるめる実践に関心を持つ。2024年には、年間を通して鑑賞空間を他の作家と共につくり試す《ねる企画「実験会」》シリーズを企画し、その成果イベント『ぐねる』・『トンネル』(OAG Art Center Kobe/兵庫/2025)を開催。作家の言葉を他者との対話を通じて翻訳を試みた「翻訳するディスタンシング」(2020-2022)なども企画・運営。
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