文芸表現学科

2025年度 卒業制作受賞作品をご紹介します!

 

こんにちは、文芸表現学科です!

 

2026年2月7日(土)~2月8日(日)、2月10日(火)~2月15日(日)の8日間にわたり、2025年度「京都芸術大学卒業展/大学院修了展」が開催されます。

 

文芸表現学科の展示会場では、4年生一人ひとりが、4年間の学習・創作の成果を注ぎ込んで書きあげた小説や映像脚本、エッセイ、ノンフィクション、評論、詩など、さまざまなジャンルの文芸作品を文庫化し、展示・販売を行います。

会期に先駆け、今年度の卒業制作作品・全37作品のなかから、大学および学科が設定している各賞を受賞した7作品をご紹介いたします。


 

🏆学長賞🏆

評論『海賊とアナキズム』

著:安達爽太郎(あだち・そうたろう)
カヴァー作品:安達爽太郎

装幀:O LamLamさん

 

 

キャンセル・カルチャー、テクノ封建制、パレスチナ。現代の難問を「船」と「海賊」のメタファーで読み解く。清らかな「庭」への引きこもりを拒否し、荒波を乗りこなす「汚れたユートピア」へ。生存のためのアナキズム論。

 

●担当教員講評/江南亜美子

アナキズムとは何か。そう問われたとき人は、成熟した市民社会の秩序と相いれない、テロリズムや混沌のイデオロギーであると答えがちだ。一方、富や権力が集中する「王」による不平等な支配と統治への服従もよしとしない。

安達爽太郎の評論、『海賊とアナキズム』は、資本主義×アナキズムの歴史認識を踏まえつつ、今日的な社会変革としてのアナキズムの可能性を模索する。脱中心的で水平的な「海賊」モデルのガバナンスによって、資本主義のインフラをハックすること。理論に留まらず、自身と仲間による自治の実践例も紹介される。未来を照射する、意欲的で熱量の高いテキストは、本年度の「学長賞」にふさわしい。

 

 

🏆優秀賞🏆

小説『こはると生まれる』

著:大城彩世(おおしろ・あやせ)
カヴァー作品:みなんさん(情報デザイン学科 イラストレーションコース 4年)

装幀:西佑花さん(情報デザイン学科 ビジュアルデザインコース 2年)

 

 

美しい南の島、永らく上の空で生きていた12歳のこはるは、担任の火野からの暴力を引き金に目が醒める。日記、基地、集団自決――思春期の曖昧な身体で、現実と幻想のあわいを彷徨いながら、故郷沖縄の痛みに向き合う少女の再生の一週間。

 

●担当教員講評/仙田学

沖縄で生まれた少女「こはる」は、「琉球の歴史」を「悲劇」にしてしまわないようにと母親から教えられて育った。アスファルトの下でうごめく死者の記憶。授業中に窓ガラスを震わせる米軍基地のヘリコプターの音。平和教育で知ることになる、沖縄戦で日本軍が住民に集団自決を強いたという事実。手がかりの失われてしまった記憶にまでも思いをはせながら、何度も作文を書き直すことで、こはるは真実に迫ろうとする。一方で、十二歳を迎えた体は第二次性徴期にさしかかり、その変化にこはるの思いは幾重にも揺らぐ。

稠密な文体で、沖縄の戦後史を思春期の少女の精神と体の成長に重ねて描きだした意欲作。

 

 

🏅同窓会特別賞🏅

ノンフィクション『祭の手、土の声――継がれていくものと、土に還らなかった想い』

著:三浦爽也(みうら・そうや)

カヴァー作品:三浦爽也

装幀:佐伯佳蓮さん(情報デザイン学科 映像クリエイションコース 2年)

 

 

京都の五条坂で百年以上続いてきた陶器祭は、新型コロナウイルスをキッカケに幕を下ろした。
新しい祭として発足した五条若宮陶器祭を通して、ものづくりや伝統の理解を深めることで、京都という町の息づかいを知ることができる一冊です。

 

●担当教員講評/中村純

京都洛内南東の端、河原町万寿寺で生まれ育った著者の夏の風物詩は五条坂の陶器祭だった。母親と高瀬川沿いの小道を歩き、色とりどりの紫陽花を眺め五条大橋を渡り、毎年一つ器を買った。著者の背が母親を抜くころ、陶器市に足を運ぶことがなくなった。コロナ禍、京都の猛暑、職人たちの高齢化で、五条坂の陶器祭は途絶えたが、五条若宮陶器祭と名前を変えて祭を復興させた人々がいる。著者は祭を復興させた人々に出会い、ものつくりに携わる人々の祭では語られない声を記録した。京都の芸術大学の学生として、3年に及ぶ猛暑の夏を自転車で駆け抜け、ものをつくり表現する人の矜持を取材し続けた力作。

 

 

🏅奨励賞🏅(以下、五十音順)

映画脚本『マイ・ディア・ピープル』

著:愛知はな(あいち・はな)
カヴァー作品:愛知果歩さん

装幀:飯田琴葉さん(情報デザイン学科 イラストレーションコース 2年)

 

 

在日イスラームコミュニティに属する在日パキスタン人女性アイシャは、恋人の日本人男性友和との結婚を、敬虔なイスラーム教徒の両親に反対される。国、宗教、文化、恋愛そして家族の間でがんじがらめになるアイシャの決断の物語。

 

●担当教員講評/山田隆道

在日イスラームコミュニティという日本映画でほとんど描かれてこなかった領域に踏み込んだ意欲的な脚本。実在するパキスタン人女性をモデルにした主人公・アイシャと日本人男性とのラブストーリーに、宗教や国籍、家族、地域社会の壁が立ちはだかる現実を、綿密な取材によって描き出している。両親を単なる抑圧者とせず、切り捨てられない存在とした点も秀逸だ。とりわけ母には同じイスラーム女性としての苦しみが重ねられ、この二重性があるからこそ、終盤の母娘の衝突と雪解けのシーンが、二人の人生を象徴するシャレードとなり、本作の水準を押し上げている。理解されないまま生きてきた者たちの声が、沈黙のなかで立ち上がる名シーンだ。

 

 

🏅奨励賞🏅

小説『リビングデッドライン』

著:岩村直樹(いわむら・なおき)
カヴァー作品:志鷹京さん(キャラクターデザイン学科 マンガコース 2年)

装幀:佐伯佳蓮さん(情報デザイン学科 映像クリエイションコース 2年)

 

 

高収入に釣られ、ゾンビとして不眠不休で働かされる青年。ある日、職場を襲った神の使い・古峰と出会い、歪んだ労働の裏側を知る。死にながら働き、働かされる社会の中で、社畜ゾンビは“生きる”ことの意味を取り戻せるのだろうか!?

 

●担当教員講評/河田学・中村淳平

卒制という気負いもあれば、若さゆえの衒いもあるのだろう。手放しで笑える卒業作品に出会うことはめったにない。岩村の作品はそんな特異な作品である。ふつうゾンビものってこうだよね?、とでもいうかのような安定感。しかし退屈さは一切感じない。

とぼけた印象の主人公の言動からは笑いを誘われるし、完全無欠の労働力としてのゾンビたちは悲哀を感じさせる。軽妙な語り口のファンタジー作品として仕上がっているが、そこには家族とのつながりや働くことの意味といった本質的な問題へのまなざしがある。読み手はそこに現代社会のいくつもの矛盾を見いだすだろう。この作品を、今を生きるすべての“ゾンビたち”に捧げたい。

 

 

🏅奨励賞🏅

アニメ映画脚本『愛を結んで』

著:呉谷夏生(くれたに・なつき)

カヴァー作品:みなんさん(情報デザイン学科 イラストレーションコース 4年)

装幀:大江真生子さん(情報デザイン学科 イラストレーションコース 3年)

 

 

愛を知らぬまま妊娠した23歳の幸姫は、妹の菫とともに絶縁した母に会いに田舎町に行くも、あることをきっかけに20年後にタイムスリップしてしまう。そこで出会ったのは堕ろそうとしているお腹の子、20年後の娘である結愛だった。

 

●担当教員講評/山田隆道

「愛を知らない母」と「愛を求める娘」という普遍的なテーマを、20年後の未来へのタイムスリップという仕掛けで描いたアニメ脚本。未来で出会う成長した娘の存在が揺らいでいく構造は、主人公の内面を可視化する装置として機能し、アニメ表現との高い親和性を感じさせる。「産む/産まない」という重い選択も説教臭さに陥らず、未来で出会う人々のささやかな善意によって主人公の世界が少しずつ広がっていくドラマとして丁寧に描かれている。そしてラスト、「娘の消失と誕生」を重ねた結末は、本作のギミックならではの稀有なシーンとして「愛を結ぶ」という主題を切なくも力強く印象づけており、アニメ脚本家としての将来性を感じさせる。

 

 

🏅奨励賞🏅

映画脚本『ネバーネーミング・ストーリー』

著:山﨑蒼依(やまざき・あおい)
カヴァー作品:吉田彩希さん(情報デザイン学科 イラストレーションコース 4年)

装幀:桑本美里さん(情報デザイン学科 ビジュアルデザインコース 2年)

 

 

「この子たちは、私の子なの!」
双子を妊娠した結は子どもに最高の名前をプレゼントしようとするも、頼りない夫やわがままな両家、親戚に振り回され、次から次へと候補が増えていく。そして名前が決まらないまま出産を迎えてしまい……。

 

●担当教員講評/山田隆道

子どもの名づけに潜む奇妙さや暴力性を通して、人間の滑稽さと現代社会の歪みを描いた喜劇脚本。双子の名前を巡り、親族の善意と自己主張が錯綜していく構図は、伊丹十三を想起させつつ、多様性や配慮といった価値観の空虚さを誇張によって軽やかに風刺している。登場人物に正しい者が一人もおらず、主人公ですら独善性を露わにする点も魅力的だ。作者が誰にも寄り添わない視点の遠さが、人間の愚かさと愛しさを描き出しており、短い台詞に多義的な意味を込めるウィットや、決着を先送りするアメリカンジョーク的なエンドも洒落ている。知性と批評性を内包しつつも、あくまで軽妙洒脱な喜劇に徹した含羞性も、今作の成熟度として評価したい。

 


 

受賞作含む全作品は、会場およびオンラインストアでご購入いただけます。

会場に足を運ぶことができない……という方は、ぜひこちらをご活用ください!

 

▼BUNGEI BOOKSTORE▼
https://kua-bungei.stores.jp/

 

【運営期間】

2025年2月2日(月)17:00〜2月15日(日)17:00

 

【受注締切】

2月15日(日)17:00

 

【発送】

2026年2月27日(金)予定

※お届けまでに数日ほどお時間をいただきますが、あらかじめご了承ください。

 

▼文芸表現学科 卒業展に関する情報ページはこちらの画像をクリック▼

 

 

 

(スタッフ・奥野)

 

 

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