情報デザイン学科

【🏅受賞者インタビュー!後編】情報デザイン学科3年 猪本倖汰さん、佐伯佳蓮さん、日本デザイン学会第4支部奨励賞を受賞

情報デザイン学科 3年 猪本倖汰さん(左)、 佐伯佳蓮さん(右)情報デザイン学科 3年 猪本倖汰さん(左)、 佐伯佳蓮さん(右)

この度、情報デザイン学科3年猪本倖汰さんと佐伯佳蓮さんが、「日本デザイン学会第4支部奨励賞」(※1) を受賞いたしました。
受賞者2名は、それぞれ設定したテーマに沿って先行事例や関連企業をリサーチし、社会での取り組み、実際の商品や消費者動向などからも着想を得て「デザインとは何か」を自らの内面に問い、丁寧な探求へと発展させていきました。

今回、猪本さんと佐伯さんにデザインの研究プロセスについてお話を伺いました。本ブログでは、この学科で作品についての議論がどこまで深掘りされているのか、デザイン研究との向き合い方について、学生と教員の実際の問答をロングインタビューを前編後編に分け、たっぷりと収録いたしました。どうぞご覧ください。

(聞き手 ー教員 大久保 亞夜子)

佐伯佳蓮さんインタビュー

「Re:Pencil—再生可能な文房具の提案」

佐伯さんの研究は、幼い頃から親しんだ「鉛筆」に着目し、リサイクルを体験デザインとして模索しています。小型鉛筆削りの専業メーカーである株式会社中島重久堂のプロダクト「TSUNAGO」の使用感からヒントを得て、鉛筆の再利用をさらに促すため、削り芯と木材を分別するユニットを開発。あわせて廃材の新たな活用方法の実験・提案を行いました。

初期プロトタイプ。「削る時点で分別することができれば、簡単にリサイクルができるかもしれない」との発想から、木屑と芯を分別する鉛筆削りを試作。小窓からは木屑のみが放出され、下のカゴに芯の粉のみが貯まるという構造。この段階では独立したプロダクトだった。

01

違和感を見つめて

ー 教員大久保(以下大久保)
佐伯さん、こんにちは!この研究は、「鉛筆のリサイクルは可能なのか」という問いから出発して、最終的には『子どもでもできるリサイクルキット』として考案していますね。きっかけは、何だったのでしょう?
ー 佐伯さん(以下佐伯)
大久保先生、こんにちは。映像クリエイションコースの佐伯佳蓮です。
「子どもでもできるリサイクルキット」という構想に至るうえで、自分の中で大きなきっかけとなったのは、「SDGs」という言葉に対して感じていた疑問でした。
ー 大久保
なるほど。SDGsという言葉のイメージに違和感を感じていたんだね。
ー 佐伯

はい。SDGsという言葉が社会に広まり、循環や3Rを企画の価値として掲げる場面も以前より増えたように思います。一方で、それらの言葉が本当の意味で理解され、実感を伴って使われているのだろうか、という違和感がありました。

言葉の持つ社会的なイメージや流行性によって、企画そのものが必要以上に良く見えてしまっている場合、またはそれを利用している場合も多くあるのではないかと常々感じています。
リサイクルは、小学校の社会科や総合学習でも扱われるため、多くの人にとって聞き馴染みのある言葉です。しかし、実際には教科書やインターネット上の知識として理解しているだけで、リサイクルの工程そのものを体験した人は少ないと思います。

ー 大久保
確かにそうだわ・・・。私自身を振り返ると、子供の頃に使い古しの紙をふやかして紙漉きしたことくらいしか経験がないなぁ。紙は加工しやすい単一素材だから家庭でもリサイクル出来たのであって、複数素材になると処理工程が大変すぎるもんね。
ー 佐伯
そうなんですよ。例えば、ペットボトルの場合、商品を購入して中身を飲み、リサイクルボックスに分別して捨てた後、回収、運搬、選別、圧縮、粉砕、洗浄、再加工といった、非常に多くの工程を経て新しい製品へと生まれ変わります。しかし、生活者が直接関わることができるのは、購入することと、分別して捨てることくらいです。
その先で素材がどのように変化し、再び製品になるのかを目にする機会は、ほとんどありません。
ー 大久保
うん。工業製品として再生産し、出荷するプロセスまでは、なかなか触れられないし、わからない。
ー 佐伯
はい。リユースやリデュースは個人でも比較的実践しやすい一方で、リサイクルを一人の手で最初から最後まで行うことは、現在の社会の仕組みではほとんど不可能です。だからこそ、知識として教えるだけではなく、素材を分け、加工し、再び使えるものへと変化させる一連の工程を、自分の手で経験できる、体験を伴った学びの仕組みが必要なのではないかと考えました。
ー 大久保
まずは身近な複数素材のリサイクル体験をデザインしてみよう、と。教育的なアプローチだね!
ー 佐伯
はい、それが、自分の手で最初から最後までの工程を体験できるリサイクルキットを作ろうと思ったきっかけです。
また、鉛筆が題材なのも小学生にとって最も身近な文房具の一つであるということでより企画に説得力が生まれたのではないかと思います。

02

先行事例との接続

芯と木屑を分別する削り機の3Dモデリングデータ。3Dプリンターでラピッドプロトタイピングもお手の物です。

ー 大久保
今回、この研究で一番特徴的なのは、既存製品である株式会社中島重久堂さんの「TSUNAGO」に着脱できるアップデートパーツとして企画を組み立てていますね。
ー 佐伯
はい、グッドデザイン賞をきっかけに知りました。この企画を考える前から、本当に好きなプロダクトの一つだったんです。
中島重久堂さんは、「鉛筆削りを通して、文化創造に貢献する」「真の文創具ブランドであり続ける」「もったいないの精神、創意工夫、想伝を重んじる」というMVVを掲げておられます。TSUNAGOは、まさにこの企業理念を構成する要素が一つの製品に凝縮されたプロダクトだと感じています。
ー 大久保
研究の企画書には、佐伯さんの意気込みとして「中島重久堂さんの”もったいないの精神”を最大化する」と記載していた一文が大変印象的で、よく覚えています!
ー 佐伯
はい。特に「もったいないの精神」は、製品の使い方を見ただけでも直感的に伝わってきますよね。一般的には捨てられてしまうほど短くなった鉛筆を加工し、別の鉛筆とつなぎ合わせることで、再び使える状態にする。単に廃棄を減らすだけではなく、使い手自身の創意工夫によって、ものの寿命を延ばす体験が設計されているところに魅力を感じました。
また、削りカスを途中で途切れさせず、薄く美しくつながった状態で削ることのできる刃を長年製造してきた、技術力のある中島重久堂さんだからこそ実現できた製品で、鉛筆削りという一つの道具を追究してきた企業の技術と思想が「TSUNAGO」という形になって表れているように感じました。
ー 大久保
愛用者ならではの観点ですね。佐伯さんから、深いプロダクト愛を感じます。
ー 佐伯

一方で、製品への尊敬があったからこそ、「まだ、もっとできるのではないか」という思いもありました。

短くなった鉛筆を加工し、別の鉛筆とつなげて再利用することは、とても画期的です。しかし、その加工によって出る削りカスや、普段鉛筆を削る際に出る削りカスは、捨ててしまってよいのだろうか。それもまた「もったいない」のではないかと考えました。

TEYOMUの装置

実際に出力し組み合わせたプロダクト。下の画像は、既存製品のTSUNAGO(株式会社中島重久堂)に接続して用途を使い分けるアップデートユニットとして試作したもの。TSUNAGOは、短くなった鉛筆を凹凸型に切削し、鉛筆同士を繋ぎ合わせて再利用を可能にするツール。

ー 大久保
なるほど。企業理念を実践的にスケールさせてみたんですね。
ー 佐伯
はい。当初はTSUNAGOの姉妹商品のような形で、鉛筆の削りカスを分別するプロダクトを展開しようと考えていました。しかし、別の商品として独立させるのではなく、TSUNAGOに取り付けることで機能を拡張できるユニットにした方が、中島重久堂さんの「もったいないの精神」を、より一貫した体験として広げられるのではないかと考えたんです。
そのため、最終的には独立した分別可能な鉛筆削り機ではなく、既存製品に着脱できるアップデートユニットへと変更しました。

03

理想と現実

ー 大久保
分別した芯と木屑のリサイクル実験では、随分と試行錯誤していましたね!
ー 佐伯
まず始めに、分別した木屑を粉砕し、接着剤と混ぜて圧縮することで合板を作り、それを鉛筆の軸木として再利用する実験や、その工程に必要となる道具の試作などを行いました。
芯については、粉末状になった黒鉛をオーブン粘土と混ぜ、クレヨンのような描画材として固める方法が、比較的早い段階で決まりました。一方で、木屑を再び鉛筆として使用できる形状や強度にする部分では、かなり苦戦しました・・・。

芯+オーブン粘土でクレヨン風にリサイクルする実験。鉛筆の削屑を、木屑と芯に分別するのが大変すぎるとの事。「数多ある文具メーカーで鉛筆のリサイクルが実施されていない理由がなんとなくわかった気がする」との課題意識から、今回のモジュールの発想に至ったそうだ。

当初は、木屑を粉砕して接着剤と混ぜて圧縮し、合板のような物を作り、それを鉛筆と同じように加工する方法を検討していました。しかし、棒状にした後に芯を入れるための形状を作るという工程は難しく、「子どもが自宅で体験できるリサイクルキット」という当初の目的から離れてしまうという課題がありました。
なので、最終的には木屑をシート状にし、ペーパー鉛筆のように巻いて成形する方法へと変更しています。

木屑をシート状に固めたものと実際にRe:Pencilされた鉛筆。まだまだ改良の余地あり。「有識者さん、手伝ってください。」

ー 大久保
オーブン粘土と混ぜてクレヨンに再生させる実験は定石と言うか、よくあるリサイクルだけど・・・まさか「鉛筆を鉛筆にまた戻す」という最後の実験は結構衝撃的だったなぁ。着想したとしても、手を出しにくい実験内容ではある。
ー 佐伯
実は、この試みには、加工のしやすさだけではなく、中島重久堂さんの鉛筆削りから出る削りカスの美しさも関係しています。中島重久堂さんの鉛筆削りでは、薄い木の削りカスが途中で途切れることなく、連続した形で出てきます。その形状自体が、長年鉛筆削りの刃を追究してきた企業の技術や努力の成果だと感じました。
そのため、せっかく美しく削り出された木屑を、すべて粉砕して均一な材料へ戻してしまうのではなく、その薄さや、巻くことのできる形状を活かした方法も試してみようと考えるようになり、実験に至っています。
ー 大久保
なるほどね。細かいところまで、よく観察した末の実験だったんだね。
ー 佐伯
はい。まだ強度や加工方法など、改良すべき点は多く残っています。
しかし、完成品を作ることだけでなく、実際に素材へ触れ、失敗を繰り返したことで、リサイクルという行為の難しさや、その裏側にある仕組みについて、より具体的に理解することができました。

04

越境は軽やかに

ー 大久保
佐伯さんは映像コースを専攻していますが、映像だけを深掘りするというより、今回のような体験デザインを含めたプロダクトデザイン、ビジュアルデザインに関する研究が多い印象があるんだよね。
ー 佐伯
痛いところを突かれますね(笑)。
僕は、一つの表現方法だけを専門的に扱うというよりも、課題や企画の目的に合わせて、映像、プロダクト、グラフィック、イラストなど、複数の表現方法を適切に組み合わせながら解決策を考えられる人に憧れています。
ー 大久保
そっかぁ。今回のリサイクルキット開発の研究でも、プロダクトデザインして終わりではなく、体験デザインとして打ち出してきた。そこが面白かったなぁ。プロダクト利用者が、どんな気づき・学びの体験が得られるのか。プロダクト使用後の、その先まで考慮する。企画の出口まで考えて実験する。デザインにおける非常に重要な思想、観点、フットワークだったと思いますよ!
ー 佐伯
何を作るかという媒体から考えるのではなく、まず、誰に対して、どのような課題を解決し、どのような変化を生み出したいのかを考える。そのうえで、映像が適しているのであれば映像を使ったり、極端ではありますが、実際に触れる体験が必要なのであればプロダクト、視覚的に伝える必要があればグラフィックを用いる、というような考え方です。
将来、仕事の中で「これを作れる人はいないかなぁ」となったときに、「自分、それできますよ」と言えるような、マルチなデザイナーになりたいと思っています。
映像も、もちろんその「できること」の一つとして勉強している感覚です。情報デザイン学科に入学した理由も、特定の領域に限定されず、分野を横断しながら学べる「超域」の考え方に魅力を感じたことが大きいです。
ー 大久保
おおっ、とても嬉しいです。我々教員も、学びのきっかけや研究の助力となれるよう、一層頑張りますね。

佐伯さん、どうもありがとうございました!

インタビュー前編はこちら

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関連情報・メディア

🎓 Youtube チャンネル

今回インタビューに応じてくれた猪本さんと佐伯さんは、同学年の有志と課外活動でも精力的に制作しています。
情報デザイン学科の学生と教員が出演するYoutube「ミルシルデザイン」(2026年8月13日公開)の制作ディレクターとしても大活躍中!
ユニークな学生作品と彼らの素顔、教員との掛け合いが見所のミルシルデザイン。こちらのチャンネルも、どうぞお楽しみください。


🌐 アワード

  • ※1: [日本デザイン学会第4支部奨励賞]
    本賞は、日本デザイン学会第4支部(近畿・中国・四国地区)が管轄する教育機関に所属し、デザイン学に関する優秀な研究活動や作品制作を行った学生を表彰する制度です。

インタビュアー
👤大久保 亞夜子 (おおくぼ・あやこ)
大久保 亞夜子 ポートレート京都芸術大学情報デザイン学科准教授。美術作家、キャラクターデザイナー、アートディレクター。
2004年東京藝術大学卒業、2006年同大学院修了(日比野克彦研究室)。TV番組のマスコットデザイン、コンシューマーゲームタイトルのコンセプトメイキング、キャラクターデザイン、アートディレクション、アプリケーション開発やサービス設計などに従事。2025年より現職。主な著書に「奇的」(青林工芸舎、東京藝術大学美術館収蔵作品)等。日本デザイン学会、日本認知心理学会所属。

取材協力:株式会社中島重久堂
取材:大久保 亞夜子
編集:木川 瑞希


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