環境デザイン学科

オリバー展示ユニット2016

「第61回日本透析医学会学術集会・総会」(2016年6月に大阪国際会議場で開催)企業展示フロアに設置された家具メーカー・オリバー社のブースを、同社と京都造形芸術大学による産学連携プロジェクトとして、環境デザイン学科の学生2名を中心にデザインしました。オリバー社から私たちに依頼されたのは、近年人工透析の現場への導入が拡大しつつあるチェア式個室の新しいデザインを考えることでした。
 
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この透析室は、ユニット化された製品として、限られた空間に連続配置できるようデザインされています。半個室タイプのコンパクトな内部をシームレスに仕上げ、プライベートな感覚と快適性を提供したいと考えました。より多くのユニットを、より簡易に設置できること。それが私たちの考えた「持続可能な未来の透析室」です。(未来の透析室のためのテキスト/京都造形芸術大学/2016)
 
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2連のユニットで構成されたブースは合わせて4×4メートル弱の面積を持ち、各室ごとにオリバー社の多機能チェア1台と、治療やサービスに必要十分な内部空間を備えています。内装は全面を赤みがかったブラウン色のシートで仕上げ、チェアの前方上部だけに淡色への緩やかなグラデーションを施しました。この部分はプロジェクターのスクリーンを兼ねており、利用者が自然な体勢で映像を見ることができるよう手前に傾斜しています。
ユニット内の基本的な照度は後方頭上と前方足元の間接光で確保し、チェアの真上にダウンライト各1台を補助的に設置しました。コンソール(透析装置)はチェアやベッドのすぐ脇に置かれたままとなるのが通例ですが、ここではチェア後方にコンソールの収納スペースを設け、必要時に引き出して使用することを提案しています。動作を厳しく制限された状態で長時間を過ごさなければならない環境から視覚的に煩雑な要素を可能な限り排除し、利用者が開放と安らぎを感じられる場所にしたいと考えました。
 
オリバー社内で製作したユニットはそれぞれ数枚の木工作パネルで構成され、1時間前後の作業で現場組み立てが可能です。前方の外装パネルには由井武人氏による大型のステンシルアートが全面に描かれました。朝の光をモチーフにした清涼な外部と、スケール、カラー、ライティングを抑制した内部との明確な対比は、企業展示フロアの中でも際立った印象を残し、3日間で多機能チェアを体験した人数はのべ400名を超えたと伺っています。
 
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このプロジェクトを通して、私たちにとって最も嬉しい驚きだったのは、学生たちがこの学会のテーマ「持続可能な透析療法をめざして」を踏まえて、ストレートなコンセプトでそれに応えたことでした。その後のデザインの方向性にほとんどブレがなかったのは、彼らの大きな功績です。実施設計段階での苦労は多々ありましたが(主にオリバー社と教員にとって)、初仕事としてはまずまずの出来ではないでしょうか。
 
今後10月頃にかけて、このユニットはオリバー社主催の展示会を中心に、全国各地で使用される予定です。同社と学生たちのチャレンジが、これからの透析治療を取り巻く環境に一石を投じるものとして、多くの人からポジティブに受け止めてもらえるよう願っています。
 
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オリバー展示ユニット2016
 
デザイン:杉本昂太,駒居隆志(京都造形芸術大学環境デザイン学科)
デザイン監修:辻村久信,ヤギタカシ(京都造形芸術大学環境デザイン学科)
実施設計,施工,多機能チェア:オリバー
ライティングデザイン協力:戸谷朝子(パナソニック)
 

ステンシルアート:由井武人(京都造形芸術大学通信教育部)

クライアント:オリバー
 
仕上材
床:既存(タイルカーペット)
内装壁:木工作下地グラフィックシート貼,木工作下地クリアミラー貼
天井:木工作下地グラフィックシート貼
外装壁:木工作下地ポリ合板貼,木工作下地ビニルクロス貼+ステンシルアート
 
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オリバー
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