アートライティングコース 正木 秀典
「てーほへ、てほへ」という祖父が、山歩きでいつも口ずさんでいた不思議な呪文。私の郷里である愛知県奥三河地域は、山深い山間地域であり、幼少の頃、祖父母から教えられた山里の暮らしは、四季折々に変化する山と共存することであった。20年余り経ったある日、私はその呪文が、当地に伝承する他に類を見ない奇祭――花祭に由来するものであると知った。中世の修験道に由来しているという花祭は、派手な伝統芸能の裏側に、過酷な山岳地域を基盤として生き抜いてきた修験者や彼の地の民たちの生活の営と歴史が深く刻まれている。
本作執筆にあたり、修験道場の実践の場として、また彼の地の民の信仰の中心とされてきた山や峡谷を巡り、山岳文化の本意を辿る旅をする。
幼少期に、祖父母に連れられ歩いた山の記憶と、現代の私が、人の立ち入りを拒む深く険しい山々や峡谷を実際に歩き、山岳信仰を芸能(神楽)として昇華した彼の地の⺠の伝統を探り、花祭をはじめとして山岳文化に秘められた本来の姿(信仰)を描き出す。変化する時代の中で山岳文化のあり様を筆者自身の目線で綴っていく。
愛知県
奥三河に住まう榊⻤を求めて〜四季の修験路を辿る〜
正木 秀典
アートライティングコース
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