環境は売り切れ
イラストレーションコース 大矢浩己
私たち人類の活動が環境へ与える破壊的影響が問題視されるようになり長い時間が経過したものの、超大国が環境問題への取り組みを後退させるなど、依然として先の暗い状況が続いているようである。環境問題が経済活動自体の枷となりつつある現在においても、国家間は激しく経済成長を競い合っている。環境問題の解決へ取り組むことはある種の投資であるという考え方もある。一方、問題解決へと労力を割くことは自国の競争力を低下させるため避けるべきだという考えも依然として根強い。
作品制作において、環境に負荷を与える経済と背景にある価値観というテーマを設けた。経済成長や積極的な消費は是として捉えられることも多いが、それが環境に与える負荷は大きく、活発な経済活動を支える価値観自体に変化が必要ではないかと感じる。環境問題に関して直接的な要因をテーマにしている企画や作品があり、その背景にある価値観や考えをテーマとすることも同様に重要であると考え今回のテーマを設定した。この作品の制作においては活発な経済活動の背後にある価値観、経済力への信用を大きな要素として考えている。
ショーケースの中に保全された環境を描いた。一方で、外側を荒廃した環境として描くことで、その対比によって環境問題とそれを解決しなかった場合に待ち受ける未来を感じてもらえるように考えた。また、経済活動を連想してもらえるようなモチーフを取り入れた。
ショーケースの中には咲いた花や伸びた草木、綺麗な水や泳いでいる魚、飛んでいる蝶を描いた上で、「売り切れ」を意味する看板を配置した。一方、外側には対比する要素として、枯れた植物や汚れた排水、死んだ魚や蝶の標本を描いた。また、人物がショーケースのガラスに押し付けている紙幣が反射の中では花束に、空のショッピングカートが野菜や果物を積んだものに変わっているという要素も描いた。
経済活動に関連する要素としては、散乱した紙幣やレジスター、ビルの建設予定を示す看板や紙幣を喉に詰まらせて死んでいる鳥を描いた。また、電光掲示板の表示では地球の価値の喪失をを証券取引に見立てた。
その他の要素としてはプラスチック類などのゴミや漏れたオイルなどを描いた。ひびの入ったテレビ画面には、環境問題における象徴的なモチーフとしてイメージされることの多い白熊を要素として取り入れた。
大矢浩己
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