チドリと子どもが分けあう屋上はらっぱ
ランドスケープデザインコース 岡 かおる
コンセプトは「公共施設の未利用空間を活用し、雑草を活かした緑化により生物多様性を高めることで、チドリをはじめとする生きものの住処や子どもたちが自然に触れあえる場所を創る」というものです。
対象地は、京都市東北部を流れる高野川と白川疎水に隣接し、五山送り火の「妙法」の山のそばにある松ヶ崎浄水場です。敷地内を緑化するほか、施設の屋上には雑草を主体とした「屋上はらっぱ」を整備します。かつては鴨川にたくさん生息し、さまざまな意匠にも使われて京都の人々に親しまれてきたチドリですが、今では川の中洲に作る繁殖地の確保が難しく、その数を減らしています。そんな中、洪水や人に踏まれる心配のない屋上は、営巣地として新たな可能性があると思われます。また、自然に触れる機会の少なくなった子どもたちには、はらっぱで自由にあそぶことで身近な花や虫と仲良くなってほしいと思います。
今回の改善目的は、生きものの生息地の回復や子どもの自然体験など機能優先のため、修景的に「美しい」デザインとは言えないかもしれませんが、明治時代、芝生や雑木の庭が受け入れられていったように、人の価値観は変化していくものです。実際、無鄰菴や渉成園などでは、近年、生物多様性の保全に配慮した庭園管理が行われるようになっています。景観上、都市の中に自然度の高い空間を取り入れることは難しいものがありますが、ある程度健全な生態系が保たれている雑草の茂る風景もまた「美しい」ものだと思います。フランスの庭師ジル・クレマンの言う「できるだけ合わせて、なるべく逆らわない」という考え方は、植物や生きものが本来持っている力を尊重し、人は最低限の関わりに留めるというもので、これは子どもへの対し方にも通じるものだと感じます。一つ一つのはらっぱは小さくても、身近な緑から地域固有の自然を大切にしたビオトープネットワークが広がり、同時に地元住民同士も繋がっていけば、人も生きものも住みやすい「美しい風景」が生まれていくと思います。
模型は、主にダンボールと和紙で作りました。
岡 かおる
ランドスケープデザインコース
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