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観天望気

文芸コース 松田忠吉

「観天望気」とは、自然現象や生物の行動の様子などから天気の変化を予測することであり、また広義には経験則をもとに一定の気象条件と結論の関係を述べた諺のような伝承のことをいう。

 空太は部落出身である。部落の陰惨な生活は人を蝕む。逃れたい。でも逃れられない。唯一の救いは自然の存在であった。
 空太は大学進学で部落を逃れ、環境アセスメント士をめざした。卒業後、環境アセスメント士として環境アセスメントに取り組んだが、理想と現実は違った。環境配慮の理念とメッセージは見せかけであり、現実は経済優先の開発が行われていた。
 空太は環境アセスメント士として故郷の大型開発の環境アセスメントに臨むが、阻止できない。さらに、弟の非難、友人の裏切りが空太に追い打ちをかける。絶望感に苛まれる。 
 空太は故郷の砂浜に立ち、関門海峡へ入水する。人は死の間際、押し込めていた過去の記憶が脳裏に走馬灯のように駆け巡るという。空太にも忌まわしい過去の記憶が蘇る。
 本作品は、空太の関門海峡への入水、空太の死の間際の瞬間に焦点を当て、脳裏に浮かんだ記憶の断片を物語として構成した。環境アセスメント士である空太の彷徨いを通して、空太の心象風景、空太のトラウマを軸に、環境アセスメントの世界、社会と自然との関係を重層的に描こう試みた。
 この物語はフィクションである。登場する人物・団体・名称・出来事はすべて架空であり、実在のものとは一切関係ない。

松田忠吉

文芸コース

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