文芸コース 藤井 理絵
五十年ほど先の未来、世界の片隅に生きた「あさひ」という老女の最期を書いた作品です。
親の愛情に恵まれず、他者に流されながらも、ひたすらに生きた「あさひ」は老境に至って病気に侵され、ある施設に入所することを決意します。その施設で大切にされ、愛情深く育てた息子や大学時代からの親友と素晴らしい時間を過ごすうち、病気を克服できる望みと、自分で作り上げた大切な庭に帰りたいという願いを持つに至ります。残り少ない最期を、自らの望むように生きたい、と。
しかし、その施設で過ごしたすべては、他者が作り上げた虚構の世界だった――。
最期まで自分の思いや願いにたどりつくことがなかった人生を、あさひという女性に設定しました。
今いる世界が全くの虚構であり、最後の願いまでもが現実として叶えられることのないものだ、と知る瞬間に、充実していた時間や美しかったすべての情景がひっくり返って、虚しさに変わることを狙いとしました。
あさひの感じた虚しさや悲しさに、何かを感じてもらえたらと願います。そして、自身の人生を顧みて、自身には何もないと思ってしまう人へ、その人が変わる何かのきっかけになることができたら、とても嬉しく思います。
兵庫県
あさひの庭
藤井 理絵
文芸コース
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