芸術学コース 深井 涼子
昔から画風が好きだった油彩画家、坂本繁二郎をテーマに本研究をスタートした。坂本は、西洋の印象派技法の試みから、独自の神韻幽玄の世界を確立した画家である。明治から昭和に至る永い画業において、馬の絵をはじめ、野菜や果物、本や箱などの身近な品々、能面の連作、そして晩年の月光風景など、実に多くの作品を残した。世界で最も歴史ある芸術展、ヴェネチア・ビエンナーレに日本が公式参加して間もない1954年展には、自信作10点を出品した。しかし、そこでの評価が国内に比べあまり良くなかったという記述を目にして、その理由を知りたいと考えた。調べるうちに理由はおおよそ理解できたのだが、坂本が目指した「東洋的幽玄美」をさらに掘り下げ、当時の西欧と日本の美の受容の違いを解明したいと考えた。研究の過程では、坂本の美意識の基軸が「能舞台の簡素化の極み」であるとわかったことや、当時坂本が使っていた画材が判明して、独自の色彩の成り立ちが垣間見えたことなど、興味深い発見が多々あった。
苦労あり、喜びありの執筆期間であったが、今大きな達成感を味わうことができた。ご指導くださった先生方には改めて感謝申しあげたい。
坂本繁二郎が確立した「東洋的幽玄美」
-ヴェネチア・ビエンナーレ1954の受容から-
深井 涼子
芸術学コース
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