
デザイン科 - グラフィックデザインコース
磯部寛樹
自作曲「拷問奇想曲」のビジュアルデザイン
本/228×330mm/97ページ/1点
立体作品/140×140×140mm/1点
パープルウッド/紙/黒檀/ステンレス
私は自身の作曲したクラシックギターのための曲集「拷問奇想曲」のビジュアルデザインに取り組み、楽譜とCDジャケットの2点を制作しました。
楽譜 拷問奇想曲
この作品は人間の情動 ( 恐怖・驚き・怒り・悲しみ・喜びなど急激で一時的な感情 ) に表現の比重を置き作品を制作する情動主義という様式をとり、9つの拷問の様相をテーマにクラシックギターの独奏のために作曲したものである。 本作は受動的即興演奏 ( アンサンブルなどの人との対話による即興ではなく、音と対話し続ける事により行う瞑想的な即興演奏 ) による不確定要素を大きな特徴としているため、あえて音源を五線で採譜することをせず、録音の際に使用した譜面をそのまま浄書し即興の場面は図形譜で記譜した。 この楽譜は正確な音の記録ではなく、この譜面からこのような考えで作品を作ったという記録であり、いわば音楽の設計図のようなものを目指して制作した。この譜面の1番の目的はこれをそのまま量産、販売することではなく曲と記憶の保存である。素材に誠実を意味するパープルウッドを使い、私の本作への向き合い方である音楽と苦痛の表現に対して誠実 に向き合うという意味を持たせている。
CD ジャケット 幻影の棺
昨今の音楽業界ではCDもう音楽を聴くための第1のメディアではなり、多くのメジャーミュージシャンは配信や動画の広告収入で多くの収入を得ている。 しかし観客と顔見知り程度の規模で活動するローカルミュージシャンの間では、まだまだコンサートで手渡しで販売するようなコミュニケーションツールとしてCDは使われており、個人的にも自分の音楽が物理的に明確な形になった物としてまだ重要であると考えている。そこで新たなCDの形を考えた。
これは取り出せないCDジャケットで、この曲集のコンセプトを総括した造形作品である。曲集で扱っている拷問器具の一つである拷問を終えた者多くは罪人がいわゆる晒し者のような状態で最後の時を待つ檻のような器具である。檻から外の世界が見えあと一歩で助かるかもしれないと言う希望 がより一層対象者を苦しめる。世界中に同じようなコンセプトの器具があるため本作では「幻影の棺」と自分で名づけタイトルとしている。 素材は永遠を意味する黒檀を使い、中にCD型のプレートを配置し、映り込む幻影を中に幽閉し、本作のテーマである手の届かない幻影を表現している。