クローデル作『繻子の靴』(抜粋)の実験的上演――京都芸術劇場春秋座10月5日15時開演

10月 01日, 2014年
カテゴリー : 公演情報 

『繻子の靴――あるいは、最悪必ずしも定かならず(四日間のスペイン芝居)』(1919~25)は、二十世紀フランス最大の劇詩人の一人で外交官でもあったポール・クローデル(1868~1951)が、大正年間に、大使として日本に駐在中に完成させた戯曲です。物語は、新旧両世界に覇権を唱えた16世紀スペインを舞台に、新世界の征服者(コンキスタドール)であるドン・ロドリッグと、スペイン貴族の若い人妻ドニャ・プルーエーズとの、「禁じられた恋」に、プルエーズに邪な恋を仕掛ける「背教者」ドン・カミーユ、彼女の老いた夫で大審問官のドン・ペラージュが絡む《主筋》と、音楽の化身のような幻想的なドニャ・ミュジーク(音楽姫)とナポリの副王との幻想的な恋という《副筋》が展開されるという、文字通りの「世界大演劇」です。

「四日間の」という指定は、スペイン黄金時代の戯曲の幕割りの用語ですが、ここではそれが、ほとんど文字通りに、上演に「四日」を要するという意味にとりたくなるほどの規模で、ワーグナーの「四部作」『ニーベルングの指輪』に匹敵しようとするものでした。と同時に、もう一つのモデルがあり、この方が重要ですが、古代ギリシアにおける「悲劇」は、「悲劇三部」に「サチュロス劇」一部がつくという構成だったので、『繻子の靴』の「四日目」は、「三日目」までの深刻な劇とはうって変わった「笑劇」仕立てで、30年後の「不条理劇」の、驚くべき「先取り」ともなっています。

こうした演劇言語の多様な冒険は、主題の壮大さと相まって、劇詩人の死後も、クローデル劇のなかで最もポピュラーな作品となっており、バロー劇団のレパートリーとしては、独参(どくじん)(とう)、つまり上演すれば必ず当たる芝居にすらなりました。しかし、「全曲版」の上演は、一九八七年のアヴィニョン演劇祭において、国立シャイヨー宮劇団の支配人になった演出家アントワーヌ・ヴィテーズによってようやく実現され、以後は、「全曲版」を上演するのが、作品理解のうえで不可欠だという考えが拡がりました。近年、SPAC-静岡県舞台芸術センターへ招かれているオリヴィエ・ピーも、今世紀になってから「全曲上演」を果たしています。

しかし、まさに「グローバル」と呼んでよいような劇詩人クローデルの余りにもスケールの大きい演劇的宇宙は、まだ未開拓の部分も多く残されており、日本に正味5年近く滞在し、日本文化に強い関心と深い理解を示したその作品は、日本では特に、まだポピュラーなものとなっているとは言いがたい状況です。学部の卒業論文も、博士論文もクローデルで書いた者としては、『繻子の靴』への特別な思い入れがあっても当然だとは思いますが、同時に、翻訳者・演出家として、この作品を日本語で、日本人の俳優で上演することの困難さもまた、誰よりも分かっている積もりです。

今回、思い切って、かつて守章クラスの学生であった若い俳優たちと、ワークショップのような形で作業を始め――夏には、演劇集団円で、私の舞台に出てくれた人々にも参加してもらい――『繻子の靴』の重要な場面の幾つかを抜き出して、半年懸かりで舞台に立ち上げてみました。この作業は、文部科学省の「共同利用・共同研究」の助成金の一環として行いましたから、本格的な上演のための、文字通り「実験的な」作業です。そのような作業として観て頂ければ幸いであり、参加者一同に成り代り、今後もご指導・ご鞭撻のほどを願いあげます。

渡邊守章(演出家、フランス演劇研究/京都造形芸術大学舞台芸術研究センター客員教授)

http://www.k-pac.org/kyoten/guide/20141005/

今年もEXPERIMENT!

8月 02日, 2014年
カテゴリー : 公演情報 

こんにちは!

制作のイデです。

今年も秋に開催するKYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭2014

春秋座で上演する公式プログラム2公演をご紹介します!

 

まずはこちら

 

木ノ下歌舞伎「三人吉三」

20141011

 

一昨年・昨年と春秋座での上演が好評だった木ノ下歌舞伎(主宰:木ノ下裕一)。

歌舞伎演目の現代化を試みてきた彼らが挑むのは河竹黙阿弥の名作「三人吉三」。

歌舞伎の魅力が詰まったこの作品をなんと4時間30分の通しで上演!

3月の春秋座での春秋座サバイバーズ「レジェンド・オブ・LIVE」でも圧巻の演出をみせた杉原邦生さん。

昨年も東京での「四谷怪談」6時間通し上演を成功させた木ノ下歌舞伎ですから、時間を感じさせない作品に仕上がること間違いなしです!

 

 

続いてこちら!

地点「光のない。」

メインビジュアル_光のない

Photo:HIsakiMatsumoto

 

三浦基さん率いる劇団地点は京都を拠点にして、海外での上演も多いカンパニー。

今回、春秋座で上演するのはノーベル賞作家イェリネクの戯曲「光のない。」

東日本大震災と原発事故を受けて執筆された戯曲で、近年の地点最高傑作と評された作品です。

東京公演の記録写真を見ましたが、建築家によるダイナミックな舞台美術、生身の「音響装置」なるものに期待が高まります。まさにEXPERIMENT!

 

 

以上、簡単にご紹介させていただきましたが、詳しくは劇場HPやKYOTO EXPERIMENTウェブサイトなどをご覧ください。

チケットも絶賛発売中です!

 

最後に7月11日に実施された記者会見の模様を!

2014.07.11 險倩€・シ夊ヲ・R0001457

 

前列左が三浦基さん、そのすぐ後ろが木ノ下裕一さんです。

春秋座以外でもたくさんの公演がありますので、ぜひ今年もKYOTO EXPERIMENTをお楽しみ下さい!

立川志の輔独演会からの~

6月 16日, 2014年
カテゴリー : チケット情報, 公演情報, 過去の公演 

皆様こんにちは。上田でございます。
5月31日に開催しました『立川志の輔独演会』は嬉しいことに今年も満員御礼!
京都だけでなくご遠方からもご来場いただき本当にありがとうございました。

演目に関して、事前にお客様からお問い合わせいただいているのですが、
スタッフも開演するまで判らないのです…(汗)
これもひとつのお楽しみにしていただければ幸いでございます。

今年度の演目はコチラでした!↓【志の輔独演会】本日の演目13時【志の輔独演会】本日の演目17時前座の志の太郎さんが会場を温められ、
立川志の輔師匠の創作落語『親の顔』と
大岡裁きの一編である人情噺『帯久(おびきゅう)』を口演しました。

公演終了後にアンケートの回収を行っておりまして、いつも志の輔独演会のアンケートはトップの回収率!皆様本当にご協力ありがとうございます!

お書きいただいた感想からほんの一部をご紹介します。

・前半は気持ちよく笑え、後半はグッとした話に集中し、色々考えながら笑いも含んでいる素晴らしいものでした。(10代男性)

・落語というものがこんなにも人の心を動かし、そんな中でも笑いを忘れることのないものだと実感できました。本当に来てよかった、できれば来年も見に来たいと思います。(10代男性)

・『帯久』胸が透くような、心のにごりが流されるような気持ちです。(20代女性)

・人情味あふれる大岡様のお裁き『帯久』にはぐいぐい引き込まれました。『親の顔』はとにかく大笑いしました。(40代女性)

・志の輔さんの人柄・話芸に引きこまれ『帯久』の最後のほうは胸にぐっときてほろりとしましたがオチで大爆笑。(40代女性)

・『帯久』心に残る噺が増えて幸せです。(50代女性)

幅広い年代に支持されているのが伝わってきます。
特に若い世代の方は新たな世界が広がったのではないでしょうか?

またお客様から学生フロントスタッフへの温かいお言葉も頂きました。(感涙)
スタッフの方々がとてもていねいで良かった。もっと自信を持ってください。(70歳以上男性)

これからもフロントスタッフ一同おもてなし精神を忘れずに、日々精進していきたいと思います。
さてさて、話は変わりまして、今年の春秋座は秋も落語公演を開催いたします!
9月28日(日)『桂米團治 春秋座特別公演』。
201409281部では上方落語の真髄を披露し、2部は落語とオペラを組み合わせた「おぺらくご」を上演します。

おぺらくごとは、
上方落語とオペラを合体させた「おぺらくご」は桂米團治が確立した新ジャンルです。
モーツァルトの生まれ変わりと自称する本人が、人気歌劇「フィガロの結婚」を見事に上方落語に転化させ、3時間の大作をわずか30分の落語にアレンジ。
15人編成の京都フィルハーモニー室内合奏団の演奏と、2人のオペラ歌手のアリアが「おぺらくご」の世界をさらに盛り上げます。

“春秋座特別公演”と銘打っておりますが、何がどう特別かと申しますと…

花道、大臣囲いといった歌舞伎劇場の特性を生かし、落語+オペラ+歌舞伎舞台という春秋座ならではの特別企画で、同じ時代に流行った和洋文化の融合を、こだわりの落語で存分に味わっていただきます。

落語ファン、オペラファンだけでなく、初めて見る人でも分かりやすい内容で、大いに楽しんでいただけます。

チケットの発売は、友の会先行 7月1日(火)10:00~、一般7月2日(水)10:00~ です。
抱腹絶倒の舞台をお見逃しなく~!

上田

第二弾は樋口一葉!

9月 05日, 2013年
カテゴリー : 公演情報 

共同利用・共同研究拠点担当ツカモトです。
朝は晴れ晴れとしていのに、日中の京都はすごい雨でした!
気温も急に下がってますので、風邪等には皆さま、どうぞお気をつけください。

さてさて、先日に引き続き研究会のお知らせです!

文部科学省の定める共同利用・共同研究拠点プロジェクト
テーマ研究I「近代日本語における〈声〉と〈語り〉」の第二回研究会
「近代日本における〈声〉と〈語り〉1:「言葉」の自立-音曲との関係-一葉の位置」
を9月11日(水)に開催します。

作家、詩人、文学研究の松浦寿輝氏と
本学大学院学術研究センター所長で批評家の浅田彰氏をゲスト講師にお招きし
ディスカッションをおこないます。
モデレーターは第一弾に引き続き、
演出家で本学舞台芸術研究センター所長、渡邊守章です。

トークの後に俳優の後藤加代さんに樋口一葉の「にごりえ」から
一部朗読していただく予定です。


2010年5月28日『にごりえ』より 京都芸術劇場 studio21
撮影:清水俊洋

こちらも実演とディスカッションの両方が楽しめる
大変充実した内容になっております。

開始時刻は18時30分、入場は無料で、ご予約も不要ですので、
皆さま是非ご参加ください!

ツカモト

新たなる試み!研究会って?

9月 04日, 2013年
カテゴリー : 公演情報 

こんにちは、ツカモトです。
夜、虫の声が心地よい季節になってきましたね。

今回は学問の秋にぴったりな研究会のお知らせです。

ご報告がおそくなりましたが、
舞台芸術研究センターは今年度より、
文部科学省の定める共同利用・共同研究拠点に認定されました。

これは、広範な学術研究の発展のため、
個々の大学の枠を越え設備や資料などを全国の研究者が共同で利用し、
研究をおこなう体制を整備し、学術研究の基盤を強化することを目的に、
文部科学省が平成20年に認定制度を設けた制度です。
現在、共同利用・共同研究拠点として41大学(29国立大学、12公私立大学)
90拠点が認定されています。

京都芸術劇場を使用した、「劇場実験」を核とするプロジェクトをとおして、
学術研究の基盤強化および新たな学術研究の展開を目指します!!

さて、その研究会第一弾が9月6日(金)におこなわれます!
テーマ研究I「近代日本語における〈声〉と〈語り〉」
第1回 日本の伝統演劇における〈語り〉1:狂言の場合

ゲスト講師に野村万作先生(人間国宝・和泉流狂言方)をお招きし、
『釣狐』の「語り」の実演をしていただきます。
また、深田博治氏には『奈須与市語』を実演していただきます。
野村万作氏と企画の渡邊守章によるトークもおこないます!

2013年7月12日 『東西狂言  華の競演』より  京都芸術劇場 春秋座
撮影:清水俊洋

開始時刻は18時30分、入場は無料で、ご予約も不要です!

人間国宝の語りを是非ご堪能ください!!

明日は、9月11日(水)に開催しますテーマ研究Iの研究会第二弾を
ご紹介します!お楽しみ。

ツカモト

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