情報デザイン学科

2019年度・卒業展受賞報告

 

2019年度 京都造形芸術大学 卒業展における、

情報デザイン学科の受賞情報をお知らせします!!!

記載情報は以下の通りです。

氏名|コース|領域|「作品タイトル」|展示場所

 

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【学長賞】1名

 

根之木 颯亮(ねのき さすけ)|情報デザインコース|B領域|「柄の潮流」|智勇館3F・BR31/人間館1F・NA1F 

 

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【選評】

洋の東西を問わず、長く継承される文様にはそれぞれの文化を背景に意味や想いが込められている。そんな文様を今の時代に考案するとどのようなモチーフが用いられるのか?一見パロディ作品と捉えられそうな根之木颯亮の作品だが、テキストを読むことで、その本質は文様の成り立ちを真摯に考察し、オリジナルと対比させながら、時に揶揄を込めた表現と気付ける秀作である。今の若者にはよく知る文様に込められた意味を知るきっかけにもなるだろう。ぜひテキストと共にニヤリと楽しんでいただきたい。

 

 

【優秀賞】3名

東 祐輔(あずま ゆうすけ)|情報デザインコース|B領域|「星を通じて。」|智勇館4F・BR47

 

11625003_YusukeAzuma

【選評】

一見、文字を用いたデジタルアニメーションに見えるが、この作品のテーマは映像でのエディトリアル作品(ブックデザイン)である。物語の新しい読ませ方の提案である。じっくり文字を読むにはその疾走感は逆行しているようにも思うが、実はストーリィが伝わってくることに驚く。速読している気分だ。またコンクリート壁に直接投影することで、まるで空間に文字が浮かび上がってくる演出は、「星の王子さま」のスペースファンタジの世界観を見事に再現している。グラフィックのエディトリアルではできないことだ。

 

 

倉知 朋之介(くらち とものすけ)|情報デザインコース|B領域|「アメリカンドッグ」|智勇館1F・BR14 合同展示

 

11625022_KurachiTomonosuke

【選評】

2000年代にYouTubeとiPhoneが登場、メディアとテクノロジーの歴史における二つの出来事は、生活、文化、コミュニケーションスタイルに劇的な影響を及ぼした。少年期から映像を遊び、いつでも世界とつながりうる環境で育った倉知の作品はそんな時代の象徴にも見える。ファストフード「アメリカンドッグ」を題材に、ナンセンスとも社会風刺ともとれなくない虚構と事実体験を重ね織り交ぜた、熱量と疾走感溢れるビデオスケッチと軽妙な陳列は、楽観的で、笑いを誘う。大げさに言うのならば、私たちが生きていく上で不可欠なポジティブな感情を生み出してくれるカルチュラルコンテンツである。

 

 

石田 悠輝(いしだ ゆうき)|イラストレーションコース|D領域|「マジカルガジェット」|智勇館4F エレベーター横・BR4F

 

石田_11622004_図録画像差し替え

【選評】

2010年代インターネット上で島宇宙的に深化した「ヴェイパーウェイヴ」というジャンルがある。その中核は音楽だが、画像や映像にも及ぶ。今となってはチープなMIDI音源や初期CGに郷愁を見出し、チュートリアルのようなイメージが表現の一手段としてその要所を担う。石田の展示は、ビジュアル、歌、言葉、空間の各側面からこのヴェイパーウェイヴに言及しただけでなく、イラストレーションと各種メディアの有機的な体系化を試みている。

 

 

【同窓会特別賞】1名

森弘 麻友(もりひろ まゆ)|情報デザインコース|A領域|「小宇宙」|智勇館1F エントランス・BR1F

11625067_MayuMorihiro

【選評】

物理的かつ概念的な「宇宙」という大きな存在を、軽やかに日常の中で見出す。 そのなんでもない日常風景や日用品を、ビジュアルを構成する要素に変えてしまう。 彼女にとって日常を切り取るという行為は、そんなスリリングな「変換」を楽しむ行為でもある。

そして、フィジカルでグラフィカルに変換された彼女の視覚表現の断片は、みる者の脳を刺激し、捉えどころのないものの全体イメージを喚起させる。 ビジュアルイメージの本質を改めて目の当たりにさせられる作品である。

 

 

【コース特別賞】3名

山上 裕輝(やまがみ ゆうき)|情報デザインコース|A領域|「not here not there」|智勇館1F 廊下・BR1F

 

11625068_YamagamiYuki

【選評】

卒業制作展の空間をゲームとしてプレイすることができる作品である。既存のひとつの完成された展覧会と同じ場所に存在しながら、複数のオルタナティヴなあり方を内包したゲーム上の展覧会では、実現されなかったがありえた可能性を、現実の空間に重ねながら体験することができる。テクノロジーの発展により限りなく現実に接近していくミラーワールドを前提に、ゲームのインターフェースにより展覧会をハックしている本作は、誰もが共有し議論することができるユーザー参加型デザインと、開発や発表、議論を誘発するような未来志向的デザインを統合し、アップデートした挑発的な実践なのである。

 

 

石田 恵里(いしだ えり)、小山 真央(こやま まお)、吉村 夏鈴(よしむら かりん)|情報デザインコース|C領域|「次継 tsugitsugi」|創々館1F・BR12

 

11625029_koyamaMao

【選評】

石田、小山、吉村の3人でtsugitsugiを結成。元々、3年次後期授業の中で、もう1人のメンバーを含めた4人でゴミ分別問題に取組み、徳島県上勝村を取材し学内でゴミ分別を実施した。卒業制作では現状のゴミ分別には限界があることに痛感し、廃棄されるモノに価値を与えられないかと、陶器の産地を取材。商品にならない陶器が割られ、破棄される現状を知ったことを課題としてプロジェクトを始動。D&DEPARTMENT KYOTOと本学にて陶器のかけらからブローチをつくるワークショップを開催。つくる側と、つかう側に問いかける本プロジェクトを高く評価している。

 

 

長尾 春菜(ながお はるな)|イラストレーションコース|D領域|「穏やかな混乱」|智勇館4F・BR42

 

11622028_HarunaNagao

【選評】

長尾の描いたイラストレーションは、プロダクトをモチーフとしているが、純粋に造形に対する執着とイマジネーションを重ねて描かれた。鑑賞者はなんとなく見覚えのある部分を頼りにモチーフを想像してみるが、そのパーツがこうなったの?という違和感は絶妙な混乱と楽しさがあり、柔らかい質感で描かれたグラフィックとのバランスも気持ちの良い作品である。

 

 

 

【奨励賞】15名

一橋 匠蔵(いちはし しょうぞう)|情報デザイン|A領域|「Road Movie」|智勇館1F・BR12

 

11625008_ICHIHASHI, Shozo

【選評】

成果物と、その制作過程が並置された作品である。友人と、アリと、道路と、レンガと、風船と、という具合に人類に始まり動物や自然、物理現象まで、拡張されていく他者と出会いながら展開していく過程には、協力と妨害の狭間を行き来する状況そのものの魅力が詰まっている。そのあり方は不明瞭で変化し続ける複雑な状況から要請される、従来のデザイン手法や姿勢の再考、より良い方法の考案、創出の必要性に重ね合わせることができる。本作品は、多様な他者と並走し協働していくことで、より良いデザインを生成していく未来を生み出すための、私的で詩的なロードムービーなのである。

 

 

志水 遥(しみず はるか)|情報デザイン|A領域|「walking alone with」|智勇館1F・BR12

11625032_HarukaShimizu

【選評】

ザラリとした風合いが魅力的なこの作品は、日常的な風景の中に潜む「気配」という、感覚的で捉え所のない存在を、いくつかの軸を導入することで構造的に探究している。4コマというドラマティックな形式を用いながら、展開しない「物語」。建物の外観、階段、廊下など取り立てて特徴のない「空間」。リソグラフというビビットな色彩表現方法ながら、彩度の低い「色彩」。これらの構造を使いながら、その魅力を丁寧に「表現しない」というアプローチは、不明瞭でそれに取り組む確固たる方法がないような、未知の課題に向き合うための、ビジュアルコミュニケーションの可能性を感じさせる。

 

 

山田 衣織(やまだ いおり)|情報デザイン|A領域|「ピュア」|智勇館2F・BR21

 

11625070_山田_5【選評】

日常の何気ない場面でざわめいた気持ちは、苦々しい光景とともに心に刻まれて、今でもふと想い出す。しかし、その記憶の解像度は経年変化によって粗く変貌し、ドットで構成されたイメージへと転換していった。簡潔で印象深い文章が当時のリアルな状況を物語り、テキストとビジュアルとの対比的な関係性が、実に美しく見事だ。どのような過去であったとしても、これほど真摯に向き合うことができれば、豊かな未来がきっと訪れるだろう。

 

 

田中 幸乃(たなか ゆきの)|情報デザイン|B領域|「じいちゃんの三輪車」|智勇館3F・BR32

 

11625040_TanakaYukino

 

【選評】

日本全国の小学校で道徳の時間に行われる「平和教育」。終戦前後を生々しく表現し長期記憶へと結びつける映像教材に目を閉じて閉口する。直視出来なかった記憶と、被爆三世という近い立場ながら、自身が他人事であったことに葛藤する。祖父の幼少期を通じて、祖母さえも知らなかった出来事を田中は記憶の追体験をする。

平和教育の在り方と、忘れてはならない出来事をアニメーションにて制作する。この作品を見て、私は改めて自身の平和教育に対する考え方を振り返っていた。

 

 

山本 明日果(やまもと あすか)|情報デザイン|B領域|「iei」|智勇館3F・BR32

 

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【選評】

表現または企画どちらかにウエイトが偏りがちな作品が多い中、企画からリサーチ、考察、表現とバランスがとれ且つ一定のクオリティに達した情報デザイン学科らしい秀作である。企画自体は特に目新しいことでなく作品の派手さもないが、一人で限られた時間の中でクライアントを見つけ、交渉し、取材し、制作する。しかも複数件完結させたことは評価に値する。できそうでなかなかできないことだ。クリエイティブに真摯に向き合い、優しさと頑固さを持ち合わせたいかにも山本明日果らしい着地は、卒業制作のひとつの到達点といえる。

 

 

全 優希(チョン ウフィ)|情報デザイン|C領域|「聞き方の見えかた」|創々館1F・SO11

 

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【選評】

これは物質の持つ「擦れる音」を発見することの驚きを体感する装置である。デバイスを動かす速度、圧力によって発生した信号を電気的に増幅し、鼓膜の反応をみることによって感覚を研ぎ澄まし、この曖昧な「音」が不要な情報なのか「音以外の信号」なのかを問う。

 

 

福井柚帆(ふくい ゆうほ)|情報デザイン|B領域|「笑いに変換する装置ーA device for converting into laughterー」|人間館1F・NA1F

 

11625056_YuhoFukui【選評】

医学的、健康上の問題や、コミュニケーションに必要な「笑う事」についてリサーチを進めてきた。「笑い」についての探求は彼女の生活に大きく影響し、物事を見つめる価値基準となっている。ナショナリティーとして、なんとなく恥ずかしさを感じると語った時。「自己主張する事」そのものが日本人にとって型を抜かれた状態であるのだと気づく。これは、人目を気にせず笑おう!と言わんばかりのカタチであり、型に填まらない為の装置である。

 

 

渡辺泉月(わたなべ みつき)|情報デザイン|C領域|「廣島の漁」|創々館1F・SO12

 

11625081_WatanabeMitsuki_修正版【選評】

渡辺は地元である広島市について、京都に来てから見つめ直すことになる。これは3年次の初回授業の課題から始まる。地元(都道府県の大枠ではない)の物産を探し、さらに500円までの制限をかけた課題から地元について考え続けた。地元が形成された背景には地理的な条件と悲惨な過去を乗り越えた歴史が存在したことを知る。この調査過程の中で見えていない価値の存在にも気付く。現存する固定された価値だけではない、更なる価値をつくることが地域のブランド力となる。

本制作は外にいるからこそ見えた地元の魅力と問題を掛け合わせる試みとなっている。

 

 

小原御祐(こはら みゆ)|イラストレーションコース|D領域|「en」|智勇館4F・BR41

 

11622013_MiyuKohara

【選評】

小原は縁を信じ、人との繋がりを大切にしている。多くの人たちとの縁を見えるものにしたいと思った。しかし、縁とは目に見えないものである。だから、何かから形を借りる必要があった。それが指輪である。そのことによって、様々に繋ぐ繋がる形が見えるものにできた。繋がりの印としての指輪を見て、人は様々に想いを巡らす。一見商品のように見せることで、逆に縁とは簡単に手に入らないことを実感する。日本人にとって縁はconnectionではない。縁はenである。

 

 

堤 里花子(つつみ りかこ)|イラストレーションコース|D領域|「大学芋っていいなぁ」|智勇館4F・BR42

 

11622024_rikakotsutsumi

【選評】

作品はサツマイモオマージュであり、愛である。只々サツマイモが好きで、その美味しさ素晴らしさを多くの人に知ってもらいたい、食べて欲しい、その想いが作品となった。インタヴューからはサツマイモを美味しく仕上げて売る小西いもの主人へのリスペクトが伝わる。遂にサツマイモ愛は幻想となり、マイモ伯爵を生み出した。二人の同居生活にはイモと愛が満ちている。みなさん、おイモ食べてくださいね。

 

 

松岡 裕梨(まつおか ゆり)|イラストレーションコース|D領域|「Forever Ladies」|智勇館1F・BR13 合同展示

 

11622040_MatsuokaYuri

【選評】

「雑貨」は生活空間に豊かさを与える。その機能を改めて感じることができる作品であり、イラストレーションを用いた商業的な展開としてしても評価できる。女性をターゲットにジャンルの違う2種類のイラストレーションを描き分け、表現の幅を提示してくれた。

 

 

福留 聖乃(ふくどめ きよの)|イラストレーションコース|E領域|「ウルトラファンタジー」|智勇館4F トイレ横・BR4F

 

11622035_KiyonoFukudome

【選評】

ふと、脳裏に浮かんだ下らない妄想を4コマ漫画に→ 余りの下らなさからトイレに流してしまえと、トイレットペーパーに印刷→ トイレットペーパーが更なる妄想を呼んで、便器をフィーチャーしたインスタレーションに進化。天然と天才の間をホップ・ステップ・ジャンプで駆け抜けてゆく想定外のセンスと行動力が評価された。ちなみに便器が和式なのは下らない漫画が流れてゆく姿が良く見えるようにという極めて合理的な狙いから。

 

 

溝口 彩帆(みぞぐち あやほ)|イラストレーションコース|E領域|「ARASHI/」|智勇館4F・BR41、42

 

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【選評】

作者本人はARASHIのファンという訳ではなく、ARASHI好きの友人のために描いた絵がきっかけで、これらの連作が生まれたそうである。

作品数と作業量は言うまでもなく、作者がARASHIという大衆的なアイドルをメディアと捉え、無限に拡張していくイメージ、デジタルデータのような儚い存在としてヴィジュアル化に試みている点が、この作品の評価点ではないだろうか。

 

 

森田 三鈴(もりた みすず)|イラストレーションコース|E領域|「キラキラになりたいっ!!」|智勇館4F・BR45

 

11622047_MisuzuMorita修正用

【選評】

手間暇が掛かる手描きアニメーションに取り組み高品質な作品に仕上げた点が、何よりも先ず評価された。さらにコーヒーフィルターを用紙に用い、化粧品などを使ったストップモーションとも組み合わせるなど、古典的な技法と実験的な技法を融合させた点も評価された。特筆すべきは、これらが演出効果だけを狙ったものではなく、「女性の真の魅力とは何か」という作者自身が長年考え続けてきた課題への回答になっている点である。コーヒーフィルターに出来た染みは人生経験のメタファーである。

 

 

和田 まなつ(わだ まなつ)|イラストレーションコース|E領域|「NERD_DEVIL」|智勇館4F・BR42

 

11622053_ManatsuWada

【選評】

グラフィック・ノベルやバンド・デシネなどのビジュアルスタイルから参照し、意匠されたイラストレーションが魅力。

「アイドルとヲタクの距離感と葛藤」というハイコンテクストな題材を、ポップでスタイリッシュに描いている点がフ

レッシュである。「自分らしく生きればいい…」主人公の冴えない悪魔はアイドルからの宣託によってヲタクとなる。

アイドルへの思いがやがて自分自身を見失っていくことへと繋がり葛藤する…。自身の体験と実感を込めた本作は、作

者なりの「アイドルヲタク指南の書」であり、そこからは「他者承認/自己承認」という人間心理が浮かび上がる。

 

 

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スタッフ にし

 

 

京都造形芸術大学 卒業展/大学院 修了展

日程:2/8(土)〜2/16(日)

時間:10:00〜18:00

場所:京都造形芸術大学 瓜生山キャンパス

詳しくはこちらから→

 

2/15(土)2/16(日)同時開催!オープンキャンパス

詳しくはこちらから→

 

 

 

 

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