油画コース

Painting Life: 「ここで描く」赤松加奈さん

先週末のOCにお越しいただいた皆さん、有り難うございました!

「おもしろ絵画表現 モノタイプ」の油画ワークショップはいかがでしたか?沢山の人が体験してくれて、絵画のおもしろさを持ち帰っていただけたのではないかと期待しています。

 

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さて、油画コースでは大学での学びは、ほんの入り口だと考えています。卒業後は絵とともに、人生という大海原を充実して生きていって欲しいと考えます。このブログでは、普段の授業の様子や、元気に活躍する卒業生の多様なペインティング・ライフを紹介していきたいと思っています!

 

先日は、只今ギャラリー16で個展「ここで描く」を開催中の赤松加奈さん(2015年、本学大学院ペインティング修了)に取材してきました。現在は、奈良で農業をするご主人と一緒に土を耕し、植物を育て、自然の中でいきものの生き死にと関わりながら制作活動を頑張っています。最近では、群馬青年ビエンナーレ展2019で大賞を受賞しています!

2013年当時、ぼくはこども芸術学科にいて、長野県茅野市にある本学付属康耀堂美術館の学芸員さんと、「はじまりの部屋」という展覧会の出品作品を選抜するために卒展会場を回っていて、赤松さんの絵と出会いました。優しそうなその絵は、大きく描かれたオランウータンでした。そして、出品してくれないかと声を掛けました。そして、展覧会期の5月には現地で子ども達にワークショップをする機会もあり、アシスタントとして赤松さんに手伝ってもらうことになりました。

その頃、丁度、本学大学院の特別選抜制度が始まった年で、赤松さんは油画コースから応募し、卒業後は本学大学院院に入学しました。卒業制作で描いた絵は、大切な友人と通じ合いたいために描いたそうですが、動機となった友人はその後亡くなってしまい、結局、思いを届けることは出来なかったそうです。そこから、しばらく動物を描けなくなってしまったと。そんなことや、大学院の指導教員の一人からいつも「絵とは何か」と問われていたこともあり、改めて絵ってなんやろと考えたそうです。

そんな折り、院在籍中にFrieze Art Fair London 2014を視察、渡英する機会に恵まれ、Artって、こんなに自由で楽しくていいのだ!と感じたそうです。その経験が一つの転機となり、イギリス滞在中に偶然通りかかって目撃した、女の子がまるで子馬が跳ねているようにバスケしている場面をモチーフに、修了制作に取りかかりました。絵画空間を実際に体感したくなって、それは絵画という枠を超え、キャンバス地を使ったカラフルな立体作品となり、インスタレーションになりました。

修了制作展でのインスタレーション

今回のギャラリー16ではまた絵画作品を出品されていますが、絵を見ていると、大学院の修了制作を思い出させるようなインスタレーション空間を、絵画空間に押し戻して昇華したようにもみえます。赤松さんに制作意図などを質問すると、どの絵にもいまの生活に密着したモチーフがあることがよく解りました。

なかでも、5枚のキャンバスが、一つの連続性を持って見える絵では、道すがら一人の徘徊するおばあさんと出会った時の話をしてくれました。そこから「断続と繋がり」というテーマが見えてきたそうで、そうして画面を見直すと少し違った風に感じられるのも面白いなと思いました。

赤松さんは作品のエスキースをコラージュで考えているそうで、確かに絵のなかに切り貼りしたような色彩やかたちがリズミカルに目に飛び込んできます。具象的なイメージを、記号化、抽象化するギリギリの地点を探しながら配置されているといった印象です。そして、どの絵も余白が大きな空間の様に感じられます。赤松さんは、最近までフリースクールの先生をしていましたが、子ども達とコラボした作品も展示されていました。

 

*在学時代を振り返ってどうだったかを聞いてみました。

油画の先生から言われた相当ショッキングなものを笑、覚えているそうです。例えば、大学院での「絵画とは何か」という問いを始め、「絵について語りすぎて、ホンマかいなと思う」とか、「絵で何かを伝えるなんておこがましいことだと思わないか」とか。今でも、その言葉を思い出すそうです。当時は結構ショックを受けたけど、今更ながら腑に落ちることがあり、そのとき、一番勉強になって、役立っていると思うそうです。

 

*現在の学生たちにメッセージなどありますかと聞いてみたところ…

赤松さんは高校でも非常勤講師をしていますが、今年の3月には教え子(森本ゼミでした!)が本学油画コースを卒業しました。そして、入れ替わりでなんとこの4月には、油画コースに入学した、赤松さんが現在勤務する美術高校の教え子が油画コース新入生として入学されたとのこと!

油画教員を代表してお礼申し上げます笑。

有り難うございます。

 

現在、制作活動の一環として、高校の教え子さんなど、他者がコラージュした作品を送ってもらい、そこから制作するという取り組みをされています。その取り組みが、次の世代に込める赤松さんならではのメッセージなのかも知れないと思いました。

赤松さんのSNSからは、春には美味しそうな大きな苺を栽培、出荷しながら、ご主人にもパネル製作を手伝ってもらいながら素敵なアトリエで制作を続けているステキな様子が伝わってきます。この記事を確認してもらっているときにも、今日の採れたてです!と画像を送っていただきました!!笑

赤松さんにとって、田んぼは「生まれる場所」。そして、モグラやイタチを処する場所でもあると。最初は感傷的にもなったそうですが、そういうことも含めて、農作物を守るということ、命と付き合っているということなんだと。死と生。そこはスリリングで魅力的な場所であり、奇跡的なバランスで目の前に在る。そう考えていくと、田んぼも絵と一緒に思えてきたそうです…

それで、今回の個展のタイトル、「ここで描く」なのですね!

子ども時代は、田んぼとバッタや草、カエルが大好きだったそうです。でも、成長するとともに大人にならなくてはという意識が芽生えて離れてしまっていたと…今はまた、子どもの時のように、大好きなカエルを捕まえる生活が出来ているそうです!笑

赤松さん、どうも有り難うございました。

これからも、農業をとおして、自然とかかわりながら、

素敵なペインティング・ライフを祈っています◎

 

(森本:油画教員)

 

赤松加奈展「ここで描く」

2021年4月20日(火)-5月1日(土)月曜休

12:00-18:00

Galerie 16にて

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