キャラクターデザインコース

ゼミ通ヒーローズVol.54 金ジンギュ、藤江稜斗とデジタルゲーム「undone」について語るの巻Part2

※「ゼミ通ヒーローズ」とは、京都芸術大学キャラクターデザイン学科ゲームゼミの学生の研究や取り組みについてピックアップし、担当教員村上との対談形式で綴る少々マニアックなブログ記事となっています。

 

ゼミ通ヒーローズVol.54

金ジンギュ、藤江稜斗とデジタルゲーム「undone」について語るの巻Part1の続き

 

ゲームゼミ3年生 金ジンギュ君(以下、ジンギュ)

ゲームゼミ3年生 藤江稜斗君(以下、藤江)

 

村上

制作時の苦労話を聞かせてくれるかな?

 

藤江

もうずっと大変でした(苦笑)

 

ジンギュ

(爆笑)

 

藤江

ジンギュとは春休みの間にチームを組んでいて、前期のゼミが始まる前にはもう勝手に制作を始めてましたね。

 

村上

夏期休暇に入る前には基本動作は実装されていて、夏休みの間にエフェクトや演出を加えていって、バランス調整をして、何とか学科展の展示に間に合わせたという感じだね。

 

藤江

はい、なかなか恐ろしい夏休みを過ごしました。お互い朝5時でも7時でも、いつ電話しても必ず出るっていう(笑)まだ起きてるコイツって(笑)、

夕方に一旦3時間ほど仮眠をとって、それ以外の時間は全部制作に費やして、授業がある日は完全オールで。

 

村上

まあ…それが良いかどうかは別として、ゲームを作るって…そういうことだよね。人様に楽しんでもらおうと思ったら、生半可な気持ちではできないから、卒制前にシミュレーションできて勉強になって良かったね。

 

企画構想段階での資料。既存商品を例に分かりやすくイメージを共有し、徐々に仕様を固めていく。

 

ジンギュ

今回はパズルを構築するためのアルゴリズムをC#で組むのが本当に大変で、色んなプロの方にも相談をして実装していきました。

まずは企画者に見せる形として提示しないとダメっていうアドバイスをいただきまして、言葉で説明するんじゃなくて、実装したものを見せたら一発で理解できて何らかのフィードバックがもらえるって聞いたんです。だから、ゲーム画面だけで全てを伝えることができるように技術力を上げようとして、それ以外のことは全部藤江に任せてましたね。

 

村上

ここでいうアルゴリズムとは、パズルの組み合わせの自動生成プログラムのことだね。

 

ジンギュ

そうですね。決まったパターンのパズルを表示させるのではなくて、ランダムで組み合わせて表示するようにしました。まずは3種類のバグのパターンがランダムで表示されて、そこからパズルのパターンも自動生成されるようにしてあります。

UNITYでのゲームのアルゴリズムは色んなプロの方が作ったものが公開されているんですけど、それらは使わずに、このゲームに合うように全部ゼロから自分たちで設計しました。

 

村上

ランダムのものを使ってどうやってレベルデザインを実行した?

 

ジンギュ

パズル自体がランダムなのに対して、終盤になるにつれて敵の移動速度を速くしたり、グリッチ表現での画面の乱れ方を調整して、最後の方になると情報が見難くなったり。ゲーム進行によってこれらのパラメータを調整していきました。

 

藤江

敵も二種類存在するので、足の速い敵、つまり制限時間の短いパズルゲームの登場確率を上げたり、ですね。

あと、パズルの解法としては、一つではなく二つ存在するように設計しました。一つだけだと覚えゲーになってしまうので、解き方が分からなくて焦って操作しているうちに偶然解決策が見つかることもあるような難易度バランスにしています。

 

村上

二つだとしても覚えゲーは覚えゲーなんだろうけど、タイムリミットもシビアだし、焦りも加わってそれなりに難しいゲームにはなってたんだね。

 

藤江

元々は固定のパターンでステージクリア型の展開でも良いかと思ってたんですけど、ランダム生成が出来た方が面白いんじゃないかって話になって、一度頑張って挑戦してみようってなりました。

あとはひたすら数値を調整しまくって、学科展の当日にもプレイヤーの方から「難しい」と指摘されたので展示二日目にもまたバランスを調整して…というような感じでずっといじってました。

 

村上

展示会場で遊んでる人の様子を見てると、ほとんどの人がゲームオーバー寸前でギリギリクリアしてる印象があったね。ずっと悲鳴が上がりっ放しっていう(笑)

 

藤江

そのバランスは拘ったポイントなので、うまくいったと思いますね。

 

村上

制作工程に関しては、スパイラル方式のワークフローを含めて、順当に理想的な制作手順が踏めた点がとても良かったね。

 

藤江

それでも最後はパニくりましたけどね(笑)。作り込めば作り込むほど仕様が増えていくので。一つ何かが出来上がるともっと欲が出てきてもっとクォリティを上げるためのアイデアが出てきて(笑)。

 

村上

今出た「仕様が増える」っていうのは、新規のゲームモードを追加するとかボリュームを増すといったことではなくて、タイトル画面からの遷移をもっと丁寧に演出するとか、トランジションのエフェクトを入れるとか、一つ一つの動作が何を指すのかを初見の人にも分かりやすくするために演出を入れる、ということだよね。

 

藤江

そういうことです。

 

村上

ゲームではそういうキメ細やかさって凄く重要で、「これくらいで理解できるだろう」って思っても、大抵独りよがりの仕様になっててほとんど伝わらない。普段ゲームで遊んでるときには気付かないような、例えばボタンを押したときに一瞬ボタンが光るとか、文字の表示速度を調整するとか。

 

藤江

UIのアニメーションも一旦全部After Effectsで作って、それをジンギュに渡して調整してもらったりとか。こんなところ誰も見ないやろ、っていうところまで動かしたりエフェクトを加えたりしてました。

 

村上

初めてゲームを作るときって、画面が切り替わるときにフェードもウェイトも何も入らずにいきなり変わったりするよね。そこでのウェイトを秒間3フレームにするのか4フレームにするのかで印象が変わったりするから、そういうところに気付いて拘れるかどうかが凄く大事。このチームは今回そのあたりの操作性の快適さを追求したということで、かなり高く評価できるよね。

 

藤江

理想が高いので、どうしても細かくなってしまいますね。

 

村上

ゲームを作る上で参考にしたり意識した作品ってある?

 

藤江

マリオ、ソニック、カービィ、魔界村なんかの動きとか細かいところを参考にしましたね。

クリアした際の演出とか、クリア後の余韻としてどのくらいのフレーム数があれば満足感があるか、とかですね。

 

村上

既存商品を参考にするときは、ついストーリーの流れやキャラクターのデザインに注目しがちだけど、今話したみたいなクリア後の余韻のフレーム数とか、そういうところがちゃんと意識できてた点が良いね。

 

ジンギュ

ゲームとプレイヤーの一体感を味わうことができるかなと思って、ゲーム外にちょっとした仕掛けを入れました。エンドロールが流れ終わると、UNITYが強制終了されるんですよ。すると、このゲームの実行ファイルが入ってたフォルダの中に、最初は存在しなかったテキストファイルが一つ増えてて、それを開くと、「プレイして下さってありがとうございました」ってメッセージが表示されるようにしています。

 

村上

メタ的な演出ね。突然ゲームが強制終了されて、一瞬システムの不具合に見えるけど、実は演出だったと。それも、ゲーム内ではなくゲームの外を使って、更に遊びの仕掛けが見えるっていうね。

そういう話を聞くと、本当にゲームを作ることを楽しんでるなって感じるね。

 

ジンギュ

藤江とは仕事仲間としての関係性があったから、お互いを高める形でうまくできたんだと思います。

 

藤江

気になったところは思い切り遠慮なくダメ出しするので、やりやすかったですね。

 

ジンギュ

徹夜で実装できた仕様を報告したら、藤江が「それはナシで」って(笑)

 

村上

それ大事。プロの現場でも「徹夜で作ってきました」って報告されても、ショボいものに対してOKを出して、それで商品名に傷つけたらどうするって話だからね。ダメなものはダメってハッキリ言わないと将来的にお互いが傷つくことになる。そこは心を鬼にして卒制も頑張ってほしいな。

 

藤江

学科展にはゲームゼミの後輩もたくさん遊びに来てくれて、「こんなの出されたらプレッシャーになります」って言われたんです。優秀な2年生がプレッシャーを感じるような作品が作れて、こんなに嬉しい事はないなと。

あと、今回学科展で色んな人から「このゲームは他でもどこかで遊べるんですか?」って質問が多かったので、今後は色んなゲームのコンペにどんどん出していきたいですね。

 

 

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