文芸表現学科

3年生・榮野川文樺さん提供脚本が京都学生演劇祭にて大賞を受賞しました!

こんにちは、文芸表現学科です!

 

 

2022年9月9日〜19日の11日間にかけて開催された「京都学生演劇祭2022」。

『今、京都で最もおもしろい舞台をつくる学生劇団はどこか』という問いのもと、2010年度から始まった演劇祭です。

2021年度には野外舞台を自ら設営し「最もおもしろい演劇祭」を目指す、勢いのある演劇祭です。

 

出典:京都学生演劇祭2022ホームページ(https://kstfes.wixsite.com/home

 

 

その京都学生演劇祭2022にて、3年生・榮野川文樺さんが「劇団ゲスワーク」に脚本提供をされた『革命前夜、その後』という戯曲作品が、今年度の大賞に輝きました。

 

京都学生演劇祭2022『革命前夜、その後』より(撮影:脇田友)

 

学生劇団8団体に加え、過去に受賞歴のあるエキシビション劇団3団体が切磋琢磨し、劇団ゲスワークは大賞受賞のみならず、審査員賞、観客賞、参加団体賞を受賞されました。

大賞副賞として、来年3月に東京にて開催される「第8回全国学生演劇祭」への出場も決定しています。

 

そんな熱い夏を過ごした榮野川さんにお話を伺いました。

 

 

──京都学生演劇祭とはどういった演劇祭ですか?

「京都の学生演劇団体のなかで一番おもしろい劇団を決めるというテーマがあるなかで、演劇に関わっている人たちとの交流や、学生演劇から大人になっても演劇を続けている人たちとの交流ができる場でもあります。ピリピリとしたコンペというよりも、地域の人たちと演劇でつながり、一緒に楽しめる、お祭りみたいな雰囲気のある大会です。」

 

 

──「野外に自らの場をつくる」というのは参加劇団自らで舞台をつくるということですか?

「主に実行委員の方々がつくるんですけど、参加団体の人たちも一緒に組み立てに参加したり、ペンキを塗ったりします。本当にお祭りという感じですね。」

 

 

──「劇団ゲスワーク」に脚本提供を行った経緯を教えてください。

「劇団ゲスワークの一作品目に、作品上映中の写真を撮る舞台カメラマンとして関わらせていただき、そこで演出の大田陽彦(おおた はるひこ)くんの作品に触れました。実は大田くんも私の作品を知っていたらしく、人づてに『大田くんが榮野川さんの作品が気になっている、演出してみたがっている』っていうお話を聞いたので、今回の演劇祭エントリーが始まったとき、脚本もぜんぜん書けていない状態なのに『大田くん、私の作品を演出してみませんか!』って直接声をかけて快諾してもらえました。」

 

 

──榮野川さんの作品を知っていた、ということは、もともと榮野川さん自身が活動を行なっていたんですね。

「もともと高校生の頃から演劇をやっていて、正規の所属団体は『劇団ケッペキ』っていうところになるんですけど、コロナの影響で活動停止になってしまって……ケッペキとしての活動はできないながらも、所属している人たちのなかで人脈をつくり、いろんなところで活動させてもらっているという感じです。」

※1993年に京都大学学生部公認サークルとして総合芸術集団潔癖青年文化団を結成。1995年に劇団ケッペキと改称し、京都大学公認の演劇サークルとして今年で結成27年目を迎える。京都大学を中心に、様々な大学から演劇を愛する学生たちが集まっている。(劇団ケッペキホームページより引用:https://keppeki.github.io/index.html

 

京都学生演劇祭2022『革命前夜、その後』より(撮影:脇田友)

 

──自分が書いた脚本を誰かが演じるってどんな気持ちですか?

「あ、そうなるんだ! っていうおもしろさが大きいです。今回はじめて自作の演出を自分以外の人にお願いしたんです。いつも自分で演出をするというところまでやっていたんですけど、今回は大田くんに託したんです。自分の手を離れたあとに、作品が別の生き物になっていくっていうのをみて、改めていろんな人の手が加わる演劇のおもしろさみたいなものを味わったなって思うんです。」

 

 

──はじめての経験があった演劇祭で大賞を受賞されたんですね。受賞の瞬間はどうでしたか?

「座組みのメンバーが大賞を獲る気まんまんだったんですよ。最初から東京公演に向かって一直線みたいな、やる気のあるメンバーが集まってくれて。そのなかで自分の作品で大丈夫なのかっていう不安の方が大きかったので、大賞を獲ったとわかった瞬間は『よっしゃー!』というよりも『ああよかった、よかったあ』っていう気持ちが大きかったですね。」

※出演者の構成の意。

 

京都学生演劇祭2022『革命前夜、その後』より(撮影:脇田友)

 

──受賞作『革命前夜、その後』について教えてください。

「本作品は『終わり』というものをひとつのテーマとしておいています。内容としては、自分の高校生の頃と、現在の自分っていうところを重ね合わせたようなお話しです。ずっと続いているような感覚だった、あの高校生活もいつの間にか終わって、子どもだった時代も終わって、同じように今日が終わっていく、みたいなものを毎日体感しているなかで感じていたことばを、ぎゅっと詰め込んだ作品になりました。

戯曲って難しいですよね(笑)特に起承転結があるっていうものでもなくて……。ことばを全部、ぎゅっと入れた感じなんですよね……。戯曲ってむずかしい……。」

 

 

──いつもと違う挑戦をした部分などはありますか?

「逆にいつもと同じことをやりました。いつも他の作品を書いていても言いたかったことを、もう一回繰り返して全部言ったみたいな感覚があります。これが一旦、自分のなかで言いたかったことの全て。この作品で全部出し切ったなような気がしています。」

 

 

──作品を書くときに大切にしていることはありますか?

「大切にしていることは、なるべく『余白』をつくることです。演劇はやっぱり『戯曲』っていうものだけで完結しないんです。小説は、小説家の手で作品を完結させることができるけど、戯曲は書いて自分の手元を離れたあとで、演者さんが演じたり、演出家さんが演出をつけたり、音響がついたり、照明がついたり、舞台美術がつくっていうことをして、やっと完成するものなので、その人たちに託すための余白をつくるために『あえて完成させないように完成させる』ってということを意識しています。」

 

 

──今後、書きたいテーマはありますか?

「ずっと書きたいと言っていて、でも書いていないことがあって。沖縄県出身なんですけど、沖縄をテーマに書けたらいいなと思っています。沖縄がテーマの戯曲って難しくて、なかなか取りかれていないんです。自分のなかで取っかかりがみつかっていなくて。でも、沖縄を離れて生活をすることによって、より沖縄にいた頃の自分とか、政治的なことも含めていろいろ考える機会が増えたので、それを戯曲にできたら一番いいかなと、いま思っています。」

 

 

──今後はどのような活動を行なっていきたいですか?

「大学生になってからいままで(3年生)は、舞台美術をやったりとか、広報活動をしたり、カメラマンをしたり、スタッフワークを中心に活動を行なってきたんですよ。今回、自分の作品で評価を受けたことで、もっと自分の作品を出していきたいなという欲が強まりました。役者として舞台に立ってみたりとか、自分の作品を賞に応募して挑戦してみようかなっていう気持ちがとても強くなりました。さらにステップアップしたいと思います。」

 

京都学生演劇祭2022『革命前夜、その後』より(撮影:脇田友)

 

 

 

文芸表現学科では戯曲を学ぶ授業があります。そこでよく聞くお話が、「書いただけじゃ、まったく意味がない」ということ。実際に舞台上で表現してもらってはじめて、作品が完成するこということです。

そうは言っても、実際に一歩踏み出すにはなかなか体力がいるということも重々承知しているつもりです。

 

今回、榮野川さんにお話を伺うにあたり、実際に執筆された『革命前夜、その後』を読ませていただきました。

最後のページに添えられたあとがきには、次のようなことばが綴られています。

 

『こんなに激しいシーンを書いた覚えは一切ない。私の手元を離れた後に、作品が大きな変化を遂げようとしている。』

 

自分の頭のなかでつくりあげていた舞台では予想もできなかったことが目の前で起こり、そこに感動や衝撃があり、新たなインスピレーションを受ける。

実際に踏み出した人にのみ与えられる産物が、目の前の舞台上にはあります。

 

これからますます前に進んでいく榮野川さんの背中を見守りつつ、いつか、この京都の地で、沖縄の風を感じさせてくれることを楽しみにしています。

 

▲3年生・榮野川文樺(えのかわ・ふみか)さん/沖縄県立浦添高等学校出身

 

 

 

 

 

(スタッフ・牧野)

 

 

 

 

 

 

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