文芸表現学科

4年生・日笠みづきさん、3年生・中村朗子さんの評論が『詩と思想』 2022年9月号に掲載されています。

こんにちは、文芸表現学科です!

 

 

9月1日発行『詩と思想』(土曜美術社出版販売) 2022年9月号に、4年生・日笠みづきさん、3年生・中村朗子さん、そして学科教員・中村純先生の評論が掲載されています。

 

 

9月号の特集テーマは『ジェンダー』について。

 

『詩と思想』編集委員の中村純先生は日本文学を専攻されていますが、早稲田大学ジェンダー研究所の客員研究員を経て、新フェミニズム批評の会に参加されるなど、出版や教育、文芸の場でフェミニズム・ジェンダーの視点を持った活動を続けていらっしゃいます。

 

中村純ゼミでは年に一回、「文芸×社会」をテーマにゼミ生が企画・編集・執筆を行う『アンデパンダン』というゼミ刊行誌を発行しています。今年の1月に発行された第2号の特集では、学生たちの企画としてジェンダーを特集し、インタビューやエッセイ、論考、小説が掲載されました。

 

▲中村ゼミ生である4年生・田原瞬さん(当時3年生)が、学科ブログにて「アンデパンダン」を紹介してくれました。(https://www.kyoto-art.ac.jp/production/?p=141478

 

 

『アンデパンダン』を読んだ、詩と思想編集委員の方が、『詩と思想』のジェンダー特集に、学生たちへの寄稿を提案してくださったとのこと。

 

寄稿した日笠みづきさん、中村朗子さんは、普段からジェンダーについて問題意識を持ち、自ら動くことができる人たちです。

 

※現在、無償配布は終了しています。

 

「生理の貧困」をきっかけに、女性たちが抱える問題を知った日笠さんは、昨年「生理用品の無償配布」を告知するポスターを企画。情報デザイン学科の学生とポスターを制作し、今年の1月に掲示が行われました。

自ら企画し、行動に移すことで、より多くの女の子たちに対して『声をあげてもいい』ということを示してくれました。

 

『詩と思想』掲載の評論では、さまざまな理由から居場所を求める女の子たちの「居場所」のことが描かれています。

日笠さんは半年以上前から、週に3日、そこでご飯をつくって一緒に食べたり、手芸をしたり、一緒の時間を過ごしながらお話をされているといいます。

 

コロナ禍で深刻化してしまった、女性の雇用環境や家庭環境。気の休まらない生活のなかで、その場所はただの空間ではなく、唯一、心を休めることのできる居場所になっているのかもしれません。

 

そんな女の子たちが存在する現状をただ「知る」だけではなく、どのように向き合っていくのかを考える日笠さんの文章には、強い決意と、不安を包み込むような温かさがあります。

 

 

▲9月に開催された学生作品展。中村朗子さんは服装やお化粧など「装飾」をテーマに選び、社会が見たいとしている「女性」への違和感を、ご自身の体験談を交えながら綴った作品を出展されました。

 

 

中村朗子さんは、ご自身の母親について綴られています。

高校3年生でフェミニストになったとき、「これから」の話しかしてこなかったのだから「これまで」の話だってするべきだと思い母の話を書くことにした、と中村さんはいいます。

 

男尊女卑の家庭で育った母親の話、その母親の話。

「女らしさ」「女なんだから」「女だったら」という無自覚なことばに押し潰されてきた女性たちを、一番近くで見てきた中村さんが感じた志が、強く書かれています。

いつもきらびやかなお洋服に身を纏う中村さんを見て感じ取る強さと、おなじような強さが、彼女の文章にはあります。

 

 

 

お二人はこれからも、声をあげ続けるのだろうと思います。

鼓膜を震わせるほどのおおきな声ではないかもしれません。隣にいる人に聞こえるだけの声量かもしれません。

それでも声をあげ続けることをやめない限り、ここに一人の女性がいたのだという証明になりうるはずです。

そして、まだ声をあげられない人々の声を感じ、聴きうる人になっていくのだろうと感じています。

 

最後にお二人から、執筆を終えたいまのことばを頂きましたので、紹介したいと思います。

 

 

4年生・日笠みづきさん(京都市立紫野高等学校アカデミア科卒業)

「書くことが、だれかのためになるわけではない、ということを実感しました。でも、私はどうして書くのか、そんなことを考えながらいまも執筆しています。女性たちの困難や生きづらさを、さまざまなところで見たり聴いたりして、そこで感じたどこにも向けようのない思いを文章で表現しているのかもしれません。なにかを書きたくて、ボランティアをしているわけではなく、そこでの人との関わりが自分にとっての貴重な体験で、自然と身体が動くような気がしています。」

 

 

3年生・中村朗子さん(福岡女学院高等学校出身)

「普段はノンフィクションでフェミニズムに関して書いているのですが、書けば書くほど、これは私の作品ではないんだ、という感覚が強くなります。

『いままで』があって『これから』の話をしているにすぎないと。

たくさんの女性がやってきたことを私も引き継いでいるにすぎないのです。

女性の歴史は他者性の歴史、つまり歴史の主人公からはじかれてきた歴史です。その中で歴史から取りこぼされて名前を失ってしまった女性たちの話を、まずは私の母を通してするべきだと思いました。

すべての女性が、確実に参加者であったと。

フェミニズムはつまるところ、無かったことにさせない、ということであると感じています。

これからの女の子から何も奪わせないことも大切ですが、いままでの女性たちが望んでいた未来へ取りこぼされた全員を覚えて連れて行く。私たちが強くあることで、これまでの女の子だって『それくらい』じゃなかった、と証明ができるのではないでしょうか。」

 

 

 

詩と思想 2022年9月号掲載

<評論>

中村純/土の中から女を掘り起こす

日笠みづき/わたしがたどり着いた場所

中村朗子/「それぐらい」になりきれなかった女の子たちへ

 

出版社:土曜美術社出版販売

価格:1,430円(税込)

発売日:2022年9月1日

「詩と思想」HP:https://userweb.vc-net.ne.jp/doyobi/sitosisou.html

 

 

 

 

 

(スタッフ・牧野)

 

 

 

 

 

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