アートライティングコース 柴田 満日(コノキミツル)
こぎん刺しは津軽地方に伝わる伝統的な刺繍です。中でも原典と言える「古作こぎん」の美しさに衝撃を受けました。古作こぎんは、江戸時代から明治中期頃までつくられた農村の仕事着で、身ごろにびっしりとこぎん模様が刺繍されています。保温と補強が目的ですが、次第に美しい幾何学模様が生み出されていきました。担い手は芸術家ではなく、プロの職人でもない、普通の農村女子でした。素材も手法も素朴なものですが、今日まで多くの人々を魅了し続けています。
こぎん刺しはなぜ魅了するのか。わたしが受けた衝撃の正体は何か。その答えを探りました。タイトルの「黙する詩」とは、シモニデスの「絵画は黙する詩」を応用したものです。こぎん刺しの図案を絵画に見立て、模様に託された刺し手の心に、詩(和歌)にも似た叙情性を感じたのです。こぎん刺しは、貧しさや寒さのために行われた単なる針仕事ではなく、創作活動だったと考えています。名もなき刺し手たちの豊かな感性、高い美意識に光を当てたいと思いながら書きました。
こぎんは黙する詩(うた)である
柴田 満日(コノキミツル)
アートライティングコース
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