白い影の行方
―向き合い、離れる―
文芸コース 山本博和
亡き父と「私」が登場し、「家を継ぐとは」がテーマの小説です。故郷に背き、相続する意思など全くない「私」が、自分の意志と現実に挟まれて懊悩する姿を描きました。
父の草野球、私の高校野球、握手、スコアブック、写真、二人をつなぐ共通点、柱の記録などが絡み合って二人を近づけ、探索を続ける私は父を理解し始める……。
(最後の場面を原文で)
父からのバトンを、私が確かに受け取ったのだ。
「よくやった、あとは任せた」
「はいよ、父さん」
あの時に、「ベースボールへの遺志を受け継いだ」ことは認めてくれるだろう。まずはそれが私の相続だ。
とはいえ、現実の相続がこの後に控えている。土地や家を手放そうと思うこと自体、父の故郷を、そして私の故郷を捨てることになりはしないか。故郷を離れることは逃げではなく、自分で未来を切り拓くための選択、と考え続けていいのだろうか。故郷で父に倣い同じ生活を続けるだけでは、その場の楽しさ以上のものは手に入らない。私の個性を獲得するためには、踏み出さねばならない。「継がないこと」が私を創り、そして父を越えるのだという感情が、静かに湧き上がってきた。(後略)
山本博和
文芸コース
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