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Beyond Inspiration Porn

障害の社会モデル理論に基づく インクルーシブ映像デザイン施策

(大学院)映像デザイン分野 神移 朗

1. 施策の背景と目的
映像メディアにおいて、障害を「乗り越えるべき個人の感動的な物語」として消費する「感動ポルノ」が課題となっている。これは視聴者に安易なカタルシスを提供する一方で、社会が生み出す障壁を隠蔽する装置として機能している。本施策の目的は、この隠蔽された構造を暴き、制作者と鑑賞者の視点をパラダイムシフトさせることにある。そのために、コミュニケーションデザインの理論に基づき、障害当事者と制作者の共創を起点とした、社会との新たな対話回路を構築する。

2. 施策の概要(シアタープロジェクト)
本施策は単なる物理的空間の創出ではなく、映像表現の目的を「感情の消費」から「社会構造の読解」へと転換させる社会実装モデルである。現在、札幌国際短編映画祭との共同研究として実証実験フェーズにあり、社会的対話の触媒として、以下の二つの「映像教材」をシアター内で運用する。

3. 具体的な映像施策(二つの教材)
①『感動の方程式』(リテラシー教育)
既存の感動ポルノの文法をあえて再現し、その欺瞞性をメタ的に暴露する。無意識の差別構造を「認知」させ、制作者や鑑賞者のリテラシーを育む教材である。
②『障壁の可視化』(社会モデルの実践)
認知した問題を「障害の社会モデル」の視点で再構築する。差別を個人の悪意ではなく、マニュアル遵守や過剰な懸念といった「悪意なきシステムの作動(メタファーとしての「ある街のレストラン」の構造)」として描く。問題の所在を社会システムへと移行させる教材である。

4. 本施策の意義と今後の展望
従来の障害者対応は字幕等の「情報のアクセシビリティ」に留まりがちだったが、本施策は「物語構造」そのものの変革に踏み込む。個人の悲劇としての消費を否定し、社会構造の矛盾を可視化する試みは、映像を社会変革のための能動的な「学習装置」へと昇華させる。
本研究は端緒についたばかりだが、国際的な映画祭というフィールドでの実践的検証を通じ、多様性社会における映像メディアの新たな規範(ニュースタンダード)を提示し、映像文化に新地平を切り拓くことが強く期待される。

感動の方程式 (感動ポルノの方程式)/ 障害のレストラン(障害の可視化)感動

ケーススタディムービー ”インクルーシブデザインシアターTOMOSHIBI”

神移 朗

(大学院)映像デザイン分野

40年以上の広告コミュニケーションの経験と障害を持つ当事者としての利点を活かし、inclusiveデザインの新しい理論を追求したいと思います。

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