オンラインと現世の〈あわい〉に棲む、令和の猫又
書画コース 鈴木香子
135cm x 35cm 玉蘭箋
歌川国芳の浮世絵に描かれた猫たちは、どこか人間くさく、愛嬌に満ちた存在である。本作は、その中でも《見立東海道五拾三次岡部 猫石の由来》に登場する猫から着想を得て、「もし国芳が令和に生きていたら」という想像を出発点として制作した、猫又を主題とする水墨画である。
猫又とは、長い年月を生きた猫が妖怪へと変じた存在とされる。本作において私は、この猫又を単なる怪異としてではなく、生と死の〈あわい(間)〉をしたたかに生き、なおそれを楽しむ存在として描いた。眼に記された漢字は生と死を象徴し、二本の尾は強い筆圧によって描かれ、今にも動き出しそうな生命感を与えている。
墨のにじみやかすれ、淡い輪郭の曖昧さは水墨画特有の表現であり、同時に国芳が得意とした戯画や見立に見られる、意味のずらしや遊びの精神とも通じるものである。さらにデジタルツールを併用することで、伝統的な水墨表現を現代の視覚感覚へと接続している。
浮世絵がかつて庶民の娯楽であり、時代の空気を映し出すメディアであったように、この猫又もまた、今を生きる私自身の感覚から生まれた存在である。本作では、時代を越えて生き続ける「国芳マインド」を、現代のかたちで描き出すことを目指した。
鈴木香子
書画コース
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