蛍の記憶
文芸コース 渡貫 久
半世紀ほど生きていると、早逝した友人の訃報を耳にすることが増えてくる。
その都度、様々な思い出が蘇り、同時に後悔も押し寄せてくる。
「いつでも会いに行けたのになぜ会いに行かなかったのだろう」という思いは、多くの人が経験する普遍的な感情だろう。
この作品は、行方不明になった幼馴染の話を聞いた主人公が、二十数年ぶりに故郷を訪れる物語だ。
変わり果てた町を歩きながら、彼は失われた時間と向き合い、忘れていた大切な記憶を取り戻していく。
家族ほど身近ではない昔の友人の存在はある意味特別だ。
友人との思い出は、私たちが子供だった頃の自分自身を映し出す鏡でもある。
人の寿命が公平ではないと頭では理解していても、実際に友人を失って初めてその意味を実感する。
この作品は、もう会えない友人へ向けて、そして自分の心を整理するために書いた。
同時に、同じような経験をしている人に少しでも寄り添えることを願っている。
そして誰かが何かに気づくきっかけとなれば、それ以上の喜びはない。
時が経ち、町は変わっていく。それでも記憶の中には変わらない思い出がある。そして思い出は、今日もまた作られていく。
渡貫 久
文芸コース
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