EQUILIBRIUM
(大学院)写真・映像領域 山本 理恵
FIlM
ぼんやりと海を眺めるとき、私は最初、大きな全体像として海を捉えていた。
そこからじっと眼を凝らして海水面を見つめると、それが実はとても細かなレイヤーで成り立っていることに気がついた。
水と空気の接点、そこに差し込む太陽の光、反射した光が踊る波目、そして海中に差し込み水の中を揺蕩う光の帯、光に照らされて様々な色味を見せる海の底の石ころ。
それら全てが重なって、そこにある海は成立している。
それを理解した時、私は自分の人生もまたそのようなものなのかもしれないと思った。
絶え間なく連なる時間という層、私の周りを形づくる外的環境のレイヤー。
自分という人間は一枚絵に見えるようだけれども、実は様々な細かい重なり、ゆらめきで構成されているのかもしれない、と。
そう思いながら水面を眺めていると、波の揺れに合わせて動く太陽の光が、まるで波の上を踊っているように見えた。
その光の動きが、書上に流れる草書体のようだなと思ったり、譜面のようだなと思ったり、夜空に浮かぶ星座のようだなと思ったりした。
それからは、この光のダンスを捕まえられないだろうか、写真に捉えることはできないだろうか、と思いながら毎日同じ海岸に行くことを続けた。
数年の間、初夏にその海を訪れてはシャッターを切った。
私は、アルフレッド・スティーグリッツの《Equivalent》は、
禅で言う、空(くう)の世界であり、彼の写真はその空(くう)を切り取ったもの、
そして彼が、人間の心の平穏という意味で使った”Equilibrium”という言葉を、空(くう)を捉える無心の状態の人間の精神であると解釈した。
揺蕩う波に輝く光の狭間に、私も空(くう)の世界を見ていた。
それを夢中で撮影したこれらの作品群は私にとっての無心の表現、EQUILIBRIUMなのである。
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