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消え行く伝統と文化の記録

表情、瞬間、そして諧調、3つの視線が捉える、伝統の深奥

(大学院)写真・映像領域 黎 順成 ゾーミン (ゾーミン)

ミャンマーの山岳地帯に住む「顔に刺青」のチン族

 舞台はミャンマーの険しい山岳地帯に暮らす「顔に刺青」のチン族です。かつては成人式儀礼であった女性たちの「顔の刺青」と言う伝統は今や、老人たちにしか見られず、失われようとしています。この伝統が完全に消える前に、その歴史的、文化的な生命感を肖像として記録に残したいと言う強い思いから制作を始めました。集落はアクセスが困難でバイクで行ける集落もあれば殆どは険しい山道を歩かなければ辿り着かない場所にあります。
 刺青の理由は、他の部族から略奪を防ぐため、あるいは部族の美の基準や身分を示すためなど、諸説があります。刺青の儀礼は9歳から15歳ごろに、竹のトゲを針とし、煤(すす)や植物の液で作ったインクを皮膚に叩き込みます。非常に強い苦痛を伴い、完成までに数日から段階的に数年かかります。部族や集落によって刺青の模様が異なります。
 この伝統は、チン族の文化の中でも「消えゆく文化」として認識されています。
 表現の手法は刺青の精細さと、被写体の「内面的な力強さ」を際立たせるため、あえて、モノクロで撮影しました。そして、光を活かしたコントラストと階調により、単なる記録写真に留まらない、ドラマチックな物語性と芸術性を「表情」「瞬間」「階調」の三つの視線を軸に追求しました。

ダーイ族( Dai)顔全体に線が施術されているのが特徴

ダーイ族は顔全体に点と線が混在している模様

ムン族(Muun )の刺青模様は半円形のパターンが特徴

ムン族は半円形の模様。

ムクム族(M'kuum)は不規則な点が混在している模様

ムクム族(M'kuum)に伝わる伝統の鼻笛

レートゥー族はクモの巣のような模様

レートゥー族はクモの巣のような模様

ウップ族は顔全体を隙なく塗り潰す模様

レートゥー族の老人達

黎 順成 ゾーミン ゾーミン

(大学院)写真・映像領域

 ミャンマーには約135の民族が暮らしていると言われています。それぞれ異なる言語と文化で暮らしていますが国が発展につれ、彼らの文化と習慣が消えつつあります。そうなる前にその文化と習慣を記録するのは写真家の役目だと使命感を感じ、2016に記録撮影プロジェクを立ち上げました。彼らとの信頼関係を作るのに苦労しましたが今はお互いの心が繋がり、今日まで楽しく撮影を続けています。

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