本文へ移動

アートライティングコース 竹内 信子

『ケルズの書』の謎を探る
   紋様に秘められたメッセージ

 2年前に訪れたアイルランド、ダブリン大学のトリニティカレッジ図書館で『ケルズの書』を目にしてから、謎に満ちた強烈な図案が脳裏に焼き付いてはなれない。どこか邪悪ささえ感じさせる動物や人の頭などが埋め込まれ、不気味でありながらも見事な色彩で塗りこめられた図案は、豪華で魅惑的な美しさを醸し出していた。数年たった今でも時折、色鮮やかで鮮明な文様で構成されたイメージが頭をよぎり、まるで呪縛にかかったようであった。今回、この卒業研究という機会を利用し謎を解き明かし、呪縛から解き放たれたいと思って挑んだが、探れば探るほど深みに嵌り込む自分がいた。しかし、この呪縛の謎が少しずつ解き明かされるにつれ、心地よい感覚を覚えるようになった。それは、この謎の根底に自然を崇拝した霊魂不滅の思想が宿っていることが分かったからである。生けるものはいつか滅びていくのだが、その恐怖を拭うべく、魂は再生されると信じて描かれた文様を眺めるうちに、精神的な安らぎを感じるようになった。この呪縛は、実は精神を救済してくれる心のよりどころであったのかもしれない。


静岡県


『ケルズの書』の謎を探る
  紋様に秘められたメッセージ"

竹内 信子

アートライティングコース

このコースのその他作品