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歴史遺産コース 大塚 真由美

 和田傳(1900~1985)は生涯のほとんどを厚木の生家に暮らし、近郊のむらむらを舞台に人々の暮らしを描き続けた作家である。
 戦前・戦時下では農民文学作家として世間の注目を集めたものの戦後は一転、その活躍故に国策文学者として非難も浴びた。
 厚木市誕生の頃(1955)には民主主義の様相が農村の暮らしに及び始め、『鰯雲』(1957)では時代の変革に向き合う人々の暮らしぶりと心模様が鮮やかに映し出された。
 和田の人生は日本近現代史と重なり、作品は厚木の地域史ともなるが、そこで和田は何を見、考え、語ろうとしたのか。和田の思いに近づくため詳細な年表を作成してその生きざまを確かめ、随筆からその時々の心意を探った。
 著作の全てが絶版の中、ようやく巡り合った資料が互いにつながり、探れば探るほど時代に向き合う和田の姿が浮き彫りになる。これも読んでくれとまるで資料の方から飛び込んできたような感動、学びの醍醐味であり、そこには新たな気づきも生まれた。
 作品を通して、この地を一所懸命に耕し戸惑いながらも前に進んできた人々を知る。よそ者であった私は、今や、厚木の山が、丘陵が、田が人が愛おしい。研究の成果である。



厚木の作家「和田傳」について
―和田が見た厚木、そして『鰯雲』に込めた思いとは―
神奈川県

大塚 真由美

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