春秋座の扁額と4代目市川猿之助さん

6月 05日, 2012年
カテゴリー : KPACへようこそ 

先週お知らせしていた“春秋座の新しい顔”について、橘さんよりご紹介いただきましょう!!

************************
 6月1日より、春秋座の入り口に「座秋春」という扁額が掲げられました。これは市川亀治郎さんが4代目市川猿之助を襲名するのを機に、市川亀治郎として揮毫(毛筆で大書)したものです。亀治郎さんは、春秋座の初代芸術監督である市川猿翁氏(3代目市川猿之助)を叔父に持ち、2001年の春秋座杮落としに出演、2002年には「第1回亀治郎の会」を春秋座で開催するなど、春秋座とは深い縁があります。
「市川亀治郎のうちに書きます」と言ってくれた4代目市川猿之助さんの気持は、自分の青春時代と春秋座をだぶらせておきたかったのだと想像しています。

 そういえば、「亀治郎の会」の時、亀治郎さんは「学生さんといっしょに舞台を創りたい」と言って、「藤娘」の舞台美術を学生に担当させたり、宣伝広報のアイディアを学生から出させました。
亀治郎さんはいつも進取の精神で実験と冒険を繰り返していたのです。私は、亀治郎さんの舞台をほとんど見てきましたが、3代目市川猿之助さんの目指すところを理解し、いつも、そこに自分らしさを注ぎ込もうとしていました。一時、門下を飛び出した時期もありましたが、これも「寄らば大樹の陰」になってはいけないと言う考えからのようでした。
 4代目市川猿之助さんの強みは、声が良く、立ち役も女形もバランスよく演じられることでしょう。そして、テレビやラジオという媒体を毛嫌いせず、自分のやりたいことを伸び伸びとこなしている点も特徴です。歌舞伎というフランチャイズを大切にしながら、現代に通用するものを求め続ける4代目市川猿之助さんと「春秋に富む」劇場、春秋座との出会いは、これからも何かが生まれる原動力になると期待しています。
 2代目市川猿翁と4代目市川猿之助、そして猿翁の実子9代目市川中車と5代目市川團子、これらの人たちの支えによって、春秋座がさらに成長して行ければこんなうれしいことはありません。

橘市郎

明日より一般発売!

6月 04日, 2012年
カテゴリー : 過去の公演 

こんにちは!
イデです。

9/6(木)開催の「松竹大歌舞伎」春秋座公演
いよいよ明日より一般発売となります!

二代目市川猿翁さん、四代目市川猿之助さん、九代目市川中車さん、五代目市川團子さんの襲名披露公演が6/5(火)より東京にて開催されますが、その公演にも出演する、おもだか一門の役者、市川右近さん、市川笑也さんが初役に挑む公演です。

演目は「歌舞伎のみかた」、古典歌舞伎の名作「熊谷陣屋(くまがいじんや)」、長唄舞踊「女伊達(おんなだて)」。

市川猿弥さんのトーク「歌舞伎のみかた」で演目を解説。初心者の方にも歌舞伎を分かりやすく楽しんでいただけます。

歌舞伎劇場春秋座で見る歌舞伎は、ひと味もふた味も違うはず!

市川右近さんは近年、テレビドラマや劇団EXILEの「レッド・クリフ-戦-」に出演したりと歌舞伎以外での活躍も目覚しいのですが、古典歌舞伎の演目で歌舞伎役者としての本領を発揮してくれるでしょう!

劇場にてお待ちしております。

イデ

春秋座の新しい顔!!

6月 02日, 2012年
カテゴリー : KPACへようこそ 

昨日から六月となりました。ツチヤです。

もう季節はすっかり春から夏へと移りゆく合間の梅雨の気配が…

さて、この春秋座の新しい顔として、今月から皆様をお迎えするのは…

実はこれ、現在6月に襲名披露公演をされている四代目・市川猿之助丈が、“市川亀治郎”の最後の仕事として書いた力強い「春秋座」の文字。

昨日は除幕式も行われました!

みなさんも春秋座にお越しの際は是非ご覧ください。

来週は橘プロデューサーに、この看板についてご紹介いただきますので、お楽しみに!!

ツチヤ

沖縄「組踊」、「日本文化としての家元」、「マラルメ・プロジェクトⅢ」

6月 01日, 2012年
カテゴリー : 過去の情報(~2016.3) 

 6月の京都芸術劇場(春秋座)のお勧めは、なんと言っても「琉球王朝の華――組(くみ)踊(おどり)」【6月9日(土)、14時開演】でしょう。琉球国の宮廷で、18世紀初頭に作られたもので、新国王任命のために訪れる中国の冊封使(さつぽうし)をもてなすために作られた舞踊劇です。日本では能が、幕府の式学として様式化を進めている時代ですが、そのような能の様式性をヒントに、沖縄の音楽や伝説を取り入れて、独特の音楽・舞踊劇として作られました。遥かにに西ジャワのガメランの響きも思い起こされるような、そんな時空を超えた記憶の深層に響いてくる音楽だという思い出が、個人的にはあります。
 今回は、「組踊」の第一人者で人間国宝の宮城能鳳師の、高貴にして妖艶な女形芸を、同じく人間国宝である西江喜春師の歌と三味線が、記憶の深層に訴えかけるような音楽によって支えます。特に能『隅田川』に想をえた『女(おんな)物狂(ものぐるい)』は、宮城能鳳師によって舞われますが、「狂女物」としても極めて劇的な能が、どのように読み直されたかを見ることが出来、極めて興味深いものでしょう。また、『手水(てみず)の縁』は、若い男女の悲劇的な愛を描いた傑作で、「組踊」の明日を担う演者たちの、新鮮な演技が感動的だと思います。
 日本の伝統芸能を支えてきた制度に、「家元制度」があります。ともすれば、伝統的な芸術表現を、正しく伝承するという口実の元に、芸術的創造力を枯渇させる制度だとして批判されることの多いこの文化制度について、そのネガティヴな局面のみならず、ポジティヴな力も再検証しようとするのが、田口章子教授の司会で展開される「日本芸能史」関連シンポジウムです。学習院大学名誉教授諏訪春雄氏、表千家若宗匠千宗員氏、池坊次期家元池坊由紀氏、山村流六世宗家山村若氏にご参加いただく、ジャンル横断型のパネルです。
 7月のブログでもう一度詳しく書きますが、舞台芸術センター企画公演としては、今年度の最も重要な作品となる『マラルメ・プロジェクトⅢ 《イジチュール》の夜へ――「エロディアード」「半獣神」の舞台から』は、坂本龍一氏の音楽、高谷史郎氏の映像、白井剛・寺田みさこ両氏のダンスに、浅田彰氏と渡邊自身の朗読によって、音楽と映像と、詩の言語とダンスとが織りなす、多重的なパフォーマンスを目指して、既に稽古が始まっています。いたずらに難解さばかりがあげつらわれるマラルメの詩の、音声・身体的な潜在力を、春秋座の舞台に響かせようという、空前の実験も今年で3年目になり、一つの節目となることでしょう。

渡邊守章
(舞台芸術研究センター所長・演出家)

« 前ページへ