2015年8月
2015年8月11日 イベント
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2015年8月2日 授業風景
子どもたちの大好きな物語。その物語には必ず入り口がある。子どもたちの活動を組み立てる時には子どもに教えることを探すのではなく、子ども自身の物語を組み立てるきっかけをみつけることだと思っています。
大人が設定する活動はその日のプログラムで完結することが多い。しかし、子どもの時間は連続しています。その連続の中で出会う楽しい時間が、子どもの心に残る物語の種になるのです。
学生たちが山に設置したポスト(2013年度こども芸術研究での展開による)や子どもたちに届く架空の存在である「お山の住人さん」からの手紙は、それらを介して、子どもの内に点在している様々な出来ごとを物語として、日常へとつなげていけたらと設定しています。
お山の畑に行く途中にあるポストを覗いてから山を駆け上がっていく子どもたちの心の中に「お山の住人さん」が棲みはじめたようです。
今回は夏休み前に行った2つの授業風景をご紹介します。
はじめに年中さんとの活動【花火を描こう】です。
今日も「お山のポストにお手紙が入っていたよ!」と年中のH君がお山から帰ってきました。
それは前日に学生がポストに入れておいたのです。し−っ!子どもたちには内緒でしすよ。
早速、H君はみんなの前でお手紙を一生懸命に一文字一文字丁寧に読んでくれました。
傍にいるのはこども芸術学科3年次生の日浅さんです。
お山の住人さんが花火を見たいんだってね。
「みんなは花火を見たことある?」
「見たことあるよ!お空にどーんって上がるの。」
「しゅるしゅるって上がるの。」
「ぱっ−て、ひろがるよ。」
「いろんな色でお空にお花が咲いたみたいだよ。」
それじゃ、みんなで花火を描いてお山の住人さんに見せて上げようね。
学生たちが用意したのはコーヒーフィルターと水性サインペンとスポイドです。
どんな花火ができるか楽しみです。
コーヒーフィルターに絵を描きましょう。
「絵、描けたよ。どうしてお姉さんのはじわっ〜てなってるの。」
スポイドのお水で ぽたっ! ぽたっ!「じわ〜ってなってきた!」
どんどん花火をつくりましょう。
きれいな花火がたくさんできたね。
さぁ!花火が上がりますよ。
「お山の住人さん、喜んでくれるかな。」「きれいなのができた〜。」
年中の仲良し3人娘たち、花火をバックにテンションMAX!です。「はい!ポーズ。」
お母さんやみんなに見せるために花火の夜空を運びます。長〜いよ。
夏ですね。いろんなところで花火が上がる季節になりました。
子どもたちの描いた花火も大きく夜空に上がりました。
お山の住人さん、見にきてくれるかな。
「きれいな花火を描いたから見に来てって、お山の住人さんにお手紙を書いたよ。」と子どもたちはポストに向か
って駆け上がって行きました。
次に年少さんとの活動【帽子をつろう】です。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
年少さんはお母さんと離れて子どもたちだけで学生との活動をするのははじめての経験です。
きっと、年少さんは緊張しているだろうなと、アトリエで待っていたのですが予想に反してワクワクした様子で来
てくれました。
学生の方はと言えば、朝からメンバーの一人の体調不良で4人で活動を回して行かなくてはなりませんでした。
急遽段取りを組み直しです。バタバタとしましたが、そこはチームワークです。咄嗟の対応や判断も必要とされる
保育現場です。学生たちは大変でしたが思わぬいい経験ができたと思っています。
さて、活動ですが年少さんにもお手紙が届いていました。
年少さんとのワークショップのリーダーは横山さんです。何をするんだろうと、子どもたちは待ちわびています。
お山の住人さんから白い画用紙と何やら年少さんへプレゼントです、と書かれたビニールの袋が机の上に置かれ
ています。
袋の中にはいろんな形の葉っぱが入っていました。
それを画用紙に貼付けます。こんな感じでね。(子どもたち、横の何に興味があるんでしょう。)こんな時でも
横山さんは落ち着いて説明しています。
それを、ぐるり!ほら帽子です。U君嬉しそうです。
材料は絵の具の入ったスプレーボトルが用意されています。
葉っぱの裏には画用紙に貼るために学生たちがテープを付けてくれていました。これでどこにでも簡単に貼れるね。
スプレーの使い方を横山さんから説明してもらいました。
いつもは道具があっても年少さんはなかなか使わせてもらえません。
今日は自分たちにためだけに用意されたスプレーです。興味津々です。
「あっ!きれい! 」
みんなもやってみましょう!
お姉さんのようにふわーって出ないな。
学生たちもこの時にはじめて、子どもたちの握力がないことや、画面とスプレーの距離が近いことに気づきました。
大人はスプレーのハンドルを力を調整することができるけれど、子どもには難しいようです。
また、画面と身体が近いせいで霧にならずに画面の上で絵の具が溜まってしまうのです。
これも大人は完成する作品を美しく、とついつい思ってしまうのですが、子どもたちはそんなことよりも道具で
遊びながら、大胆に徐々にいろんな表現や工夫をはじめています。
素敵な帽子ができ上がりました。お山の住人さんもこれでぼくたち、私たちだってわかってくれるね。
今回のワークショップはこども芸術学科3年次生の日浅さんと西脇さん、横山さん、横江さん、保尾さんの5人が
担当しました。彼女たちはこの夏、保育実習に行きます。子どもと向き合うことはまだまだ、緊張すると言っている
彼女たちですが、子どもの気持ちに寄り添うこと、子どもの言葉に耳を傾けることが大切だということ。大人が思っ
ている以上に子どもたちはいろんなことを理解していること。挑戦する力を持っていること。そして、遊びのなかで
たくさん学んでいること。などたくさんの気づきがあったようです。
保育実習でもこの気づきと経験を活かして、がんばってきてください。
梅田美代子(教員)
2015年8月1日 ニュース
2015年7月25日から30日まで、Aゼミの学生と教員で福島県の山間部の西会津に研究旅行で行って来ました。(Aゼミとは、こども芸術学科で3・4回生になると、A・B・Cのゼミに分かれて研究を深めて行きます。各ゼミには2名の教員がいます。Aゼミは、美術家の村山と臨床心理士の浦田が担当しています。)今回の研究旅行は、森のはこ舟アートプロジェクトの西会津エリアに村山が昨年から参加していたことを切っ掛けに、学生(3名)に西会津や芸術村の良さを体感してもらいたいと考え、京都から遠い東北の地に行くことになりました。
西会津の奥川地区のかなり奥深い所で撮影しました。人があまり入っていない山が、自然な形として見えてとても素晴らしいです。ただ、この周辺にはいわゆる限界集落があり、何軒か残っていたお家も山を下りるとのことです。自然は豊かですが、若い人もいなくなり、年配の方だけと病院などに出るのに時間がかかり現代の社会状況の中では厳しい環境であることは確かです。
今回の研究旅行の第一の目的は、東北の自然豊かな環境に抱かれながら様々な活動を介して感性を磨くことです。滞在中は、西会津の保育所で学生が主導してワークショップを行い、国際芸術村主催のワークショップのお手伝いと地元の方との交流、西会津町のフィールドワークなども行いました。
滞在の拠点は、西会津国際芸術村です。ここは、雰囲気のある木造の中学校の校舎です。中学校が廃校になりその校舎を生かす形で、芸術村として生まれかわり海外からアーティストが滞在制作を行ったり、様々な企画展やワークショップなど展開しながら地元の方とアーティストが交流する、コミュニティアートセンターです。
企業がつくった箱ものスペースではなく、元々あるものを使い、地域の方々に寄り添いながら芸術を介し、新たな価値を生み出そうとしているとても素敵な場所です。近代的で十分な設備があるわけではありませんが、芸術村こそ、それを凌駕する根源的で社会と人と芸術と自然を結び、多くの本質的なことを学べ感じることが出来る、現代社会のこれからのトレンドとなる場なのです。
今回、参加した学生はまず、地元の親子が参加する芸術村主催のワークショップのお手伝いをしました。内容は、ドラム缶窯でピザをつくったり、陶器の笛をつくり、籐細工でえんぴつ立てづくりなどをサポートしました。盛りだくさんな内容で、地元の方々との交流も出来、有意義な時間を過ごしました。
二日目は、地元の群岡保育所で14名(全員で16名ですが、今回来ていたのは14名でした。)のこども達に、学生が先生となり自然物で絵を描くワークショップを行いました。まず、筆代わりにする葉や枝をこども達が園庭で集めました。
上の子が下の子を助ける場面や、気にかけているところを何度も見ました。とてもいい雰囲気でした。
絵具は、手で触れても安全な天然塗料の柿渋と墨渋を使い、布に自由に描いてもらいました。はじめは恐る恐る描きはじめましたが、時間が経つにつれてダイナミックに葉を使いはじめ、自然に工夫しながら、とても素晴らしい作品になりました。作品は、芸術村に展示しています。柿渋は、時間と日光に照らされると色が濃くなるため、展示期間中絵の色彩が変化して行くことになります。
このワークショップの様子は、地元のローカルTVで放映され、新聞(福島民報)にも掲載いただきました。
ワークショップ前日は、遅くまで準備をしたようで、手遊び歌でこどもの心をつかむところから、制作につなげてとても手際がよく、こども達の純粋でのびのびした制作を引き出せている様子を見て、いいワークショップになりました。こども芸術学科では、京都の地で子どもや社会と関わることを行って来ているので、堂々と自然に、子ども達と触れ合うことが出来ていて、さすがこども芸術学科の学生だと誇らしく思いました。
群岡保育所の出入り口から見える風景です。冬は、雪も多く厳しい環境もありますが、東北の豊かな自然は日本の原風景を見るようです。
ワークショップ後のお昼に、地元の美味しいお蕎麦屋さんに芸術村のスタッフさんに連れて行ってもらい、ツヤツヤのおそばを頂きました。地元の食材を現地でいただくと、その地域をより理解出来ます。
作品は、芸術村で展示しています。素晴らしい作品です。(福島に来られる際は、是非見に来てください。)
西会津の街を、時間があいた時にフィールドワークしました。学生は、京都より空が大きいと感動していました。また、地元の方とよくお話をしたようで、皆人が優しく話し好きな方が多いようで地元の方との交流を深めました。
※実は、ちょうど研究旅行中芸術村では、京都造形芸術大の工芸科などの大学院の卒業生が、「C塾」として西会津での活動を数年かけて展開する一つのプロジェクトで、滞在制作をしていました。昨年まで、芸術村に京都に関係する人はほとんどいなかったのに、今回は西会津にて社会に出ている先輩とこども芸術学科の在学生で交流も出来ました、これも何かの縁と思います。こども芸術学科の学科長の森本先生が、以前工芸科にいる時に教わっていたアーティストも2人いて、とても親近感が沸き、またどこかでつながるといいですね。
限界集落のある地域の中、こどもの存在はとてもとても貴重であって、自然豊かな環境下で生きているこども達の顔や目の純粋性を、学生も見て感じるものが 多々あったのではと考えます。また、芸術村ではたらくスタッフの皆さんが、力を合わせて切実にたくましく生きている姿勢を見て、こちらも感じるものがあったと思います。とても充実した、研究旅行になりました。
村山修二郎(教員)
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