- 2015年8月2日
- 日常風景
物語の入り口:こども芸術研究IV「ファンタジーをつくる」
子どもたちの大好きな物語。その物語には必ず入り口がある。子どもたちの活動を組み立てる時には子どもに教えることを探すのではなく、子ども自身の物語を組み立てるきっかけをみつけることだと思っています。
大人が設定する活動はその日のプログラムで完結することが多い。しかし、子どもの時間は連続しています。その連続の中で出会う楽しい時間が、子どもの心に残る物語の種になるのです。
学生たちが山に設置したポスト(2013年度こども芸術研究での展開による)や子どもたちに届く架空の存在である「お山の住人さん」からの手紙は、それらを介して、子どもの内に点在している様々な出来ごとを物語として、日常へとつなげていけたらと設定しています。
お山の畑に行く途中にあるポストを覗いてから山を駆け上がっていく子どもたちの心の中に「お山の住人さん」が棲みはじめたようです。
今回は夏休み前に行った2つの授業風景をご紹介します。
はじめに年中さんとの活動【花火を描こう】です。
今日も「お山のポストにお手紙が入っていたよ!」と年中のH君がお山から帰ってきました。
それは前日に学生がポストに入れておいたのです。し−っ!子どもたちには内緒でしすよ。
早速、H君はみんなの前でお手紙を一生懸命に一文字一文字丁寧に読んでくれました。
傍にいるのはこども芸術学科3年次生の日浅さんです。
お山の住人さんが花火を見たいんだってね。
「みんなは花火を見たことある?」
「見たことあるよ!お空にどーんって上がるの。」
「しゅるしゅるって上がるの。」
「ぱっ−て、ひろがるよ。」
「いろんな色でお空にお花が咲いたみたいだよ。」
それじゃ、みんなで花火を描いてお山の住人さんに見せて上げようね。
学生たちが用意したのはコーヒーフィルターと水性サインペンとスポイドです。
どんな花火ができるか楽しみです。
コーヒーフィルターに絵を描きましょう。
「絵、描けたよ。どうしてお姉さんのはじわっ〜てなってるの。」
スポイドのお水で ぽたっ! ぽたっ!「じわ〜ってなってきた!」
どんどん花火をつくりましょう。
きれいな花火がたくさんできたね。
さぁ!花火が上がりますよ。
「お山の住人さん、喜んでくれるかな。」「きれいなのができた〜。」
年中の仲良し3人娘たち、花火をバックにテンションMAX!です。「はい!ポーズ。」
お母さんやみんなに見せるために花火の夜空を運びます。長〜いよ。
夏ですね。いろんなところで花火が上がる季節になりました。
子どもたちの描いた花火も大きく夜空に上がりました。
お山の住人さん、見にきてくれるかな。
「きれいな花火を描いたから見に来てって、お山の住人さんにお手紙を書いたよ。」と子どもたちはポストに向か
って駆け上がって行きました。
次に年少さんとの活動【帽子をつろう】です。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
年少さんはお母さんと離れて子どもたちだけで学生との活動をするのははじめての経験です。
きっと、年少さんは緊張しているだろうなと、アトリエで待っていたのですが予想に反してワクワクした様子で来
てくれました。
学生の方はと言えば、朝からメンバーの一人の体調不良で4人で活動を回して行かなくてはなりませんでした。
急遽段取りを組み直しです。バタバタとしましたが、そこはチームワークです。咄嗟の対応や判断も必要とされる
保育現場です。学生たちは大変でしたが思わぬいい経験ができたと思っています。
さて、活動ですが年少さんにもお手紙が届いていました。
年少さんとのワークショップのリーダーは横山さんです。何をするんだろうと、子どもたちは待ちわびています。
お山の住人さんから白い画用紙と何やら年少さんへプレゼントです、と書かれたビニールの袋が机の上に置かれ
ています。
袋の中にはいろんな形の葉っぱが入っていました。
それを画用紙に貼付けます。こんな感じでね。(子どもたち、横の何に興味があるんでしょう。)こんな時でも
横山さんは落ち着いて説明しています。
それを、ぐるり!ほら帽子です。U君嬉しそうです。
材料は絵の具の入ったスプレーボトルが用意されています。
葉っぱの裏には画用紙に貼るために学生たちがテープを付けてくれていました。これでどこにでも簡単に貼れるね。
スプレーの使い方を横山さんから説明してもらいました。
いつもは道具があっても年少さんはなかなか使わせてもらえません。
今日は自分たちにためだけに用意されたスプレーです。興味津々です。
「あっ!きれい! 」
みんなもやってみましょう!
お姉さんのようにふわーって出ないな。
学生たちもこの時にはじめて、子どもたちの握力がないことや、画面とスプレーの距離が近いことに気づきました。
大人はスプレーのハンドルを力を調整することができるけれど、子どもには難しいようです。
また、画面と身体が近いせいで霧にならずに画面の上で絵の具が溜まってしまうのです。
これも大人は完成する作品を美しく、とついつい思ってしまうのですが、子どもたちはそんなことよりも道具で
遊びながら、大胆に徐々にいろんな表現や工夫をはじめています。
素敵な帽子ができ上がりました。お山の住人さんもこれでぼくたち、私たちだってわかってくれるね。
今回のワークショップはこども芸術学科3年次生の日浅さんと西脇さん、横山さん、横江さん、保尾さんの5人が
担当しました。彼女たちはこの夏、保育実習に行きます。子どもと向き合うことはまだまだ、緊張すると言っている
彼女たちですが、子どもの気持ちに寄り添うこと、子どもの言葉に耳を傾けることが大切だということ。大人が思っ
ている以上に子どもたちはいろんなことを理解していること。挑戦する力を持っていること。そして、遊びのなかで
たくさん学んでいること。などたくさんの気づきがあったようです。
保育実習でもこの気づきと経験を活かして、がんばってきてください。
梅田美代子(教員)