- 2021年4月22日
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Painting Life: 「サニー・レニー」 高野いくのさん
油画コースでは大学での学びは、ほんの入り口だと考えています。卒業後は絵とともに、人生という大海原を充実して生きていって欲しいと考えます。このブログでは、普段の授業の様子や、元気に活躍する卒業生の多様なペインティング・ライフを紹介していきたいと思っています!
さて、SNSで繫がっていた油画卒業生の高野さん(2012年大学院修了、art space co-jin勤務)が、最近、京都のギャラリーart space co-jinでスタッフとして働き出し、ギャラリーで障がいのある方がつくったアートの展覧会を企画したことを知りました。そして、丁度今、高野さんも個展「サニー・レニー」を開催していることを知り、個展会場にお邪魔してきました。
まず、驚いたのは個展会場となっている「そのうちcafe SNC」の場所。
うららかなお天気の夕刻、五条通河原町を南西に少し入ったそこにはステキな公園がありました。そしてその公園に接して!カフェの入り口がありました。カフェの前にはカワイイ色合いの自転車も止まっています。とてもステキなロケーションです。予告なしに訪れましたが、あ、先生お久しぶりです、と自然に迎えてくれました。
マスターに出していただいたお茶と苺!を頬張りながら、ホットコーヒーを注文し、高野さんの作品を拝見。緻密なグリットが、油絵の具ならではの厚い筆致でキャンバスに置かれています。
淡い色調が美しく、まるで光を「もの」にして取り出し、一つ一つを丁寧に並べたようです。
前職は京都新聞カルチャースクールで事務(受付)をされていて、絵を描いていることをあまり言わなかったそうです。美術と仕事を繋げて考えられていなかったと。そうこうしながら最近結婚され、新生活が始まってまもなく新型コロナウイルス感染症が流行しました。
自然と、家で絵を描く時間が多く取れるようになって、改めて絵を描くことが好きなんだと再確認したそうです。コロナで家で絵ばかり描ける日々と、何が起きるかわからない世の中なのだから、怖がらずに興味のある世界に飛び込もうと、思い切って現在のギャラリー、art space co-jinの仕事についたそうです。
幼稚園のころから絵描きになりたいと思っていた高野さん。本学大学院に進学し、作品制作の他に制作ノートも執筆しました。そのときに取り上げた作家は、アウトサイダー・アートとして知られているフェルディナン・シュヴァル。19世紀から20世紀にかけてのフランス、郵便配達人の仕事をしながら、彼の一生をかけて、黙々と石を積み上げて奇怪な建築物をつくった人です。
他にも、障がいのある方の造形に関心があり、あんな風に作品を作りたい…という憧れを抱いていたそうで、アトリエインカーブなどの活動なども気になっていたとのこと。その頃から現在の仕事に結びつくような種を持っていたのですね。
*油画を学んで良かったことを聞いてみました。
勉強しなければいけないときにちゃんと出来なかった自分が嫌いで、出来ていた人をリスペクトしているとのこと。そして当時、大学では、今あるアートの轍を踏まえ、既存のアートの先に自分を乗せていかなければならないのかと思っていて、でもそれは結局、先生や誰かの真似になってしまう…という悩みを持っていたとのこと。
でも、実はそうではなくてもいいのではないか、例えば、障がいを持った方がつくるアウトサイダー・アートはめちゃロックだ!と気付いたそうです。つまり、決められた型なんてなく、一人一人にとってよいと思うことを素直に実践していけばいいのだと。真面目に作品を描いて売る、という生き方もあるんだけど、本当に大切な絵を描けたときには、売ってはいけないものもあるのではないかと。
それが解ったのは、やはり大学で美術教育を受けたからだと語ってくれました。自分の価値観や大切なものは、比較され優劣を決められるものではない筈なのに、当時は情けなかったと。でも、今ではその経験があるからこそ、さまざまな人や元気がない人などの気持ちがわかると。…高野さん、学生の頃から着実に成長されていて、とても頼もしく感じました。
現在ハマっていることを聞いてまたビックリ!。
作品を制作していると、体力の切れ目が集中力の切れ目と思い知り、自分の限界を超えるためになんとボクシングを始めたそうです!!それは間違いなく、制作活動と絵に繫がっているとのこと。
大学院を修了してから個展も開催しましたが、大学院を修了し、大学を出ると寂しかったので、展覧会そのものより、来てくれた人全員にお手紙を書くことが楽しかったそうです。因みに、ステキな写真家のご主人との馴れ初めは、高野さんが個展に観に来てくれたお客さま全員にそうして手紙を書いていたら、今のご主人は、自分だけに手紙をくれたと勘違いして恋に落ちたと!笑笑
そういう訳で…
*これから絵を始める後輩たちへのメッセージをお願いします。
「ギャラリーは、出会いの場だョ!」
だそうです…はい、ごちそうさまでした◎
そして、社会人になってから、学生の時よりも友達が増えたそうですよ!
これは、今の学生たちにとっても勇気をいただけることではないでしょうか。
ふと気付けば、同時期に写真展を開催しているご主人も高野さんの会場に来られて、グリーンバーグやら、ホックニーやらの話で盛り上がり、とっぷり日も暮れていました。会話が楽しすぎて、こんなに長居するとは思いませんでした汗
その後、高野さんからステキなメッセージをいただきましたので紹介します。
「私はスーパースターにはなれませんでしたが、誰かと一緒にいれる人にはなれたかなと思います。
どこかの誰かをニヤニヤさせられるような、そんな作家活動を続けていきたいなぁと思っております。」
高野さん、どうも有り難うございました。
人生これからですから、将来は福祉とアートのスーパースターになっているかも知れませんよ!
仕事と制作と、ボクシングもありましたね!笑。
素敵なペインティング・ライフを祈っています◎
(森本:油画教員)
*
art space co-jinでの展示:
(*高野いくのさんが企画しています)
Spring up Spring
6月6日(日)まで
月曜休廊
10:00〜18:00
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高野いくの サニー・レニー
そのうちcafe SNC
4月25日(日)まで
11:30-20:00
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ご主人の個展(写真):
林佑紀
像(かたち)を待つ
4月25日(日)まで
13:00〜19:00
gallery Mainにて
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さて、今週末の4/24土曜、25日曜はオープンキャンパスです!油画コースではワークショップ「おもしろ絵画表現」シリーズで皆さんをお迎えします◎
今回はモノタイプに挑戦してみましょう。絵が好きな人はもちろん、ちょっと苦手意識のある人にも楽しめるようになっていると思います。優しい先輩学生さんもいますので、ぜひお気軽に、油画コースにお越しください!
新型コロナ感染症対策として、皆さんに安心して楽しんでいただけるよう、午前・午後の2部予約制となっています。詳しくはこちらから↓
https://www.kyoto-art.ac.jp/opencampus/oc04-24_04-25/
それでは、皆さんのご来場を、心からお待ちしています◎