油画コース

人とともにある。向こう側に見える作り手の姿。 「JOHNAN STUDENTS’ ART AWARD2022」が初開催。 油画コースの学生が大賞・準大賞を受賞! 【文芸表現学科学生によるレポート】

違うジャンルを学んでいても、芸術大学でものづくりを楽しむ気持ちは同じ。このシリーズでは、美術工芸学科の取り組みの現場に文芸表現学科の学生たちが潜入し、その魅力や「つくることのおもしろさ」に触れていきます。

 

文芸表現学科・3年生の出射優希です。

今回は、美術工芸学科の学生を対象に行われた「JOHNAN STUDENTS’ ART AWARD」の様子を取材してきました!

油画コースからの参加が多く、画材の性質なのか、モチーフやテーマの性質なのか、どっしりと心地よい重みのある作品が並んでいました。

 


 

 

社会実装プロジェクト「JOHNAN STUDENTS’ ART AWARD2022」が初開催!

 

11月22日(火)まで、ギャルリ・オーブの通路にて「JOHNAN STUDENTS’ ART AWARD2022」の参加作品が展示されていました。

 

 

 

「JOHNAN STUDENTS’ ART AWARD」は、JOHNAN株式会社との社会実装プロジェクトとして今回初めて開催された学生公募展です。

美術工芸学科・大学院美術工芸領域の在学生を対象に実施され、20日(土)には最終審査まで進んだ9名による公開プレゼンテーションが行われました。

 

最終審査はJOHNAN株式会社CEOである山本光世さんをお迎えし、美術工芸学科前学科長の椿昇先生、現学科長の竹内万里子先生とともに行われました。

 

プレゼンテーションと講評、審議の時間を経て、

大賞は今井祥子さん(油画コース・版画ゼミ4年生)の銅版画作品「繋がる可能性」に、準大賞は化学繊維を用いて制作された白井桜子さん(油画コース・3年生)の「変容すること」に決定しました!👏

 

↑1枚目今井祥子さん「繋がる可能性」、2枚目白井桜子さん「変容すること」

 

 

人と歩む企業、人を感じる作品

 

JOHNAN株式会社は2022年で60周年を迎えた、生活に欠かせない電子部品や機器の企画・設計・製造を行う企業です。

 

今回テーマとなったのは、そんなJOHNAN株式会社の「レゾンデートル(存在理由)」。

このレゾンデートルの中心となる「かこむ・みる・つくる」という理念をそれぞれが解釈し、作品制作に取り組みます。

 

大賞の今井さんの作品は、見ていると作品のなかにある「呼吸」に惹き込まれました。

 

モチーフとなった編み目が刻む一定のリズムと、版画の職人的な側面が重なることで、作り手の呼吸する、静謐な時間そのものを感じているのかもしれません。
動作自体は機械のように正確に、けれど人が行うからこそ生まれる微かな抑揚に、どこか落ち着きを感じます。

 

シックな額装も相まって、独特の落ち着きを持つからこそなのか、搬入時、今井さんの作品をどこに配置するかなかなか決まらなかったのも印象的でした。

 

この作品で用いられた「メゾチント」という技法は、一度版の全面をベルソーという道具で目立てて細かな傷を付け、その傷を平らにならすことでインクがつかない部分をつくり、図柄を描きます。

傷が前提にある技法というのも、なんだか人間的です。

 

CEOの山本さんは講評のなかで何度か「働く社員の姿を思い浮かべた」とお話されるシーンがありました。

 

そうした、現場で働く従業員を大切にされる姿勢、レゾンデートルとして掲げられたこれからの子どもたちを思う気持ちが、今井さんの人の呼吸を感じる作品に重なったのではないでしょうか。

 

企業とともに考えられる人

 

そして参加者のみなさんにお話をお聞きしていると、企業から与えられたテーマを日々の制作に引き付けながら、今回の作品に取り組んでいる方が多いように感じました。

 

 

 

「今回は企業という他者からテーマが与えられていましたが、普段やっているモチーフや素材について考える、というのも他者に向き合うことなので、あまり違いがありませんでした」とお話してくださった方も。

 

与えられた言葉から自分との接点を見つけていくことで、表面的な理解だけではなく、実感のこもった作品が並んでいます。

 

手を動かしながらテーマに向き合い、自分自身から正直に出てくる反応をとらえた過程を残す作品もあり、必ずしもテーマを正確に表現する必要はなく、「企業とともに考えられる人」であることが、もっとも大切なのかもしれないなと思います。

 

 

変化しつづけるための挑戦

 

それと同時に、日々の制作にいつもとは違う風が吹き、公募展に参加したからこそのさまざまな発見もあったようです。

 

準大賞の白井さんは夏の学生作品展でも同じ技法で制作されていましたが、「最近は停滞していた」と語ります。

 

いつもと違う先生に講評をもらい、苦手意識を持っていた表現を言葉にする作業が、これまでの制作を振り返る時間にもなっていったようです。

造形や素材へのこだわりが作品とプレゼンテーションを通して審査員のみなさんにも伝わり、その姿勢が評価されていました。

 

 

椿先生からの最後の挨拶では、こうした場に作品を出せば必ずヒントが落ちてくる、作品を覚えているから別の機会に会ったときにも「あのときの」から話がはじまるんだ、というようなお話がありました。

 

竹内先生からは、アーティストの価値は10年単位でしかみることができない、という言葉もありましたが、活動を続けていくために、停滞したときにも自分自身や作品を変化させつづけようとする大切さを感じます。

 

今回のプロジェクトに参加されていたみなさんの作品は、今後どのように展開していくのでしょうか。

来年に行われる卒業制作作品展などにも注目です!

 

 

 

 

 

取材記事の執筆者

文芸表現学科3年生

出射優希(いでい・ゆうき)

兵庫県立西宮北高校出身

 

大学2年生のときから書きはじめた、この「KUA BLOG」での美術工芸学科に関する取材記事のシリーズが、学内外で人気を博してきた。
個人で記すノンフィクション作品も含めて、地に足をつけ、ゆっくり呼吸しながら取材対象を受けとめ、言葉を深く彫り込んでいくプロセスの切実さに定評がある。
「逸脱する声 京都芸術大学美術工芸学科教員展」(2022年6月に開催)では、文芸表現学科の学生たちが23人の専任教員にインタビューした声の数々も作品として発表されたが、そのうち最多の8人へのインタビューとそのまとめを担当した。

 

 

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