キャラクターデザインコース

ゼミ通ヒーローズ Vol 35 吉田未来の卒制ドキュメント「コントローラー作っちゃいました」編

 

「ゼミ通ヒーローズ」とは、京都芸術大学キャラクターデザイン学科ゲームゼミの学生の研究や取り組みについてピックアップし、担当教員村上との対談形式で綴る少々マニアックなブログ記事となっています。

 

 

今回は、2021年度学生優秀賞を受賞した吉田未来さんの活動内容をお伝えします。

卒業研究でゲームを制作している中で、ソフトウェアだけでなくハードウェアから作ってしまう彼女のバイタリティ溢れる制作工程をお楽しみください。

 

吉田未来さん

 

2021年度学生優秀賞受賞

 

村上

まずは、このたびの優秀学生賞受賞おめでとうございます!

 

吉田

ありがとうございます。

 

村上

優秀学生賞の報告と同時に、吉田の卒業研究に対してメイキングドキュメンタリー的な感じで定期的に情報を発信していこうかなと思ってるんだけど、まず最初は優秀学生賞の話から聞いていこうかな。

GPAが高かったりクリエイティブ面で評価されたりと、色々受賞の理由はあるんだけど、何か普段から目標にしてることとか、気を付けてることってあるの?

 

吉田

創学の授業は手を抜かないようにするとか、ですかね。出席を普通にするとか(笑)、特別何か頑張ったという記憶もないんですけど…。

 

村上

プレゼンが評価されてるのかな。もちろん学力も高いし作風も独特のものがあって、総合的に高評価が得られてるんだけど、授業中のプレゼンを見てると、普段の大人しそうなイメージから豹変するギャップが面白いなと思って。

 

吉田

プレゼンは苦手じゃないですね。割と得意かも知れないです。

高校の時は生徒会で前に立って話すことが多かったので、そういう経験も大きかったかも知れないです。

企業の面接の時も、実際には緊張でガチガチなんですけど、面接官の方から「余裕そうだね」って言われることが多くて。でも内定をいただいたゲーム会社の方からは「緊張してるけどよく頑張ってるね」って言われて、「あ、見抜かれたな」って思いました(笑)

 

村上

大手ゲーム会社の内定もとれたことだし、あとは卒業制作に専念するだけだね。

 

卒業研究に向けて

 

村上

ちなみに吉田はこの「ゼミ通ヒーローズ」の収録って何回目だっけ?

 

吉田

2回目ですね。以前はホラーゲームとか恐怖演出について話してました。

 

ゼミ通ヒーローズvol.17「吉田未来と恐怖演出について語るの巻」

 

村上

三年生の展示会用にもホラーゲームを作ってたけど、今度の卒業制作では打って変わって全然違うジャンルのものに挑戦と。なんでホラーにしなかったの?

 

吉田

好きなものを作りたいなって思ったときに、好きなものがホラーの他にもう一つあって、最後にそれを作りたいなと思ったんですよ。

 

村上

なるほど。今回はコントローラーを自力で作るところからゲーム企画をスタートさせるということなので、その点について詳しく聞きたいな。

 

吉田

はい。経緯としては、私がゲームの中で実行したかったアクションが「本を閉じる」というものなんですけど、この動作を再現しようと思ったら、既存のコントローラーでは表現できないなと思って。じゃあどうすれば私の企画内容をプレイヤーに提供できるかって考えて「コントローラーから作ろう」ってなりました。

 

村上

ないから創る。その情熱がすごいな。

 

吉田

ありがとうございます。まずそのコントローラーは本の形をしていて、本を閉じることであるものを捕まえるっていうゲームになってます。

制作プロセスとしては、「REVIVE USB MICRO」っていうモジュールを使ったんですけど、これはボタンを押したときに、それをキーボードのボタンに変換してくれるんです。ここにボタンをハンダ付けしてコントローラーを作りました。

 

「RIVIVE USB MICRO」

 

吉田

そしてUNITY側でボタン入力を検知して、どのボタンが押されたらどのアクションを実行するかっていう形で変換していったんですけど、それだと配線の整備の面で色々問題が出て来てしまって…。悩んだ末に市販されてる既存のコントローラーをバラして研究してみました。そしたら中身は配線とかじゃなくて全部センサーで感知するようにできていて、この仕組みを使った方がやりやすいし強度も高いので、同じように作ってみようと思って試行錯誤しました。

 

村上

皆がゲームの企画書を作ったりイメージボードを描いたりしてる隅っこで、ずっと基盤にハンダ付けしてたね。

 

吉田

この基盤自体は特に問題もなく分かりやすかったんですけど、配線の強度とか接触の部分のノウハウがなかったので、そんな技術不足もあってすぐにグラグラになってしまったり反応しなくなったりしましたね。

あとはボタンも結構ネットとかでも買うんですけど、ものによっては押し心地が堅かったり、入力の仕方にも色んな種類があって、一旦押したら沈んだままになってるものもあったり…とにかく知識がないので片っ端ボタンを買って、実験を繰り返してましたね。分からないまま始めたので後が大変でした(笑)。

 

村上

企画がスタートしたのはいつからだったかな。三年生の中盤あたりから、Result展(3月に開催されたゲームゼミの展示会)に向けてのホラーゲームの制作と同時並行でこの基盤作りを始めてたよね。

で、年末くらいに「こういう企画やりたいんですけど」って提案されて、企画書を二度見した覚えがある(笑)。ほんとにやるの?って。

 

吉田

そうでしたね。3Dゲームも作ったことなかったし、コントローラーも作って、色々詰め込んでたので…。

 

blenderのスクリーンショット

 

吉田

そのあと外見は3Dプリンターで出力しようと思っていて、今blenderでモデリングをしています。

先日仮のデータの出力ができたので、そこで強度の検証とかデータの不備の洗い出しとかをやって、その修正ができたら本番用のデータを出力しようと思っているところです。

 

村上

Blender自体は独学で?

 

吉田

一年生の頃にCGの授業を受けていて、3dsMaxの基本操作は分かってたので3dsMaxでも良かったんですけど、blenderの方が軽いので、独学で勉強しながら使えるようになりました。モデリングもモーションもblenderの方が感覚的な気がしました。

 

村上

授業で習ったツールはあるのに、実行したい企画に合わせてツールを選んで独学でやってしまうあたりも、クリエイティブの面で凄く理想的な姿だね。

ここ最近のゲームゼミの作品って、もうゲームっていう狭い範囲から「遊び」に拡張して枠からはみ出そうとする傾向があるよね。「ゲームとは普通こうだ」って固定概念を意図的に取っ払っていく感じがする。

特に今年の四年生は負けず嫌いなメンバーが揃ってるし、切磋琢磨しながら見たこともないものを作ろうって姿勢がかなり強い。すごく良い関係性が築けてるなって思う。

 

吉田

凄い人たちが集まってるし、卒業制作もみんな凄いものを作るんだろうなって思ってるから、ネタが被らないようにっていうか、違う方向性で進みながらも自分の色を出せたらいいなって思ってます。

 

村上

「決定ボタンを押したら本を閉じたことにする」っていうイベント処理ではなくて、実際に「本を閉じる」インターフェースを再現したかったがために、コントローラー作りから企画を始めたわけだけど、ここまでした理由は?

 

吉田

それは、単にこれが卒業制作だからです(笑)。時間がたくさんあるし、どうせなら最後にゲームで感覚的に遊べるものにしたいし、その部分を大事に出来る遊びを作りたかったんです。なので、そんなに悩むこともなく、既存のものにそういうデバイスがなかったので、じゃあ作るか、みたいな感じでした。

 

村上

試作品を作ってみてどうだった?

 

吉田

本を開閉する際のジョイントが余りにも細くて、今にも折れそうだったので、他の玩具を見て構造を研究してます。

 

村上

硬い針金とか真鍮を入れたから良いってもんじゃないもんね。

 

吉田

そうなんです。3Dプリンターで細長いものを作ると曲がってしまうんですよ。なのでアクリルの棒を中に入れて蓋をするイメージでやってみようと思ってます。

 

村上

試作品の段階で色んな問題点を炙り出しておいて良かったね。いきなり本番用を作って展示して、子供が力任せに触って壊れるなんてことになったら悲劇だしね。

 

吉田

ビジュアル的にも、子供が見たら絶対触りたくなるだろうし、かなり無茶な使い方をすることも想定しておかないといけないですね。

 

村上

今回ゲームエンジンはUNITYということで、UNITYのオペレーションは慣れてる?

 

吉田

プログラミングの授業は前期も後期も100点いただいたんですけど、必死だったからそんなに出来てる気がしてなくて…。

 

村上

100点…って、そう簡単に付けられる点数じゃないよ(笑)。でも技術面に対する興味とか、何か感覚で理屈が理解できてたとか、そういう素養はあったのかも知れないね。プログラムの構造が直感的に見えてるとか。

 

吉田

いや、それは全くないです。そういう思考に切り替えるのに物凄く時間がかかるんですよ。三年生のときに作ってた2Dのアドベンチャーゲームよりは、今の3Dの方がUNITYの本領発揮って感じで使いやすいので、今は少しずつ掴めてきたようにも感じます。

 

村上

では、プログラミングも含めゲームの中身についてはまた日を改めてお送りしたいと思います。

 

つづく

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