- 2019年12月27日
- 日常風景
ゼミ通ヒーローズvol.17「吉田未来と恐怖演出について語るの巻」part1
ゼミ通ヒーローズ Vol.17
吉田未来と「恐怖演出」について語るの巻 Part1
今回のゼミ通ヒーローズは、村上ゼミ2年生の吉田未来さん(兵庫県立西脇高等学校出身)をピックアップします。
村上
ではまず定番の質問から。吉田はどうしてこの大学に入ったの?
吉田
元々は東京の美大と京都造形で迷ってたんです。なぜか自分の中では最初からこの二択に絞られてて、両方のオープンキャンパスに行ったんですけど、京都造形大の方が色んなことが学べて視野が広がりそうだったから。
実際に京都造形大のオープンキャンパスに行ってみたらもう心を奪われてしまいました(笑)最初はホラーゲームのコンセプトアートを描く人になりたくて。
その絵に興味を持った切っ掛けっていうのが、ホラーゲームの設定資料集だったんですよ。
村上
何のゲーム?
吉田
PlayStation4の「サイコブレイク」です。
この設定資料集を見た瞬間にスイッチが入ったというか。ゲームそのものよりも設定資料に惹かれました。
村上
「サイコブレイク」だったら割と過激なスプラッター描写とかゴア表現が盛り込まれてるけど、そういうのが好き?
吉田
はい。クリーチャーの気持ち悪さというか、肉感の表現とかがすごく好きで。
村上
クリーチャーが好きなんだ。血飛沫描写よりは異形のものに魅力を感じてるのかな。
吉田
そうですね。
村上
異形のものっていうことはファンタジー系RPGにわんさか登場するけど、そういうのは違う?
吉田
もっと禍々しいというか…、今日持ってきてるんですけど、サイコブレイクの設定集。
村上
(設定集を見ながら)うーわ。これは…画像をアップできないのが残念だけど、うーわ、このグロテスクな肉感とか、このぷにぷにした感じとか、うーわ。著作権以前に、グロテスクすぎてここに写真が載せられない…。
思春期にこういうのを見てて、親御さん心配しなかった?
吉田
これ、親に買ってもらいました(笑)
村上
親っ!(笑)
吉田
誕生日プレゼントに(笑)
村上
親っ!!(笑)
吉田
親が元々こういうのが好きだったんですよ。特に母親がホラーに寛容な人だったので。
妖怪とか好きで、小さいころからホラー系の番組をよく一緒に観てました。
村上
じゃ、あれかな。自分もホラーものは大好物なんだけど、思春期が海外のスプラッターブームのど真ん中だったんだよね。80年代の頭から半ばまで、ゾンビ映画が大ヒットした時代でもあるし、
他には「13日の金曜日」のジェイソンだったり「エルム街の悪夢」のフレディ、「ハロウィン」のブギーマンといった
ホラー映画のキャラクターが大人気で、血飛沫の描写や人体損壊みたいなゴア表現が流行ってた。
吉田
うちの親もそのくらいの世代だと思います。
ちなみにこれ、「サイコブレイク2」になるとすごく絵が綺麗になってるんです。なんか、死体を美しく芸術品として扱うサイコパスなキャラクターが出てくるんですけど、それがいまいち好きじゃなくて…。
村上
1作目の頃のB級感の方が良かったっていうこと?安っぽさが逆に怖く感じるとか。
吉田
そうなんですよ。なんでこうなってるのかっていう理由も分からなくて気持ち悪いっていう感じが良かったのに、
変に理由付けをされると理解が出来て、理解できなかったのが怖さだったのに妙な納得感があって冷めてしまった感じがします。
村上
最初にやったホラーゲームって何?
吉田
Wiiの「呪怨」でしたね。ビックリ系の仕掛けが多くて何度も驚かされました。
村上
さっき言った80年代のスプラッターものだとジャンプスケアっていって所謂音で驚かせるビックリ系の演出手法が多かったんだけど、「呪怨」って音で驚かすよりも不安感を煽って精神的にジワジワと追い詰めていくタイプじゃない?
何かが襲ってくる以前にその佇まいや緊張感そのものが恐ろしい。
吉田
ゲームの方は、そういうジャパニーズホラー的な怖さではなくて、ビックリさせる感じのものがメインでしたね。
村上
ホラーゲームの走りとしてファミコンで「スウィートホーム」っていうゲームがあったんだけど、知ってる?
吉田
知らないです、初めて聞きました。
村上
伊丹十三が制作した80年代終盤の映画をモチーフにしたものなんだけど、これがファミコンゲームとして登場して、当時はホラーゲームとしてかなりレベルが高くて、チープなドット絵の画面でありながらとにかく怖いってことで当時は有名になった。
最近のものでいうと、さっき話していた「サイコブレイク」を自分もやってみたんだけど、あれ気持ち悪くならなかった?ゴア表現とかそういう話じゃなくて。
吉田
カメラワークですよね。
村上
そう、初めてゲームで遊んでカメラ酔いを体験した。「バイオハザード」だと、初期の頃は固定カメラで、それも防犯カメラの映像みたいな三人称視点だったから状況が分かりやすくて良かったんだけど、「サイコブレイク」はシネマスコープの画角になってて、1:2.25の横長の画面比率で、画面の中央には主人公キャラクターの背中がドーンと大きく表示されるので背景の視認性が悪い。視認性が悪いから周囲を見渡そうとカメラをグルグル回してるうちにカメラ酔いして気持ちが悪くなってくる。気分が悪くなることを想定してこの構図にしたならなかなかの演出力だなとは思うけど…。
吉田
でも酔っちゃうからゲームに集中できない…。
村上
ゲームじゃなくて、ホラー映画だったらどう?印象に残ってる作品はある?
吉田
映画だったら「残穢」が怖かったです。今一人暮らししてるからっていうのもあるんですけど、なんかこう、明確な何かは分からないけど、でも絶対に逃れられない何かがそこにあるっていうのが怖いなと思って。
村上
Jホラー特有の怖さだね。
吉田
私、事故物件とか好きでよく調べるんですよ。
村上
は?…何やってんの(笑)
吉田
なんか、好きなんですよね。まず自分が安全地帯にいるかどうかを確認したくて。
と同時に興味本位で「あの家であんなことがあったんだ」って調べるんですけど、なんかロフトがある家ってヤバいんですよね。**を*****だから。
村上
な、なるほど。文字起こししにくいけど、まぁいいか…。
吉田
内見した時に、過去に**があった家を見させていただいて、
凄く綺麗で分からなかったんですけど、その隣の家でも**があったみたいで。
村上
この辺で?
吉田
そうです。やっぱりそこだけ家賃も安いんですよね。
村上
段々何の話だか分からなくなってきた。映画の話だったね。海外の作品はどう?
吉田
最近だと「MAMA」が怖かったですね。
村上
あれは良く出来てたね。あの監督さんの最新作はスティーブン・キング原作の「IT」。
かなりホラーを心得ていらっしゃる感じの人。
吉田
え、そうだったんですか!?「IT」は、絵の中から出てくる人が怖かったですね。
村上
モディリアーニの絵ね。確かにあの絵は怖く感じる。「IT」自体、ここ最近のホラー映画の中ではかなり頑張ってた方だと思うね。原作の人気が高いから観る前はかなり警戒してたんだけど「MAMA」の監督だと聞いて「よく分かっていらっしゃるな」と納得。
ただ「MAMA」に限らずホラー物って全体的にそうなんだけど、序盤は状況が理解できない恐怖があって、終盤になるに連れてバックボーンが見えてきて、理解ができた瞬間に急に面白くなくなる。
吉田
「なーんだ、そんなことだったのか」ってなって冷めますよね。やっぱり「分からないから怖い」んですよね。
村上
個人的には「死霊のはらわた」っていう、若干21歳の監督が作った超B級映画が好きだったんだけど、知ってる?
吉田
知ってます。
村上
その監督は後に「スパイダーマン」を制作したサム・ライミっていう人なんだけど。
吉田
えっ!知らなかった!
村上
B級映画は予算がないから有名な俳優が使えない。つまり有名人がいないから次に誰が死ぬか分からない。
トム・クルーズが出て来たら「絶対この人は死なない」って分かっちゃうよね。その予想のつかない感じとか得体の知れないところがホラー映画の面白いところなんだと思うね。
「死霊のはらわた」も意味不明な状況の怖さとか先の読めない展開が面白くて我々世代ではかなりヒットしてた。
「サイコブレイク」も序盤20分くらいが怖かった。何が起きてるのか全く分からなくて。
吉田
あれは怖いですよね。チェーンソー持ったサディストに見つからないようにこっそり進むところが。
絶対勝てない相手っていうのが怖いですよね。逃げるしかないっていう。
村上
あの絶望感ね。映画だったら「ターミネーター」とか「ノーカントリー」とか。
絶対に倒すことが出来ない相手が、やっつけてもやっつけても立ち上がってどこまでも追いかけてくる。
「クロックタワー」のシザーマンもそうだしね。殺せないから障害物を配置して進行を遅らせる事しかできない。
吉田
相手が何者かよく分からないけど、とにかくヤバそうだから逃げるしかないっていう状況作りがうまいですよね。
村上
「バイオハザード」を初めてやったときは、そのヤバさに加えて、あの少ないポリゴン数と低い解像度で
画面が汚くて、あのぎこちないモーションでゆっくり迫ってくるゾンビが逆にリアルに感じて怖かった。
吉田
少ないポリゴンとか粗いドット絵みたいに情報が欠落してるから、脳で情報を補完するので余計に恐怖のイメージが膨らむんですよね。
Part2に続く