染織テキスタイルコース

人と染織の在り方が、道行く人も惹きつける 藍染×西陣織プロジェクトが行なった展覧会【文芸表現 学科学生によるレポート】

違うジャンルを学んでいても、芸術大学でものづくりを楽しむ気持ちは同じ。このシリーズでは、美術工芸学科の授業に文芸表現学科の学生たちが潜入し、その魅力や「つくることのおもしろさ」に触れていきます。

 

文芸表現学科・3年生の出射優希です。だんだんと暖かくなってきて、春の花が咲き始めたことになんだかほっとしています。今回訪れた展覧会はまだ少し寒い頃でしたが、春の訪れを感じる、あたたかい空気に包まれていました。

 

藍染と西陣織の融合に挑戦

 

ONE AND ONLY/gallery approachにて3月3日から3月7日まで開催されていた、「藍生かし直し展」。

藍染作家である本学教員の梅崎由起子先生の企画からスタートした、藍生かし直しプロジェクトの活動風景やプロセス、実際に作られた布、プロダクト(製品)などを見ることができました。

 

・参加メンバー

王 耀林(美術工芸学科染織テキスタイルコース在籍)
徐 素平(大学院美術工芸領域 在籍)
森國 文佳(大学院美術工芸領域 在籍)
安田 伸裕(通信教育部美術科染織コース在籍)
大西 香菜子(美術工芸学科染織テキスタイルコース2021年3月卒業)
鈴鹿 萌子(通信教育部美術科染織コース2020年3月卒業)
梅崎 由起子(本学専任講師)

 

 

藍生かし直しプロジェクトは通学課程や通信の在学生・卒業生から、藍染に関心のある7名で2021年の10月に活動を開始。藍型染で作品制作を行う梅崎先生の織物への関心が、プロジェクトの原点になっています。

たくさんの方の後押しがあり、今回のような形でプロジェクトになったのだそうです。

 

 

展示の場で、藍と西陣の融合が起こす出会い

 

メインとして大きく展示されていたのは3つの西陣織です。

ギャラリーの道路に面した大きな窓から作品が見えるため、偶然通りがかったという方がたくさん訪れ、作り手同士の新たな交流も生まれていました。

 

写真右から「loop」「藍咲く時」「bubble(吹き出し)」と名付けられており、「loop」「bubble(吹き出し)」は梅崎先生のデザイン、「藍咲く時」はメンバー全員の藍染作品をデザインに組み込むという形で作られています。

デザインはひとりずつの持つ個性を活かし合えるバランスにするため、何度も試行錯誤したのだそうです。

 

西陣織は京都の伝統的な織物として、作業工程は分業となっています。

企画からデザイン、そして糸を藍で染める工程を「藍生かし直し」の皆さんが担当し、デザインから織るためのデータにする作業、力織機を使い織る作業は西陣織の職人の方が行います。

 

「藍の華が咲く」様子を、メンバーの個性に重ねて

 

デザインのもとになった、皆さんの作品も並べられていました。

それぞれの日頃行う制作の地続きで、藍染に取り組んだ作品はどれもほんとうに素敵です。

 

編み物、型染、板締め絞りなど、使う技法の選択はもちろん個性ですが、同じ藍で染められた糸や布が、作り手の分身としてそこにいるような佇まいでした。

 

「藍咲く時」というタイトルは、藍染の制作工程からきています。

藍染に使う液を作ることを、藍建て(あいだて)といい、この染液を作ることだけでもすごく手間ひまがかかる重要な作業です。

 

染液が染められる状態になった頃に、表面に浮かんでくる泡を「藍の華」と表現するのだそうです。

伝統的な技法には、どこか日本語のうつくしさも感じますね。

 

↑藍染に使われる材料

 

藍染の製品がいつか日常に……

こちらは型染に使われた型と、板締め絞りで使われる布を挟む板、そして今回のプロジェクトで制作された西陣織を用いたカバンです。

↑大きさはノートパソコンが入るくらい。

 

カバンを実際に持たせて頂いたのですが、軽くてしっかりしたつくりで、特別なお出かけにも、普段使いにも幅広く使えそうです。

今回販売はされていませんでしたが、今後どのようにプロダクトにできる可能性があるのか、想像がふくらむ作品でした。

生活のなかで、習慣的に多くの人が藍染や西陣織に親しむ日はくるのでしょうか……?

 

 

「生かし直し」に取り組む姿をみて

庶民の文化としてあった藍染と、高貴な身分とされる人々に親しまれた西陣織の融合。

二つの紡いできた歴史が、この時代に型染を行う梅崎先生の出会いから交わり、プロジェクトメンバーの皆さんをはじめ、ギャラリーに訪れた多くの人をつないでいるのが印象的でした。

今回の展覧会が多くの方を惹きつけたのは、きっと藍の色の美しさや、西陣織の精巧さだけではありません。

そこでものをつくり、生み出していこうとする「人」の存在から、魅力が立ち上がっていたからではないでしょうか。

どのように「藍生かし直し」がなされていくのか、一旦半年間の活動は終了しましたが、染織と伝統的な技法について、今後の展開にも注目していきます!

↑撮影:中尾あづさ

 

 

取材記事の執筆者

文芸表現学科3年生

出射優希(いでい・ゆうき)

兵庫県立西宮北高校出身

 

1年生のとき、友人たちと共に、詩を立体的に触れることができる制作物にして展示した展覧会「ぼくのからだの中にはまだあのころの川が流れている」を開いた(バックス画材にて)。

自分のいる場所の外にいる人とつながるものづくりに、興味がある。また、「生きること」と直結したものとして「食べること」を捉え、それを言葉で表現している。

 

 

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