写真・映像コース

住居を離れることをすべて「たび」と言った。  写真・映像コース3年生による展示「旅と文学」の準備風景 【文芸表現学科学生によるレポート】

違うジャンルを学んでいても、芸術大学でものづくりを楽しむ気持ちは同じ。このシリーズでは、美術工芸学科の取り組みの現場に文芸表現学科の学生たちが潜入し、その魅力や「つくることのおもしろさ」に触れていきます。

 

文芸表現学科・3年生の出射優希です。今回は写真・映像コース3年生の授業を見せていただきました。

 

テーマとなっているのは「旅と文学」

京都は紅葉シーズン🍂で、旅行客も増えています。私も「旅がしたい!」と暴れていたのですが、どうやら遠出だけが旅ではないようです。

 


 

 

3年生初の学外展示「旅と文学」が12月6日より開催!

 

写真・映像コースの3年生26名によるグループ展「旅と文学」が、12月6日(火)〜11日(日)まで、河原町三条にあるギャラリー、MEDIASHOPにて開催されます。

 

 

 

「旅と文学」は、2016年から継続して、3年生の学外展示で扱われてきたテーマです。

 

現在のカリキュラムでは、「写真・映像表現V/創造表現VE」(担当教員: 高橋耕平先生、片山達貴先生、前田耕平先生)という集中授業のなかで、後期の約3分の2の期間を使って、制作から展示までを行います。

 

今回は、それぞれの作品の過程や展示計画を共有する、中間発表におじゃましました!

 

 

 

卒展前の助走のように考える機会

 

「旅と文学」では、それぞれが文学作品を選び、一冊の本から思考を拡げて作品制作を行います。

選ぶ文学作品のルールは、作者が故人であること。

テーマの受け止め方や作品の形式、展示方法は学生にゆだねられています。

 

受け止めたことを写真や映像でどのように表現していくのか、26人分の解釈やプロセスがあり、自身の制作で考えを深めてきた3年生だからこそ取り組めるテーマかもしれません。

 

また、この展示は4年生で取り組む卒業制作を前に、これまでの制作を振り返る機会にもなっているようです。

 

 

 

他者の作品とのバランスも考える

 

写真や映像を通して自分のまなざし(なにをどんなふうにみているのか)を作品にしながら、文学作品はそこへ「他者のまなざし」を呼びこみます。

 

授業の担当教員である片山達貴先生は写真・映像コース(以前の現代美術・写真コース)の卒業生。

学生時代には実際に「旅と文学」の第1回目に参加し、人の(文学)作品と自分の作品の関係性をどのように見せるか、鑑賞者は最終的に「旅と文学」というタイトルに紐づけて観るからこそ、バランスの取り方に悩んだと言います。

 

今回発表のなかであげられた本では、『グレート・ギャツビー』『若草物語』『星の王子さま』『友情』など、耳にしたことがあるタイトルも。

鑑賞者が元になった文学作品に触れていれば、感じ方も変わってきそうですね。

 

 

 

 

散歩も旅、離れれば旅、すべて旅

 

他にもさまざまな作品がとりあげられていましたが、文学へのアプローチの仕方は「旅」という言葉の受け止め方にこそ現れていたように感じました。

 

文学作品の舞台になった、または言葉から立ち上がる風景を求めて現実の土地を「旅」して想像とのギャップを感じる人もいれば、時代も国も違う言葉の世界へ「旅」をして、現在を見つめ直す人もいます。

 

ですがみなさんの発表を聞いて共通しているなと思ったのは、今までと異なる視点やあたらしい方法から、ものごとを見つめようとしているのではないかということです。

 

広辞苑の第6版で【旅】と調べると、

<住む土地を離れて、一時他の土地に行くこと。旅行。古くは必ずしも遠い土地に行くことに限らず、住居を離れることをすべて「たび」と言った。>とあります。

 

何気ない散歩も旅になれば、広い意味での住居(自分の安心できる場所、眠る場所、帰る場所、etc.)を一時離れることも、旅になるのです。

 

「どこにも行けない!」と漠然と思いがちな私にはとても大きな発見だったのですが、みなさんはどうでしょうか?

気がついていないだけで、私たちは毎日意外と旅をしているのかもしれません。

 

そうして意識的に「旅」をすると、そもそも自分の安心できる場所ってなんなのだろうと考えるきっかけにもなれば、今まで見えていなかった風景、周囲の人の表情や気持ちが見えてくるきっかけにもなりそう。

 

「旅と文学」、考えるほど、おもしろいテーマです。

 

 

いまの自分を知る機会に、「旅と文学」

 

あたらしいことに取り組むと、失敗の不安が頭をよぎったり、恥をかいたり。

嬉しい出来事ばかりではないなかで、旅に出たみなさんの勇敢さを展覧会終了まで見届けたいですね。

 

それぞれの方法で旅をした26名が、どこへ帰ってきたのか、はたまた帰ってこられなかったのか……。

12月6日からはじまる会期が楽しみです。

 

入学まで半年を切った0年生も、高校生も、在学中の1・2年生も、今の自分を知る機会として、「旅と文学」に自ら取り組んでみるのもいいかもしれません。

 

 


 

美術工芸学科 写真・映像コース

3年生学外展示「旅と文学」

会期|2022年12月6日(火)~12月11日(日)

会場|MEDIA SHOP

京都府京都市中京区河原町通三条下る大黒町44 VOXビル1F

 

★展示「旅と文学」の最新情報はこちらをご確認ください。

https://twitter.com/tabito_bungaku

 

MEDIA SHOP

 

 

取材記事の執筆者

文芸表現学科3年生

出射優希(いでい・ゆうき)

兵庫県立西宮北高校出身

 

大学2年生のときから書きはじめた、この「KUA BLOG」での美術工芸学科に関する取材記事のシリーズが、学内外で人気を博してきた。
個人で記すノンフィクション作品も含めて、地に足をつけ、ゆっくり呼吸しながら取材対象を受けとめ、言葉を深く彫り込んでいくプロセスの切実さに定評がある。
「逸脱する声 京都芸術大学美術工芸学科教員展」(2022年6月に開催)では、文芸表現学科の学生たちが23人の専任教員にインタビューした声の数々も作品として発表されたが、そのうち最多の8人へのインタビューとそのまとめを担当した。

 

 

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