文芸表現学科

由利耕一さんによる作品講評

 
辻井ゼミでは、半年に1つ、100枚以上の小説作品を書き上げることを目標にしています。
この日は、学生たちが書いた(あるいは書いている途中の)作品について、特別講師の由利耕一さんに講評をしていただきました。
 
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由利さんは、長年講談社で「AKIRA」や「攻殻機動隊」などのマンガを担当して来られた編集者です。
 
「僕は小説の編集者ではないから、良いと思った小説にはとしか言えないよ」と由利さんはおっしゃいます。それでも<物語の魅力>という点で、小説もマンガも、共通するものがあります。魅力のない作品はどうして面白くないのか、それぞれの作品について具体的にお話してくださいました。
 
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ある学生の小説では、作中人物がはじめて登場する場面で、詳しいプロフィールを説明する叙述がありました。それについて、由利さんはこうおっしゃいます。
 
「最初は人物の説明なんて必要ないんだよ。実際に興味のない人のプロフィールって知ろうと思わないでしょ。それよりも、読者がこの人物に興味を持つように、いま何が起こっているかを描写しないと駄目だよね。もっと読者を信頼して書くべきだよ」
 
また別の学生の小説では、民話をベースにした若い男女の恋愛が描かれていました。作者である学生は、民話や恋愛を詳しく調べても、ずっと迷ったままだと言います。それに対し、由利さんはこう答えます。
 
「まだこの小説のリアリティになっていないから、読んでいてもよく分かんないんだよ。小説はあくまでも嘘だからね。実在することだけを書けばいいわけではなくて、物語のなかの人物たちに本当にリアリティのあることが書かれていたとき、ただの嘘が小説になるんだよ」
 
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数々の作家のそばで作品を読み、編集してきた由利さんの言葉は決して優しいものではありません。なかには打ちのめされて、言葉少なになる学生もいました。そんな学生の姿を見て、僕も自分の学生時代を懐かしく思い出しましたが(笑)、作品を読んでもらって、真摯なアドバイスをもらえることはとても貴重なことなんだとあらためて感じます。
 
 
(副手・鵜飼慶樹)

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