キャラクターデザインコース

ゼミ通ヒーローズVol.56 小林咲希、柴田晃太郎、パクイニョン、水野優と脱出ゲームについて語るの巻 Part2

※「ゼミ通ヒーローズ」とは、京都芸術大学キャラクターデザイン学科ゲームゼミの学生の研究や取り組みについてピックアップし、担当教員村上との対談形式で綴る少々マニアックなブログ記事となっています。

 

ゼミ通ヒーローズVol.56 小林咲希、柴田晃太郎、パクイニョン、水野優と脱出ゲームについて語るの巻 Part1の続き

村上

では今度は映像と音声についても話を聞いていこうかな。

 

水野

イニョンちゃんがCGで映像を作成して、そこに私が音を加えていきましたね。

 

イニョン

映像は二種類あって、二つのモニターに同時に映し出されてました。一つはカウントダウンの映像ですね。沈んでいく潜水艇と深度メーターがあって、あと何分後に水圧で潰れるかがプレイヤーに分かるようになっています。もう一つは、未知の生物の映像ですね。ここは捕獲の映像とか途中の交流イベントとか最後に逃がす場面とか、いくつかの素材を用意しておいて、ゲームの進行に合わせてリアルタイムで制御して再生していました。

 

村上

今回はリアルタイムでの映像処理が新しい挑戦で大変だったね。

 

イニョン

バラバラのムービーデータを状況に合わせて再生すると、途中にウィンドウの切り替えが入ってデスクトップが見えて没入感が損なわれてしまうので、全てUnity上で再生して、コマンド入力で自然に映像が切り替わるように制御してました。

 

村上

他に映像関係の作業で大変だったところは?

 

イニョン

本番中は、私はずっと会場内のテーブルの下に隠れていて、そこで映像の操作をしていました。全16公演分、ずっとテーブルの下で息をひそめるのがキツくて…(笑)

テーブルの下に隠れてUnityのオペレーションをするイニョンさん。

 

小林

探索中に暗幕をめくろうとするプレイヤーが結構いるので、今めくられたら困るって所には行かないように、キャストの私がカバディみたいに動いて守り通しました。

 

村上

音響の制御ってどうやってた?

 

小林

私は船長役だったので、マイクとイヤホンを付けて、スマホを通して皆に声が届くようにしてました。

 

水野

LINE通話でスピーカーONにして、船長のセリフを別室で聞きながら制御してました。

 

イニョン

私はテーブルの下に隠れてたので(笑)、直接船長と案内人のセリフを聞きながら映像を操作してました。

 

小林

LINE通話で別室の人に声を届けるのはマイクがあるから良いとして、イニョンちゃんは部屋の中の暗幕の下にいたから、両方に聞こえるように常に声を張りっ放しでした。とにかくプレイヤー以外にも、密室内の状況が全裏方のスタッフに伝わるように声を出さないといけないので。

進みの遅いプレイヤーに対してはフォローして、逆に速いプレイヤーの場合はこちらは特に何もすることがないのでひたすら私の待機モーションをループさせてました(笑)

別室で進行管理をする制作チーム。

 

村上

裏方同士ではLINEのメッセージも激しく飛び交ってたよね。一回の公演で100通くらいやりとりしたんじゃないかな。音響担当の水野はどんな感じだった?

 

水野

私は半分ギミック班だったので、予め必要な音素材は把握できていて、早めに編集も含めて用意することが出来てたんですよ。ただ本番直前まで台本が出来上がらないから、恐らくこういう音が必要になるだろうって予想して素材を揃えて、確定したところから順次実装していきました。

 

村上

音に関しては…デジタルゲームの開発現場でもどこでも、どうしても最後になってしまうなぁ。シナリオは、デバッグしてる間もどんどん修正が入るから、それに伴って納品直前にポスプロの仕事に全部の皺寄せが来るっていう。

イニョンのムービーも、修正が入るとそこでも玉突き事故が発生して結局全部水野に負担が集中する。これはもうポスプロ担当の宿命としか言いようがないのかも。演劇と同じで、お客さんの反応をみてまた翌日の公演に向けてブラッシュアップして…てことを繰り返していくと、千秋楽でようやく作品が完成することになるから、結局ポスプロ担当者も最後の最後まで働き詰めになってしまう。

 

水野

そうなりますね。で、最初の二日間の公演と最後の二日間の公演の間に5日ほど間が空いたので、その間にまた脱出成功バージョンの音楽や音響の演出を追加したんですよ。そしたら後半は脱出成功者がいなかったので結局日の目を見ることなく(笑)

 

村上

当初のシナリオにはなくて、テストするうちに見えてきた工夫って、他にもあった?

 

柴田

さっき天井のギミックの話が出ましたけど、これって企画当初はなかったんですよ。最初のリハを行うまでは、基本的にギミックは全て紙媒体の問題を次々解いていくような感じだったんです。でも視点を変えることで見つかるギミックというか、空間を立体的に捉えることで解けるようなものが加わることで意外性が生まれましたね。

 

村上

背の高いプレイヤーに先に発見されるというトラブルはあったけど、ゲームとしては奥深くなって良かったと思う。

 

柴田

あと、第一ステージから第二ステージに移動するために暗い螺旋階段を降りなきゃいけなくて、そこが暗くて危ないんです。そこで小道具班がゲームの世界観に合ったデザインのライトを設置して足元を照らしてくれたり、ギミック以外の面でもプレイヤーに安全に遊んでもらうための配慮をしてくれてたのがとても良かったですね。

 

村上

こういうところはシナリオの段階では絶対に分からないところで、リハや本番を繰り返しながら学習していったんだね。どのプレイヤーも階段を降りて歓声を上げてたから、演出面は大成功だね。

 

柴田

第二ステージに入ったときの照明効果やスモークの効果なんかも、ストーリーの演出を盛り上げる上で貢献してくれたし。

 

小林

プレイヤーが第二ステージに移動するタイミングで煙の状態がちょうど良く空気に馴染むように計算して出してくれたから、小道具班の完璧なチームワークに驚きました。

 

村上

今回は小道具も過去にないくらいの物量と作り込みで、みんな物凄く頑張ってたよね。

 

水野

映像や音響の演出面については、これも実際にお客さんの反応を見るまで不安もあったんですよ。ゲームってシステムさえ良く出来てたら面白いと思ってた節があって、今回の小道具班みたいに演出とか空気づくりって、まず世界に入り込ませる役割として本当に大事だなって思いましたね。

 

イニョン

私は、情報共有の重要性を痛感しました。制作中の情報量が多くて、日々更新されていくものなので、ちょっとした修正でも全員が完全に把握しておかないと本番で大変なことになってしまうし、今後どんな制作をするにしてもこの情報共有は徹底していこうと思いました。

 

村上

という感じでノウハウの蓄積もあって年々クォリティが上がっている脱出ゲームですが、ここでのチームワークや人の動きを観察する能力を、ぜひ今後の創作活動に活用していってほしいと思います。

 

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