キャラクターデザインコース

ゼミ通ヒーローズVol.56 小林咲希、柴田晃太郎、パクイニョン、水野優と脱出ゲームについて語るの巻 Part1

※「ゼミ通ヒーローズ」とは、京都芸術大学キャラクターデザイン学科ゲームゼミの学生の研究や取り組みについてピックアップし、担当教員村上との対談形式で綴る少々マニアックなブログ記事となっています。

 

村上

今度は脱出ゲームの制作の中で主にギミック関係を担当した面々のインタビューを進めていきたいと思います。

 

柴田晃太郎(以下柴田)

柴田晃太郎です。皆さんに解いてもらうギミック(謎解き)のチームリーダーを担当していました。ゲーム本番中は舞台裏でゲームの進行をチェックしながら進度に合わせてキャストに指示を出す役割でした。

 

柴田晃太朗さん

 

小林咲希(以下小林)

小林咲希です。未知の生物と関わるようなギミックを中心に考えていきました。一応キャラクターデザインも少し関わったり、船長役としてキャストも担当してました。

小林咲希さん

 

パクイニョン(以下イニョン)

パクイニョンです。映像全般の制作を担当しました。潜水艇や生物のモデリングをして、ムービーとして仕上げるところまでを担当しました。

パクイニョンさん

 

水野優(以下水野)

水野優です。サウンド全般と、序盤部分のギミック制作などを行いました。あとは本編内でUnityを使って映像を制御する場面があったので、プログラミングも担当しました。

水野優さん

 

村上

では今度はゲームとしての見どころの紹介をしてください。

 

柴田

常連の方のアンケートにもあったんですけど、例年に比べて電子機器を使ったギミックが増えてて新鮮だったと言われましたね。未知の生物をCGで作って投影していたり、演出面は好評でしたね。

 

村上

過去にも電子機器を実装したギミックはいくつかあったんだけど、気持ち良いくらいに不具合が起きて大変だったから、極力最小限に留めようね、って話していたのに、企画が進むごとにどんどん複雑なシステムが実装されて、結果的には過去最高に豪華なしつらえになったね。

 

柴田

ギミックについては、伏線回収の面白さに力を入れたので、そこは盛り上がったんじゃないかと思いますね。

 

小林

私が考えてたギミックのネタが、知らん間に他のパートでも発展形として再利用されてたりして驚きました(笑)

 

村上

最初のバージョンだと、それぞれが考えてきたギミックが単発で設置されていて、ボリューム感はあるんだけど淡々と問題集を解かされているような感じで全然面白くなかったから、どうやって伏線を回収したらアツくなるのかを中心に考えるように、かなりリテイクを出したね。

 

小林

序盤に登場した記号を記憶してくれていて、終盤のギミックで使い回せるんじゃないかとか、勝手にどんどん気付いてくれるという状況でした。伏線だったことに気付いたときなんかは、プレイヤーのみなさん楽しそうでした。常連さんだけじゃなくて普通のお客さんも、「これやー!!」って興奮してくれてました。

 

 

柴田

ヒントを出すタイミングによって遊んだ感覚がかなり変わってくるので、最初の頃はかなり細かく指示出しをしました。

 

水野

プレイ人数の少ない回は進む速度が遅いので、そういう時はヒントを多めに出したりしてゲームの進度をコントロールしてました。

 

小林

ゲームに詰まる場所も段々分かってくるから、誘導の仕方も徐々に慣れてきますね。

 

柴田

それで回を重ねるごとにキャストがうまくなってきたので、現場でのトラブルも臨機応変に対応できるようになって、かなりスムーズに進むようになりましたね。

 

村上

プレイヤーがゲームに詰まるパターンとしては大きく二種類あるよね。一つは「やるべきことは分かっていて、単に謎解きが難しくて詰まる」パターン。もう一つは「そもそも何をしたら良いのか分からない」パターン。この場合はどんな反応だった?

 

小林

何をしたらいいのか分からず途方に暮れるような場面はなかったですね。ただ、計算間違いがあったり(苦笑)。解き方は合ってるのに答えが間違ってるような場合はどうやってヒントを出せばいいのか分からなくて最初のうちは困りましたね。「なんか違うような気がしますねー」とか言ってましたけど(笑)

 

村上

文字を使った問題であれば、答えが出た時にそれがちゃんと言葉になっていれば正解だと実感できるけど、数字の問題の場合は確かに困るね。答えが出せても、果たしてそれが合ってるのかどうかが分からなくて…。

 

水野

プログラム制御できるギミックなら、解除できたものはちゃんと分かるように演出できるけど、例えばダイヤル錠って手応えが感じにくくて不安にならない?

 

小林

ダイヤル錠で数字を合わせる位置が分からなくてずっとグルグル回している人がいて、答えは合ってるのにそういうところで躓く場面とかありましたね。

 

村上

普通なら簡単に開くのに、制限時間が迫ってるからパニくった…てことかな。

 

小林

それもあるかもしれないですね。あとは適当に試して当たるパターンとか。そうならないように調整したつもりだったんですけど、たまにありましたね。

 

村上

作り手の想定外のことって多いよね。

 

小林

あとは、終盤で解くべきギミックを序盤に解いちゃって、クライマックスがスムーズに行き過ぎるパターンとか。

 

村上

それは設計の問題だな。例えばデジタルゲームで鍵のかかった宝箱があったとして、「鍵が掛かってて開かない。じゃあ鍵を探しに行こう」となって新たに鍵を探すというゲームがスタートする。これは理想的な流れ。だけど新人さんが設計したゲームでよくあるのが、宝箱を発見する前に先に鍵を見つけてしまって、そのままストレートに宝箱を開けるような展開。これは何の引っ掛かりもなくて好奇心もそそられなくてゲームにもなってない最悪のパターン。興味を掻き立てて自分から動きたくなるような仕掛けを提供してあげないと面白くない。でも脱出ゲームは複数のプレイヤーが自由に探索することで、後で見つけてほしいものを先に見つけられてしまうこともあるし、管理は気を付けないといけないね。

 

小林

気を付けてたんですけど、一つ、天井に隠したギミックがあって、それを物凄く背の高い人が先に見つけてしまった、なんてこともありましたね。

 

水野

電力を復旧するイベントの前に他のギミックを解いてしまって、生物の映像を流す条件を満たしてしまったんですけど、そこは電力が復旧していないから流さなくていいよって慌てて指示を出したり。リハでは起きなかった色んなことが起きて、ビックリの連続でした。

 

村上

チームワークも良くて瞬間瞬間の判断でフォローし合える関係性が築けてたから、結果オーライだったね。

 

柴田

解く順序が変わったとしても、その次にそれを利用する場面があって、それまでは必要ないものなので、手掛かりの一つとしてうまく説明をして何とかなってましたね。

 

小林

ていうか私はギミック班なので謎解きを作るので精一杯で、本番直前に大急ぎでセリフ全部覚えて演技の練習して、成人式のときもずっと頭の中でセリフが再生されてて…疲れ果てたから一公演終わるごとに魂が抜かれました(笑)

 

魂を抜かれた小林さん

 

柴田

最初はセリフの量がめちゃくちゃ多くて、最終的にはかなり削ってゲームに専念できるようにしましたね。

 

水野

一番長いセリフがあって、それは案内役が死ぬときのセリフなんですけど、これが数十秒あるんですよ。ゲーム的には「残り3分!」とかアナウンスされてるのに、長いセリフ言ってる場合じゃないだろう!って心の中で思いながら進行してました。

 

小林

そうなんですよ。これでゲームオーバーになったらお客さん怒り出したりしないかなって(笑)でも結果的にここが最大の盛り上がりポイントで、「ママー!!」って叫びながら悪役が敗北するところでプレイヤーは皆大喜びしてたから、そんなに気にならなかったようです。しかもこのときに第二ステージの入り口が開くので、テンションマックスですよね。

 

村上

ストーリーのクライマックスとゲームのクライマックスが合致した良い場面だったね。

アンケートを読み返しても、この場面が一番印象に残ったってコメントが多かったし。

 

Part2に続く

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