キャラクターデザインコース

ゼミ通ヒーローズvol.57 小林咲希とゲームの企画書作りについて語るの巻 Part1

※「ゼミ通ヒーローズ」とは、京都芸術大学キャラクターデザイン学科ゲームゼミの学生の研究や取り組みについてピックアップし、担当教員村上との対談形式で綴る少々マニアックなブログ記事となっています。

 

村上

久しぶりの復活となったゼミ通ヒーローズです。今年度最初の回は、ゲームゼミ3年生の小林咲希さん(以下ばしこ)とゲームの企画書作りについて語っていきたいと思います。

 

~デザイナーからプランナーへの進路変更~

 

 

ばしこ

ゲームゼミ三年生の小林咲希です。今はゲームのプランナーを目指して勉強中なんですけど、もともとはデザイナーを目指してここに入学しました。特に敵のキャラクターデザインをしたいなーって思って入ったのがきっかけでした。

 

村上

敵キャラ限定なの?

 

ばしこ

ですね、主人公があんまり好きじゃないので(笑)

 

村上

ちなみに一番好きな敵キャラクターって何?

 

ばしこ

スーパーマリオに登場するテレサですね。照れて顔を隠すからテレサって名前なんだと思うんですけど、それがまずキャラクターのイメージと合っているのと、プレイヤーが背を向けたときだけ近づいてくる設定がお化けらしくて可愛らしくて好きです。

 

村上

なるほど、クリーチャーデザインをやりたくて入学して、どのタイミングでプランナーへの方向転換を考えた?

 

ばしこ

1年生の前期でゲームの企画書を作る課題があったじゃないですか。あれでゲームの面白さを考えるのが楽しいなって思って、そこからですね。でもその時はまだ少し迷っていて、ゲームゼミに入って謎解き脱出ゲームの企画をしてるときにプランナーの方が向いてるかもしれないなと考えるようになりました。

村上

懐かしいなこれ。このフォーマットはこの頃から変わらないんだ。

 

ばしこ

先生にコンセプトの考え方を教えてもらって、これがあった方が分かりやすいので、それ以降はずっとこの形ですね。相手にも伝わりやすいし自分の頭も整理できるし軸もブレないし。なんか迷ったらコンセプトに戻って見直せるので自分のために残してるみたいな感じでこの構成にしました。

 

村上

コンセプトがブレてたらどれだけ面白いネタがあっても結局つまらない企画になっちゃうしね。ばしこの企画を見るたびに、「こういうのが好きなんだな」っていうのが伝わってきて、自分の世界も持ってるし、その面白さを人に伝える力もあるし、だから1年生の時には、もうこの人はプランナーを目指してるんだなって思ってた。

 

~株式会社コナミデジタルエンタテインメントによる企画書作成ワークショップ~

 

村上

今回、大手ゲーム会社のコナミのゲームデザイナーさんから直接企画書作成のワークショップを実施していただいたので、そこでの学びについて触れていこうかな。

 

ばしこ

このプロジェクトでは、まず普通にゲームの企画書を作って、そこにコナミさんからのアドバイスをいただきながらより良い形にブラッシュアップしていきました。その中でも、相手に面白さを伝えるにはどうすればいいか、っていうところを特に重視してましたね。

 

村上

企画書の書き方を教えるワークショップってあちこちでやってるけど、「何をするゲームか」じゃなくて「何が面白いのか」に絞り込んで強化するのが今回の大きな特徴だったね。

 

ばしこ

ですね。オンラインでの個別面談までしてくれて、そこでかなり細かい指摘を受けながらブラッシュアップすることができました。

 

 

ばしこ

今回は二つの企画書を作ったんです。一つ目は、自分の所持金がなくなると死ぬ横スクロールアクションゲームです。自分の所持金を敵に投げつけて倒すんですけど、使い果たすと同時に自分の命がなくなってしまうっていう仕組みです。

 

村上

企画の発端は何だった?

 

ばしこ

買物をしていてレジの前に立った時に「お金持ってたっけ?」って不安になることがあって、その感情をもとに企画を膨らませていきました。財布に入れたはずの金額が幾らだったのかの記憶が正しいのか分からず不安になったことから、人の記憶力はそんなに長くは続かないっていうことで、残金が分からない状態でどんどん消費していくハラハラ感に面白みがあると考えました。

 

村上

主人公の設定は?

 

ばしこ

ストーリー上では壺に呪われた主人公が、それを解くために旅に出るっていう設定です。

 

村上

呪いって便利だね(笑)。「そういう設定です」って言ってしまえば、それでストーリーができてしまうから。で、壺の中に入ってるお金を消費するほど敵を倒せるけど、0円になった瞬間に自分の命も尽きるから一円以上残した状態でうまいこと戦ってねっていう感じだね。敵に追い詰められると、いくら残ってたか分からなくてつい闇雲にお金を投げてしまうから、知らぬ間に自爆する恐れがあるっていう。遊んだ感覚は『ボンバーマン』に近いのかな?敵にやられるよりも、調子に乗っていっぱい投げすぎて自爆する感覚が。

 

ばしこ

そうですね。自業自得の死です(笑)

 

村上

ゲームオーバーになった時に自業自得だと理解できるゲームって、面白いから続けてしまうよね。理不尽な死に方をしたり、死んだ理由が分からずゲームオーバーになると、もうそのゲームで遊ぼうとは思わないもんね。で、企画書の最初のバージョンだと、ゲームのルールと流れだけが書かれていて、「結局どこが面白いの?」て指摘したけど、案の定コナミさんにも同じことを指摘されたよね。そこはどうやって克服した?

 

ばしこ

ハラハラするポイントがちゃんと説明できてなかったなって思って、コンセプトになってる面白さの部分を強調する形で作り直しました。命を削ることのメリットとデメリットがあって、それがどういうハラハラドキドキに繋がるのかを図で説明するようにしました。

 

村上

「お金と生命の取引き」って書いてあるように、ここの説明を加えたことによって何が面白いゲームなのかが伝わったってことだね。ゲームの企画書を作り始めた頃って、ほとんどの人が一生懸命ストーリーを伝えようとするんだけど、でもそれだったらゲームである必要はなくて、漫画とかアニメでいいじゃないっていう話になるよね。やっぱりゲームである以上はそれの何が面白いのかっていうポイントをちゃんと伝えないと、まず遊ぼうって気にもならないし。

 

村上

企画書を作る上で他に注意したポイントは?

 

ばしこ

絵をめっちゃ描きました。

 

村上

イメージ画が中心で、キャッチーな見出しと最低限の説明だけで構成されてるから、そこがすごく読みやすくて、中に入り込みやすいよね。

 

ばしこ

絵を入れるだけで割とイメージが相手に伝わるので、そこは絵が描けて助かったなっていう部分ではあります。

 

村上

ここに四行の文章があるんだけど、これ長いって突っ込まれなかった?

 

ばしこ

言われました(笑)。ゲーム業界の人は三行までしか読まないって聞いてたんで、頑張って縮めようと毎回意識してるんですけど、どうしても…。

 

村上

イメージが出来てると、ついアレもコレもって一杯伝えたいことが出てくるからね。

でもばしこの特徴として、文章が硬くなくて、初めて見る人に対して分かりやすく語りかけるような感じで文章を書くからすごく入りやすい。

 

ばしこ

私自身が上から目線で書いてるような文章が読めないタイプの人間なので、読みたくなるような文章を書けばいいじゃんってなって、よくゲームの取り扱い説明書みたいな短い説明文をよく参考にしてます。

 

 

Part2に続く

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