キャラクターデザインコース

ゼミ通ヒーローズvol.57 小林咲希とゲームの企画書作りについて語るの巻 Part2

※「ゼミ通ヒーローズ」とは、京都芸術大学キャラクターデザイン学科ゲームゼミの学生の研究や取り組みについてピックアップし、担当教員村上との対談形式で綴る少々マニアックなブログ記事となっています。

 

小林咲希とゲームの企画書作りについて語るの巻 Part1の続き

 

 

村上

じゃあ次は二本目の企画の話を聞こうかな。

 

ばしこ

これは「555(ゴースリー)」っていうタイトルで、簡単にまとめると、列車がすれ違った瞬間、弾をお互いに撃ち合って体力を奪うゲームです。

 

村上

…それじゃ面白さが伝わらないな。面白く聞こえるように言い方変えてみて。

 

ばしこ

えーとですね、線路上を列車が走ってて、敵の列車とすれ違った瞬間に一気に大砲を撃ちまくるゲームです。すれ違いざましか攻撃できないから、戦闘のチャンスはほんの一瞬しかなくて、「さあ遠くから近づいて来たぞっていう戦闘準備の緊張と、すれ違う瞬間に一気にボタン連打で砲弾を叩き込むっていう緊張と緩和を楽しむイメージです。

 

村上

よくできました(笑)

最初のバージョンだと、ゲーム内の行動だけが書かれていて面白さが全然伝わらなかったし、コナミさんからも突っ込みが入ったね。どういう風に改善した?

 

ばしこ

もともとは「戦略ゲーム」って書いてたんですけど、そのアプローチの仕方を変えたのが大きかったですね。敵とすれ違うまでの準備期間の緊張感を強調して、すれ違った瞬間にぶちまけるから面白いっていう構図を書き足したので伝わりやすくはなったかなって思います。

 

 

~ゲーム企画のルーツ~

 

村上

ばしこの企画書の佇まいというか、絵の雰囲気からして基本的にレトロ好きなんだね。

 

ばしこ

そうですね。映画でも今のものより昔の作品の方がいいなぁって感じてますね。

 

村上

全体に漂う80年代感みたいな元気の良さがあって、絵も80年代のギャグ漫画みたいな感じだったり。ばしことはたまにB級映画の話で結構ディープの話ができたりするけど、あの時代に対する思い入れとか感心があるのかな?

 

ばしこ

多分、80年代って特に新しいものがいっぱい出た時代じゃないですか。その新しいものを作ってる人間は実はちょっと古い人間だっていうのがまた魅力的で。なんか機械は新しいけど使ってる人間がまだ使いこなせてないっていう感じが好きなんですよね。

最近の作品はデジタルチックでカッコ良いんですけど、なんか人の温もりがないっていうか、80年代みたいな、汗流して作ってきましたよ感がある方が面白くて、なんかいい作品だなって思う傾向がありますね。

 

村上

泥臭い職人のおっさん達に憧れてるってことなのかな?

なんか映画とかもすごいマニアックなものをたくさん見てたりして、多分他の学生と全然話が合わないんじゃないかと思う時もあるんだけど。

 

ばしこ

実は映画よりも『トゥーランドット』とか『ニーベルングの指環』とかオペラからハマったんですよ。その後ミュージカルの『オペラ座の怪人』が実写映画になって、映画もすごい面白いじゃないか!ってなって。

 

村上

以前一番最好きな映画を聞いたら『遊星からの物体X』って言われたから、我々世代がハマった大好物映画なのに話が合うのが珍しいなぁと思ってね。

 

※ここから話が脱線してマニアックなB級SF映画談義が長時間展開されたので割愛

 

 

~制作のスタンス~

 

村上

制作の話に戻そう。

ばしこのキャラのいいところとして、一見感覚だけでものを言ってるように見えて実は理論立ててちゃんと考えられてるっていう。

 

ばしこ

そうなんですかね?

 

村上

いつも理論の話をすると「わかんなーい」ってアホのふりをしているのか本当に分かってないのか謎なんだけど、一旦感覚で形にした後で「これの何が面白いの?」て聞いた時に、そこからちゃんとした理屈とか根拠がハッキリ示される。てことは最初から頭の中でその理論って成立してんじゃんって思うわけ。能ある鷹は爪隠すじゃないけど、アホのフリをしながらちゃんとするみたいな。

 

ばしこ

そう…なんですかね。

 

村上

だから企画もちゃんとしてるし伝わりやすい。人様に対して伝えるってどういうことかが分かってるから出来るんだと思う。

これなんとなく面白いんだよねーっていう感覚だけでもダメだし、理論だけだと面白さが伝わらないし、ばしこはその両方のバランス感覚が強いから良いプランナーになりそうだなっていう感じがしてる。

 

ばしこ

でへへ

 

 

村上

じゃ最後にまとめの一言を下さい。

 

ばしこ

コナミさんの企画書ワークショップを受けて、今までの書き方だったら伝えたいことが全然相手に伝わってないということがよく分かったんですね。でも伝えることだけを掘り下げていってしまうと逆に自分の軸がズレて余計分からなくなるので、その分かりやすさと「ここが面白いよ」っていう部分をバランス良く保ちながら企画書を書いていくことの大切さを学びましたね。

あとは、何が面白いかを伝える道具が企画書なだけであって、そこでイメージを全部伝えられたら簡単なんですけど、そこが全てじゃないっていうのも学びがありました。プレゼンもやらせてもらえる機会があって、そこではついつい企画書に書かれてる文章を読み上げるだけになりそうなんですけど、企画書をもとに自分の味を出しながらどのように相手に伝えるかっていうこともしっかりと学べたんじゃないかなと思います。

 

村上

うーん、立派に成長したなぁ。では今度は展示会に向けて実際に遊べるゲームとしても作っていかなきゃいけないので、この学びを活かして引き続き頑張って下さいね。

 

ばしこ

はい、ありがとうございました。

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