アートプロデュースコース

2026年度 優秀学生賞受賞者インタビュー vol.1

こんにちは!アートプロデュースコースです。

 

6月12日(金)、2026年度 優秀学生賞表彰式が行われました。

 

 

優秀学生賞とは…

研究・制作活動、課外活動等、学生生活において秀でた4年次生を表彰し奨励する制度です。

3年次までの成績や研究・活動実績をもとに厳正に審査を行い、2026年度は65名の受賞学生を選抜しました。

皆さま、おめでとうございます!

 

アートプロデュースからは以下2名が優秀学生に選ばれました✨

 

坂本 茉里恵さん(4年生)

米林 空さん(4年生)

 

今回は受賞者インタビューvol.1として、坂本 茉里恵さんにインタビューをしていきます!

 


 

受賞おめでとうございます!今のお気持ちを聞かせてください。

坂本:ありがとうございます。大学に入学して以来、ここまで本当に無我夢中で駆け抜けてきたような感覚があります。だからこそ今回の受賞は、振り返って何かしらの評価をいただけるだけの時間を私はこの学科で過ごしてきたのだ、という根本的なこと、そしてそのことの豊かさに改めて気づく機会になりました。無我夢中と言うと聞こえは良いのですが、実際のところは散々悩んで、不器用ゆえに醜態を晒して…といった3年間でもあったので(笑)、この賞をいただいた経験は、今一度これまでの学びを自身でも振り返り、新たにそれらを読み替えていく契機として受けとめていければ、と思います。

 

受賞に輝いた坂本さんの大学での活動等が気になる方も多いと思います。

現在、卒業研究・制作に取り組まれていますが、どんなことを研究されていますか?

坂本:私は現在、フランスの美術史家であるジョルジュ・ディディ=ユベルマンの、イメージを見ることの倫理をめぐる議論を読みなおすことを通じて、「見る主体」を否定する作用がもたらされることにより成立する倫理的可能性の研究を行なっています。

 

どうしてその研究をしようと思ったんでしょうか? 

坂本:この学科では、アートプロデュースとは「作品と鑑賞者の出会いを通じて、コトを生み出す」実践である、と形容されることが多いように思います。ですが、私は対話型鑑賞を学んだ経験などから、その実践のありようの豊かさを前提としつつも「コトを生み出せてしまう」ということ自体の倫理がそこに伴わなければならないと感じてきました。

作品を自分の視点から見て、自分の語彙によって言葉にすることのできる鑑賞者は、作品に対して恣意的でいられるという点で、意図せずともある種の優位性を帯びます。それは時に、「私が見たいように作品を見る」というように、一方的で暴力的な解釈を促しうる。それらをふまえて、アートプロデュース的な実践が適切に行われていくためにも、「作品をみる」とは即ちどういうことなのか、その場で何が起きうるのか、という段階を批判的に検討する視点を重視したいと思い、このような研究をしています。

 

「どのようなコトを生み出すのか」だけでなく、生み出したコトの中で鑑賞者の視点や解釈が作品やコトに与える影響も考えることはとても重要ですね。

坂本さんが、アートプロデュース学科を選んだきっかけを教えてください。 

坂本:私は通信制高校に通っていたのですが、高校が開催していたワークショップに参加した際に、偶然「対話型鑑賞」というワードを知って関心を持ったことから、作品鑑賞について学べる大学を探していました。また、当時は地元で演劇に携わっており、そこで一回の公演を打つにあたっての広報やマネタイズなど、制作運営の過程を間近で見ていた経験から、ただ「芸術を実践する」のではなく「そのための場をつくる」ような制作についてより学びたいと思っていたのも、理由の一つです。

こうして今振り返ると、高校生の頃から「芸術に触れる経験というのがどのように生まれるのか」「どうやってその経験に介入しうるのか」といった、まさにアートプロデュース的なるものへの関心が確かにあったと言えるのですが、当時の私は高校で美術の授業を選択すらしておらず技術も知識も無かったので、芸術系の進路は難しいかな…と半分諦めていて。ですが高校3年の夏に、この大学のオープンキャンパスに参加して「芸術作品には、つくる人や見る人だけでなく両者をつなぐ人が必要だ」という話を聞いたとき、これまで想定していた「芸術」の観念が一気に拡張されていくようなワクワク感を抱きました。だからといって諸々の不安が消える訳ではないのですが、それでもやはりこの感覚を尊重する自分でありたいと思って、アートプロデュース学科の受験を決めました。

 

アートプロデュース学科で印象に残っている出来事はありますか?

坂本:1年生で履修した「表現演習」の講義が、非常に印象に残っています。対話型鑑賞を実践的に学ぶこの講義では、まず私たち自身が「よき鑑賞者」となることが要請されるのですが、ここでの「よき」とは何にとってなのか、どんな練習をすることが「よき」につながるのか、といったことは1年間かけて自身で掴まなければいけません。その点で、これは高校までに身につけた「学ぶ」という行為についてのイメージを転換させ、「大学で学ぶ」ことが即ち何をすることなのかを体感する、大きな契機であったと思います。

一方で、それは単に「主体的になる」という言葉で安易に形容できてしまうものでもなくて。ある程度講義が進んだ段階で、教授のファシリテーションのもと、3枚の報道写真を続けて鑑賞する機会がありました。その鑑賞は、主体的にその写真を見て、自分なりの解釈や語りを加えて意味を生みだしていくことが、創造的であると同時に限りなく暴力的に作用しうる行為でもあると、身をもって知る時間でした。とはいえ、「見る」という行為の豊かさはその暴力性と不可分であり、また私たちはそれでも眼を開いて生きていくのであって、その両義性も考慮しなければいけません。それらをある意味で「知ってしまった」うえで、自身がどうこの経験を引き受けるかを、ここで問われたのだと思います。このときの経験を適切に表すことが未だできないのですが、この講義が終わった直後、身体が鉛のように重く動けなくなった感覚は強く覚えていて。だからこそ、私は先述したような眼差しの暴力性をめぐる研究をしているのでは、と感じるときもあります。研究を通じて、この鑑賞経験にとって適切な言葉を探している。

この講義には、「芸術作品に意味や価値を見出す」というアートプロデュース的な実践のありかたを批判的に再考するような側面がありましたが、それを経験したことは「アートプロデュースを実践するとは、その実践自体を批判し続けることと同義なのではないか」という、現在の研究にもつながる気づきを得る機会になったので、特に印象的です。

 

主体的に意味を生み出すことが創造的である一方で、同時に暴力性も帯びうる両義性を知ったうえで、自分はどう見るのか、どう関わるのかを引き受ける姿勢に、坂本さんらしい誠実さを感じます。

最後に、後輩や高校生にメッセージをお願いします。 

坂本:最近は、ゼミで後輩の研究内容や進捗を知る機会が多いのですが、皆さんそれぞれの独自の問題意識をもとに着実にやるべきことを進めていて、研究の態度を身につけるのに散々血迷ってきた私と比べ、本当に凄いなと日々感じています(笑)。

この3年を振り返ってみても、私は停滞したり過度に悩んでしまったりすることの方が多かったですし、今も常に不安と共にありますが、それでもなお自分の手をひたすら動かし続けることは、少なからず重要だと実感しています。このとき、「AをしたからBの学びにつながった」というのが自明であることを原動力とするのではなく、今向き合っている物事が具体的に何の役に立つかは分からないまま、それに対して誠実に対峙し続けなければいけない。それもまた苦しい経験ですが、本当に不安になったときに助けとなるのは、今ここで自分が手を動かしている、向き合っているという事実だけなのではないかと思うことがよくあります。その結果として生まれるものが何であれ、その誠実さは少なくとも事実として自分のなかに残ってくれるはずなんです。

私もまた、暗中模索のなかで触れたもの、読んだテクスト、考えたことが、今少しずつですが自分の研究という形で立ちあらわれつつあるのではないかと感じているところです。暗中模索から抜け出すことを目指すのではなく、むしろその経験に最大限直面することが必要なのかもしれません。あまりちゃんとしたメッセージではありませんが、皆さんと共にこのコースで学び合えるのを私自身嬉しく思っているので、これからもどうぞよろしくお願いします。

 

アートプロデュースコースに関心を持っている高校生の皆さんのなかには、もしかすると私のように芸術系の進路に進むこと自体に不安がある方もいるかもしれません。私は入学するまで美術館に行ったこともあまり無かったのですが、きっとその頃の自分は今の姿を到底想像できないだろうなと思うほどに、関心は入学以来大きく変わったように思います。今がどうであれ、目の前の学びに向き合い続けていれば自分のあり方は変化していきますし、この学びの場にはそうした契機が確かにあります。

何よりも、ここは「アートプロデュース」という、簡単に「つまり〇〇である」と定義できないような語を冠したコースです。だからこそ、この場で学ぶ学生たち自身が考えて実践することの全てが、「アートプロデュース」という語のもつ意味合いを拡張することにつながっていきます。AIがすぐにどんな物事の定義でも教えてくれる現代において、自分の身体をもって定義それ自体に関わること、ひいては定義すること自体必要なのかな?と一旦考えてみることができる機会は、貴重かつ重要です。もし、こうした試みにワクワクを感じるのであれば、是非その感覚を尊重してくれたら、そしていつかこのコースでお会いできたらと思います!

 

坂本さん、ありがとうございました。

改めて、この度は受賞おめでとうございます!

 


 

担当教員コメント

目を見張るのは、坂本さんの深く対象に迫る抽象的思考力と、問いを手放さない知的な持久力である。学内外のプロジェクトにおいて、彼女は言語化の難しい事象に対し、安易な結論に逃げ込まず、難解な理論と誠実に格闘し続けてきた。相反する概念の間に生じるパラドックスに直面しても、それを単なる矛盾として片付けることなく、あえて「引き裂かれた状態」のまま徹底的に引き受け、そこから新たな論理を紡ぎ出そうとする。対象と真摯に向き合い、思索を深めるそのひたむきな姿勢は、アートプロデュース学科の優秀学生として推薦するにふさわしい。

林田新

 


 

   今 後 の お 知 ら せ    

アートプロデュースコースのオープンキャンパスのご案内です。

コースの学びや空気感を体感できる機会ですので、ぜひ気軽にお申込みください。

 

[ 詳細・お申し込みは こちら ! ]

 

   今 後 の 予 定    

🔷7月19日(日). 7月26日(日)

探究ワークショッププログラム

芸術大学の探究学習を通して、自らの興味・関心を広げてみよう!美大芸大だけでなく、様々な分野の総合型選抜対策としてもおすすめ!

 

[ 詳細・お申し込みは こちら! ]

 


🔷7月25日(土). 7月26日(日)

ブース型オープンキャンパス 

オープンキャンパス

[ 詳細・お申し込みは こちら! ]

<1234>