文芸表現学科

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2016年3月4日  ニュース

受賞作品発表と講評

 
今年の卒業制作作品36本のなかから、2月28日(日)に行なわれた講評会で、受賞作品7本と、特別賞受賞作品が決定しましたので、以下に発表します。
 
 
gold 
学長賞
松陰菜緒「丹祈」
 
 
 
「丹祈(たんき)」とは、真心を込めた祈りを意味する。この小説の主人公ゆかりは、キリスト教の教会に通い、神に対して素直に祈ろうと試みる。だが、その祈りは、決して教会で祈るというだけの意味ではない。宗教的な姿勢というより、「誰にも求められていない」人間がどのように生きていったらいいのかと必死に懊悩し、模索する祈りである。彼女は「疑い」、「妬み」、「絶望」というような心の苦悩を経て、一つの啓示を得る。夢見るだけでは理想は現実にならないのだ、と。魂の餓えを丹念に描き、精神の奥底まで手が届いた、至高の小説。(教員コメント/校條剛)
 
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silver 
優秀賞
清水皓平「ペレト・エム・ヘルゥ」
 
 
 
大学生、あるいは若者たちの日々。どちらかと言えば、過去の卒業制作を始め、本学科の学生が好んで取り上げる物語の設定ではある。ことに卒業制作の場合、記念という意味合いから、これまでもこの種の設定は使われてきた。しかし本作がほかの小説と異なるのは、漫然とし、怠惰な日常を描写しながらも、登場人物がいきいきとしている。これに至った要因は、作者が「終らない一日」というテーマを明確に定め、物語を展開していったことがあげられる。その結果、単にノスタルジアに陥らない、人生のある瞬間の輝きが小説の中で生まれた。(教員コメント/新元良一)
 
11261015
 
 
bronze 
奨励賞
阿久津統子「彼女のように泣き喚け」
 
 
 
四人の大学生の日常に潜む内的葛藤を、淡々として冴えた筆致でとらえた群像劇である。ストーリーの過剰なドラマ性に頼ることなく長尺を書き終える、安定した力量も感じられる。この作者の今作における、特筆すべき新味は、どのような場面作りをするかということに最大の関心が寄せられているということだろうか。主要人物群の造型も、明快な輪郭を備えている。しかしその反面、それぞれが抱える葛藤や内的ドラマがやや図式的かつ合理的にすぎる観が否めず、少々頭でこしらえた感じが残るのがとても惜しい。自作の作品世界を信じ、その自律した運動に思い切って身を委ねることで、今後の大躍進を期待したい。(教員コメント/辻井南青紀)
 
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bronze 
奨励賞
末廣華穂「入れ替わりプログラム」
 
 
 
RPGゲームの非公式プログラムをダウンロードしたことで、現実の世界のイツキとゲームのなかのロビンが入れ替わることになる。中身はイツキであるロビンがゲームをクリアしなければ、イツキは現実世界に戻って来れないというストーリー。ライトノベルのメガヒット作品『ソード・アート・オンライン』に似た状況設定ではあるが、リアル世界で学校生活を送るロビンの側のストーリーを並行して見せるというパラレル・ワールド構成は本邦初か。要所要所に謎を仕掛け、読者の興味を引っ張る工夫、じらし方などほとんどプロ並みの技を見せてくれる。(教員コメント/校條剛)
 

表紙イラスト・正木ゆうひ(情報デザイン学科3年)

表紙イラスト・正木ゆうひ(情報デザイン学科3年)


 
 
bronze 
奨励賞
中山顕「狭い光」
 
 
 
本作に描かれているのは、一組の男女の恋愛関係である。男は(おそらくは)愛を知っているがゆえに愛の意味を理解することができず、女は愛を知らないがゆえに懸命に愛そうとする。したがって二人が幸せになれないことは論理的必然である(女の名「幸」には痛烈なアイロニーを感じずにはいられない)。救いようもなく愚鈍な碧と、不安によってのみ下支えされた幸の愛。一見通俗的にも思われる二人の人物造型は、逆説的にも二人のすれ違いにアクチュアリティを与えている。読者はこの作品のなかに、作者が(そして全ての学生たち)が生きている「いま」という時代を、痛みとともに読みとることを求められるのである。(教員コメント/河田学)
 
表紙写真/留岡愛子(美術工芸学科4年)

表紙写真/留岡愛子(美術工芸学科4年)


 
 
bronze 
奨励賞
西岡拓哉「天晴街道」
 
 
 
時は幕末、所は四国伊予の国。相撲取りのような大男の百姓辰馬は、寺に陣取り、村を牛耳って、年貢を掠め取っている大平とその一派のごろつきどもを一掃しようと、たった一人で寺に押し込む。時代小説の定番である善と悪の衝突の物語ではあるが、善の勝利で悪が滅び去るという単純な勧善懲悪という形をとらず、善はまったくの善ではなく、悪もまた時代が作り上げた現象の一つとして描かれている。現代において書かれるべくして書かれた時代小説と言えるだろう。乱闘シーンは躍動し、評定の席での論争は白熱する。文章力、時代考証もまことに秀逸である。(教員コメント/校條剛)
 
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bronze 
奨励賞
船戸実結「やまないでいるうちに」(詩)/「三角みづ紀『オウバアキル』を読むー詩人のことばの源泉をたどって」(詩論)
 
 
 
詩論は、病床にあった現代詩人、三角みづ紀が得た「病」そのものが作品と結びつけて解釈されることの是非を問うて、溌剌とした分析がそこここに光る力作である。同時に、作者自身が詩なるものとどう切り結ぶかという認識に至るプロセスが、克明に描き出されてもいる。一方の自作詩集は、全体としてどこかばらばらな印象もあるが、これらの詩を語り謳う「詩の主体」と、その主体が立っている「現実の世界」、そしてこの主体によって「夢見られた世界のヴィジョン」ともいうべきものの拮抗と成立を、自身の全重量を賭して確立しようとしているのが見える気もする。(教員コメント/辻井南青紀)
 
表紙イラスト/菊池のえる(美術工芸学科4年)

表紙イラスト/菊池のえる(美術工芸学科4年)


 
 
special 
門崎敬一特別賞
大塚翔「ライトノベル流離譚ーライトノベルの始まりから現代まで」
 
 
 
ここ三十数年の間に起きた文芸の世界でのトピックスのひとつは、ライトノベルの誕生と流行です。混沌に満ち錯綜していて、いまだ評価の定まっていない文芸ジャンルを年代史的に整理し、時代区分を施してそれぞれを特徴付け、注目すべき作品を解説するという作業を評価します。文章としてこなれていない箇所や、評論としての形式上の不備はあるものの、この論文の著者が何を明らかにしようとしているか、その意思は理解できます。いくつかの分析では、なるほどと思わせる説得力がありました。付け加えるなら、著者が抱くライトノベルへの愛情と、それゆえのライトノベルの未来への憂慮は、読後に心に残るものでした。(教員コメント/門崎敬一)
 
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残念ながら受賞を逃した作品のなかにも、受賞作と拮抗する良い作品がいくつかありました。
これからも書きつづけたいという言葉が講評会では多く聞かれましたが、ぜひまた素晴らしい作品を書いてくれることを期待しています。
 
卒展は今週末まで開催です。
3月5日(土)・6日(日)は、
卒業展/大学院修了展 OPEN CAMPUSも開催します!
http://www.kyoto-art.ac.jp/opencampus/sotsuten/
ぜひ足をお運びください。
 
 
(スタッフ・竹内)

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